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明るい笑い声に包まれた、みかん色の愛媛旅日記 [日々雑感]


今年最初の、まとまった学校公演。
とてもよく反応してくれた生徒さん、

誠意をもって受け入れてくださった学校職員の方々。

そして東京へ帰ってくると、また一つ嬉しい出来事が。

自宅の玄関を開けたら…


公演が終わり帰宅したのは、令和2年9月16日午後9時近く。
最寄り駅から歩き出したたら、大粒の雨が。
バックパックに入れたパソコンをかばいながら、折り畳み傘を広げてなんとか家にたどり着きます。

玄関を開けると、奥から黒猫こまちがトコトコと。
私を、迎えに来てくれたのです!
おかえり.png


同居人不在も猛暑もなんのその、元気な猫が我が家を疾駆する!
の北海道からの帰りの時は本当に久しぶりの、私の長期不在。
こまちも多少は寂しかったでしょうから、迎えに来たくもなるんだろうなと納得。

でもあの感動の再会から、まだひと月たっていません。
ましてや、北海道よりはずっと短い日程
正直今回は、迎えに来ない可能性の方が高いかなと思っていました。

それが、前回以上の勢いで私の足元にじゃれついてきます。
びっしょり濡れた折り畳み傘が、身体に触れても平気。

どこ行ってた.png

残像がブレるほどぶんぶんと顔を左右に振って、キャリーケースの匂いを確認。
「こんどは、どこ行ってたの?ねえ、どこどこ?」

まあまあ、ちょっと待ちなよお嬢さん。
まずは洗面所で手洗いうがい、荷物をざっとほどいて。
とりあえず落ち着いたところで、
旅の土産ばなししてあげるから。

こまちはお出迎えのご褒美に、
お母さんからCIAOちゅ~るもらっておいで。

時間との戦い、駆け足でのワークショップ


今回の公演は通常の学校寄席とは異なり、文化庁主催事業
若い世代に日本の伝統芸能に親しんでもらうため、こちらの芸を鑑賞するだけの一方通行ではありません。

代表の生徒さんたち数名に、
・短い小噺を、高座で演じる。
・寄席の一番太鼓を打ってみる。
・三味線のお師匠が弾く曲に合わせて、鉦と太鼓で一緒に演奏。
といった体験をしてもらうのも、大きな目的の一つ

本来ならそのために秋の本公演の前、7月に若手真打・二ツ目・お囃子さんが事前に各学校へワークショップをやりに行きます。
私も3回、やらせてもらったことが。

まるで落語や寄席なんて知らない生徒さんたちに、一から指導するのは確かに大変なところもあります。
でも興味を持ってくれた子たちが、夏休みの間に一生懸命練習して。

秋に再会した生徒さんが、堂々と体験を披露してくれた時
教えた方として、とても手ごたえを感じるもの。

しかし今年はこういった状況ですから、ワークショップと本公演を同時に行うことに。
午前中に1時間半かけて生徒さん方にレクチャー、午後の公演中で発表してもらう突貫工事

限られた時間の中で教える噺家も、教わる生徒さんも本当にベストを尽くしたと思います。
でもできることならもっとゆったりワークショップを開催して、時間に追われることなく寄席体験をしてもらいたかったなと。

かなわぬこととは承知ながら、舞台袖で生徒さんたちの発表を聴きながら思った次第です。

コロナ禍のもと、催しをやめる勇気と実施するための努力


当初の日程では、今公演は9月13日前乗りで18日帰り・全5校のはずでした。

夏休み明けの時期、事前に文化庁から各学校・所管教育委員会に
「感染予防を万全にしたうえで、基本的には学校寄席はぜひ実施の方向で検討していただきたい」
との要請があったそうです。

しかし大勢の生徒さんを預かる、責任ある立場の学校職員の皆さん。
学校単位で慎重に考えた結果、今回は延期(今のところ、中止ではない)をギリギリになって決定した学校が3校

決まっている学校行事の日程を変更するには、現場での勇気をもった判断が必要だったことでしょう。

子どもたちの身を一番に考え、大事をとって今回は見送りとなった3校の皆さん。
状況が落ち着きあらためて呼んでいただける日を、心待ちにしております。

そして全国・ことに都市部での新規感染者が減っている現状から、衛生面に配慮しつつ予定通り実施するという決断をしてくださった2校
こちらは保護者・近隣の方への説明や、当日の受け入れ態勢など事前の努力あってのこと。

中止・延期と予定通りの開催、どちらもそれぞれの現場でベストな判断をしてくださったのだと思います。

生徒さんたちの明るい笑い声と、先生方のお見送り


いろんな経緯はあれど、公演を実施してくれた
宇和島市立一本松小学校
西条市立壬生川小学校

生徒さんたちは、両校とも本当によく聴いて笑って参加して

雷門小助六師の丁寧な解説とワークショップで、
元気に発表してくれた代表の子たち。
活きのいい二ツ目・入船亭遊京と柳亭市若さんの落語で、
全校生徒大爆笑

そして色物は、
演芸会の至宝・林家正楽師匠の紙切り
白い紙から鋏を自在に操って産み出される作品に、一枚ずつ
「おーっ!」
「うわーっ!!」
反応する小学生たち。

聴いている私まで、嬉しくなってきます。
その私の『幽霊タクシー』の一席で、文化庁主催鑑賞事業はお開き。
生徒さんたちの、盛大な拍手を背に受けて控室へ。

支度ができたらスタッフの運転するワゴン車に乗り込んで、次の目的地へと向かいます。
と、一本松でも壬生川でも。
先生方が何人か、わざわざ私たちをお見送りに出てきてくださいました!

数多く学校公演に伺ってますが、意外と職員の方のお見送りって少ないんです。
直接の窓口になっている、芸術鑑賞担当の先生だけがご熱心。
ほかの先生方はあまり関心がないという学校の方が、けっこう普通だったりします。

その担当の先生が公演後ご用があったりすると、誰も見送りなんて来てくれません。
まるで夜逃げのようにそそくさと荷物をまとめ、自分たちで校門を閉めて学校を後にするなんてパターンも多いんですが…。

今回はどちらの小学校も、複数の職員の方々でのお見送り。
中には、若くてきれいな女性の先生も。
車が見えなくなるまで、ちぎれんばかりに手を振っていてくださいました。

もちろん普段から反応のいい生徒さん・熱心な先生方なのでしょうが、この特別な状況下での公演開催。
学校行事も、夏前はほとんどまともに行われなかったのでしょう。
久しぶりの催しをみんな待っていてくれた、それが今回の温かい受け入れにつながったのかと思います。

宇和島小学校・壬生川小学校の皆さん。
あらためまして、どうもありがとう!
楽屋一同も、たくさんの元気を分けてもらいましたよ。

なかなか見つからない、隠れ家喫茶店


生徒さん・先生方の反応に感動して、つい前半が長くなってしまいました。
このあとはトントーンと、壬生川小学校の周りをぶらぶらした時のことを申し上げるとしましょう。

ほかのメンバーが解説とワークショップをやっている午前中、正楽師匠に誘っていただいて学校の周囲散策。
私は何かブログのネタが拾えるかもと、お供させていただきました。

コーヒーがお好きな正楽師匠の目的は、もちろん近所の喫茶店
市若さんがネットで周辺の様子を検索し、歩いていけるところに1軒お店発見。

「師匠、隠れ家みたいでちょっとお洒落な『デルタ』ってカフェがあるそうですよ」
との情報を頼りに、だいたいの方角を聞いて歩き出したのですが…。
行けども行けども、いっこうにそれらしい建物が見当たりません。

やっと国道沿いにCOFFEEの看板を見つけて喜んだら、とうの昔にその喫茶店は廃業
同じ建物で営業しているのは、このお店だけ。
店頭で、こんな物も売っています。
リサイクルショップ.png

う~ん、四国まで来て木彫りの熊は、ちょっとなぁ…。

そばのローソンに入ってお客さんに聞くと、
「喫茶店なら道を挟んだはす向かいに1軒あるよ」と。
お礼を言って向かった先に上がっていたのは
『珈琲泉人 珈泉』
という看板。

広い駐車場には、午前中から車がいっぱい。
お目当ての店とは違うけれどまあいいかと入ってみると、地元の方らしきお客さんで大繁盛

それもそのはず、しっかりした味わいのブレンド1杯400円
150円~250円で厚切りトーストやワッフルがセットにでき、ボリュームたっぷりのサラダも付いてくる。
珈泉.jpg


これはご近所の方、モーニングやランチで頻繁に足を運びたくなるでしょう。 パン類召し上がったお客様がお帰りになると、テーブル足元の落ちたパン屑まできれーいに掃き清める。
常に清潔な店内は、全席禁煙。
近くにお住いの方が、ちょっと羨ましくなるお店でした。

そこで正楽師匠にごちそうになり、豊かな気持ちで学校への帰り道。
ふと見ると住宅街の中の1軒、民家の壁に 「営業中」 と書いたハガキ大くらいの白い紙が貼り出してあります。

なんの店かなと正面に回ってみると、やはりごく控えめな小さい黒板にお品書きが。
その中には 「デルタセット 750円」 という1行。
民家の喫茶店_R.jpg


ええーっ、あんなに探してわからなかったデルタ カフェってここだったの?
市若さんからおおよその方角だけ聞いて、店構えの画像を見ていませんでした。

外観知らなきゃ、まず一見さんには喫茶店とは認識できないですよね?
いくら隠れ家カフェったって、ここまで隠れてちゃ見つけられませんよ。

扉を開けてみると中は、本当に普通の一軒家
出てきてくださった女性オーナーさんに伺うと、三和土で靴を脱いで庭に面した洋間と和室それぞれ1室ずつ。
限られた空間でゆったり、お茶やお菓子をいただけるそうです。

こちらのお店も気にはなりますが、けっこう量たっぷりのブレンドを飲んだ後なので…。
オーナーさんには丁重に事情を説明して、隠れ家カフェを後にしました。

水鳥は、見えないところで努力する


国道から1歩中へ入ると、あちらこちらに用水路が引かれ広がる緑滴る水田

「おっ、あそこに鷺がいる」
正楽師匠の指差す先へ目をやると、
遠目にもすっきりとした首の長い立ち姿。
優雅な鷺.jpg

スマホのズームでは、ここまで寄るのが精いっぱい。
写真だけでは鳥だとわからないので、イラストで想像図を挿入。

「飛んだとこ、写真に撮れるといいんじゃない」
優しい師匠が気をつかって言ってくれます。
お言葉に甘えしばらくその場でシャッターチャンスうかがったのですが、いっこうに羽ばたく気配なし。

石を投げたりしちゃかわいそうだし、大先輩をいつまで待たせておくわけにもいきません。
お付き合いいただいてありがとうございますと正楽師匠にお礼を申し上げ、歩みを再開して田んぼの向こうへ回り込んでみると…。

今まで見ていた稲穂の群れのすぐ先は、もう収穫がすんだ水田
件の鷺はぬかるむ泥土へ慎重にひと足ずつ歩を進めながら、こんな愚痴を言っているかのよう。
歩きにくい.png

よほど潔癖症の鷺なのでしょうか。

急ぐので見届けませんでしたが、あの鷺がぬかるみを脱して無事
「足抜け」
できたことを願ってやみません。
白さぎマンション.png


柑橘王国からの帰還と、我が家のワンダーみかん


お客様とこまちへの旅の土産ばなし、締めは何といってもこの話題。

四国でも愛媛とくれば、日本一の出荷量を誇る
「柑橘王国」
温州みかんの生産だけでは、和歌山に次いで全国2位
しかし伊予柑やデコポンなど種類豊富な柑橘類ともだと、年間合計生産量21万トンでぶっちぎりのNo.1!

松山空港のロビーには、
名物みかんジュースタワー
みかんタワー.png

輝くオレンジ色の液体が、惜しげもなくずっと流れ続けています。

私は以前から、甘みと酸味がほどよいおいしさ・愛媛ポンジュースの大ファン。
久しぶりの四国訪問が嬉しくて、ポンジュースお土産も買いました。
ポンお土産_R.jpg


チロルチョコの方は、箱が空いたらこまちにあげるからね。

ああ、この写真見ていたら無性にみかん食べたくなってきた。
もっと秋が深まる頃になったら、早生の愛媛みかん買ってこようかな。

うん、なんだいこまち。
みかんならあるよ.png

あんのかい、今うちにみかんが!
留守中に、お母さん買っといてくれたのかな。
じゃあ、さっそく台所へ…。

えっ、みかんがあるのはそっちじゃない?
だったら、どこに置いてあるんだい。
ほらね!.png



ははぁ、なるほどね。
廊下に敷いてある、オレンジ半分型のい草ラグ。
みかん型ラグ.png

近所のホームセンターで、見切りになっていたのを購入。
今ではこまちお気に入りの狩場の一つ、ラグの端はもうボロボロ。

それが
猫と鏡が織りなす、ミラクル映像!
の記事のように鏡に映って、
大きな丸いみかんができています。

そこへ紙を細長くひねったこより状のおもちゃを放ってやると、みかんの周りで猫大喜び。


柑橘王国から帰ってそうそう、我が家の巨大みかんでこまちが遊んでくれた。
その姿に旅の疲れも、一気に吹っ飛んだところで…。

愛媛学校公演旅日記も、これをもって無事
かんきつ(完結)
とさせていただくことにしましょう。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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猫と鏡が織りなす、ミラクル映像! [日々雑感]


私たちが日々何気なく見ている、鏡 。
ちょっと注意して眺めると、
新しい世界が広がったりすることが。

実はとても不思議な、鏡像世界


毎日お化粧をしたり、髭を剃ったり。
『白雪姫』の魔女でなくても、
人は頻繁に鏡と向かい合っているもの。

鏡こまち.gif


鏡に映ったものは、あべこべになる
当たり前のこと。
普段は気にもしませんが、
「上下は反転せず左右だけ逆」
というのは、実はとても不思議な現象

今来ている学校公演の控室で、ほかの出演者の方と記念撮影。
めったにやらないスマホの自撮りをして、
「あれっ、みんなの並び順が逆になってる!」
と気づいたのが、今回鏡の不思議に思い至ったきっかけ。

位相幾何学なんて難しい学問を引っ張り出してこないと、論理的に説明できない「鏡像反転」の理屈。
それが楽しく読書をしながら、すんなり頭に入ってくる小説があります。

夭折作家の残した、傑作SF


私の大好きなSF作家・広瀬正
将来を嘱望されながら、若くして世を去りました。
短い生涯に著した全作品は、長編4作・中短編集2冊。
いずれも集英社文庫に収められ、今でも手に入ります。

そのうちの1冊、 『鏡の国のアリス』
1973年、第4回星雲賞・長編部門受賞作。


自分を女性の身体にしてもらいたいと、美容外科医のもとを訪れた青年。
性同一障害や女装趣味ではなく、いたって普通の若者がなぜそんなことを願うのか。

青年の語るその理由は、
「町内の銭湯の女湯に、どうしても入らなくてはならないから」。
彼の一生に関わるという、その訳はいったいどうして?



魅力的な導入部から始まる、不思議な「反転した世界」の物語。
全てが高い完成度の広瀬作品の中でも、比較的ユーモア色が濃い本作。
コアなSF好きでなくても、読みやすいのでは。

鏡がなぜ、左右だけあべこべに映るのか。
読み終えたあと、その理由を人に話したくてうずうずしてくるはずです。

たくまずして、猫も鏡の不思議を体現!


今回の学校公演に出発する前日。
普段なら寝ている時間に、起き出してきたこまち。
まるで私の不在がわかるかのように、
「遊ぼ!遊ぼうよ!」
と誘ってきます。

おお、愛いやつじゃのう。
よーし。
じゃあ留守中の分も、いっぱい狩りをしようか。
猫親バカ全開で遊んでいる時、こまちが鏡でちょっと面白い芸当をやってくれました。

意図せず偶然に切り取ることができた瞬間、
簡単なキャプションをつけてのご披露。
1分弱の動画ですので、ちょいと見ていってやってください。


蔦飾り線.png

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入船亭扇治拝

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雄大な道東風景を一望の、絶景スポット(しかも、無料!) [お気に入り・おすすめ]


令和2年夏、留辺蘂図書館をはじめとする道東公演。
新型コロナウイルス影響下での開催は、例年とは違った形で行われました。
お客席の間隔を従来より広くする・高座の前にアクリルシートを立てるなど、初めての経験。

そして私にとっては24年目にして初の、網走湖・オホーツク周辺での素敵なスポットに出会えた想い出深い旅に。

けっこういる、観光したがらない芸人たち


本記事は
北の大空を舞う、農家を守る紅の翼
地元の味に元気をもらう、道東の旅
に続いての、令和2年道東ツアー旅日記第3弾。

取り上げますのは、こちらのスポット。
流氷館案内嬢.png

天都山 オホーツク流氷館。


私が訪れたのは8月31日午前11時頃、まだまだ暑い日。
玄関前で出迎えたくれた案内嬢、足元に伸びる影の濃さと長さ
そこに、当日の日差しを感じていただけたら。

私は24年留辺蘂図書館に呼んでいただいていますが、
流氷館を訪れたのは初めて
案内してくださる方と私の都合が合わなかったなどで、
たまたまそういう巡り合わせに。

宿から空港へ向かうまでの限られた時間・駆け足でしたが、
とても充実した初訪問となりました。

このあとおいおいご紹介してまいりますが、その前に。
噺家と「観光」との特殊な関係について、かいつまんで説明させてください。


三遊亭圓丈師匠の狛犬探訪・春風亭昇太師匠の山城巡りなど、仕事の旅先で自分の好きなスポットを訪れる噺家・芸人はけっこういます。
しかしそれ以上に多いのが、
「名所・旧跡訪問に、あまり積極的でない」連中。

そういったものに興味がないわけではなのですが、
妙に旅慣れてしまって
「いつかまた来るかもしんないから、今回はいいや」
と思ってしまうのが理由その①。

その②は、
現地の方のお手を煩わすのが申し訳ないから。
仕事合間の空き時間にお薦めスポットへお連れしましょうと、
お世話人さんがよくおっしゃってくださいます。

お気持ちは本当にありがたいのですが、その反面
「自分のために時間割いて車出してもらって、
なんだか申し訳ないなー」
余計な気をつかってしまうのも、小心者噺家の性。

「いやーせっかく東京からはるばる来ていただくんで、こっちはどこかご案内させていただきたいんですが。
そう言うと噺家の方、たいていお断りになられますなぁ。
やっぱり人前でおしゃべりになるのは体力お使いになるんで、お仕事の前後はゆっくりお休みになられたいんですかなー」

回を重ねている地方の落語会へ行くと、
よくお世話人さんから言われる言葉
すいません、高座のための体力温存なんて大仰なものではないんで…。
単なるこっちのわがままですから、どうか気を悪くなさらないでください。

コロナで知った、人とのつながりの大切さ


そんなわけで人見知りの激しい私は、旅先では一人で猫を探したり居酒屋でちびちびやる方が好きでした、今までは。
でも、新型コロナ以降少し考え方に変化が。

あのあまりにも長いステイホームの期間で
「人恋しい」という思いを、
この歳にして初めて切実に感じました。
人間ひとりでは生きられないんだから、
これからはもっと人との関わりを大事にしていこうと。

ましてや今回の道東訪問、感染者増加傾向にあった当時の東京から呼んでいただいただけでありがたい。
皆さんもお忙しいから、夜はひとりで行動することが多いんだろうなと思っていました。

それが伺ってみたら、焼肉や家庭料理で連日の温かいおもてなし
空き時間にブログ記事書こうとパソコン持参だったのですが、8日間で2~3本あげるのが精いっぱい。
まさに、嬉しい悲鳴。

毎日どんどん増えていった想い出と、スマホ内の写真
留辺蘂図書館寄席のことも、できるだけ早いうちに記事にしたいと思っております。
web雑俳の総括など書かなくてはいけない案件もありますので、もう少々お時間は頂戴しますが…。

オホーツク流氷館、初訪問!


実り多い滞在となった8日間、
最終日8月31日はいよいよ午後の便で東京へ帰ります。
泊っている北見の宿まで、留辺蘂図書館の大林館長自らが迎えに来てくれました。

社交的な人柄と抜群の行動力で、地元の社会教育のために骨身を惜しまないラガーマン。
図書館まつり3回目からのお付き合いで、人見知りの私でも送迎の車内で気軽に話せる方。

その時も、
「帰り道網走湖方面回ってちょっとだけ観光っぽいことしていただいて、お昼にお薦めのおそば食べて空港に着くとちょうどいいでしょう」
気さくにツアーコンダクトしてくれます。

24年のうちには興部・斜里といったさらに東の方へも呼んでいただいているので、その道中湖とオホーツク海沿いを通ったことは何度もあります。
でも本当に「通過した」だけ、道の駅で休憩したり港で少し写真を撮ったことがあるくらい。

じゃあぜひお願いしますと、ふたりで帰りのドライブに出発。

途中これまでなら頼まれてもやらなかった、
観光用看板をバックに記念撮影。
看板撮影_R.jpg

やっぱりこれがあると、旅のアルバムが引き立ちますね。

車窓を過ぎゆく湖畔の風景を愛でつつ、
目指すは天都山頂上にある オホーツク流氷館
開館1985年の歴史ある網走市の施設、
2015年にリニューアルオープンした人気スポット。

☆クリオネやフウセンウオなど、オホーツク海の生き物を水槽展示。

☆大型5面スクリーンが大迫力の、『流氷幻想シアター』。

☆本物の流氷にさわれたり、-15度の室内で濡れタオルが凍って直立する「しばれ体験」が売りの『流氷体感テラス』。

☆眺望最高、ガラス張りの多目的ラウンジとカフェレストラン
(レストランは9月11日現在、準備中)。


☆『カフェ・ド・クリオネ』の、「流氷ソフトクリーム」。
350円で食べ応え充分、キャラメル味のクリームに流氷をイメージした塩粒がトッピングされています。

絶景の展望台が、なんと無料!


魅力的なコーナーがたくさんありますが、時間の関係で私たちはまっすぐ3階の展望テラスに上がりました。

船の舳先のような形のテラスからは、
建物玄関向かって左手に網走湖・能取湖。
網走湖 能取湖.jpg

網走刑務所を正面に見て、
網走刑務所_R.jpg

右手にはオホーツクの海が広がり、彼方に知床連山を望みます。
船のへさきみたい_R.jpg


いやー、なんで今まで来なかったんだと悔やまれるほどの
絶景・眼福
とても標高207メートルからとは思えない、
雄大な360度の大パノラマ

能取湖・網走湖方面からオホーツクまで
ぐるっとカメラを回してみた映像は、Twitterの
https://twitter.com/senjitonaraban1/status/1302453483249958914
に掲載してあります。

今回は、知床が靄にかすむ北の海を撮影した動画を
ご覧いただきましょう。

こまちが泳ぎたくなるのもわかる、当日の暑さでした。

この絶景を堪能できる展望テラスは、なんと入場料0円!
さすがスケールの大きい北海道、太っ腹じゃあありませんか。
上に行くに従って料金も高くなる江の島の登攀エスカレーター
『エスカー』には、流氷館の爪の垢を煎じて飲ませてやりたいものです。

売店で、懐かしいものたちに再会!


風に吹かれてながら手すりにもたれていると、
いつまででも眺めていられる北のパノラマ。
来年もまた、来られるといいな…。
旅も終盤だと思うと、後ろ髪引かれて立ち去りがたいもの。

「そろそろ、時間ですから」
大林館長の声にはっと我にかえり、階段で一つ下のフロアに。
スペースをゆったりとった売店で、大林さんがお土産を買ってくださいました。

会計を待つ間、ざっと売り場を見ていたら…。
「うわー、これ懐かしい!」
思わず声が。

まずこちら、 クリオネグミ
クリオネグミ_R.jpg

まだ子どもたちが幼くてとにかくグミが大好きだった頃、
紋別の『オホーツクタワー』の売店で買って帰ったお土産。
パッケージのクリオネ、ちょっと微妙なイラストもご愛敬。
今回は、購入しませんでしたけどね。


そして今一つの感動の再会は…こちら。
北キツネのぬいぐるみ_R.jpg

ご当地では『北キツネ』ですが各地で名前の変わる
不思議なキツネのぬいぐるみ。
我が家ではもう長いこと、縁起物マスコットの役を務めています。

このキツネについては、
お稲荷さまの使い姫、意外な正体
の記事に詳しく。
※その回は当ブログ開設以来記録的に閲覧数が少ないページなので、この機会にお目通しいただけたら嬉しいです。

おや、そんな話をしていたら。
売店の棚で、何か動いていますよ?


ここから空港への道中でも、何枚かいかにも北海道らしい写真が撮れました。
もっとご紹介したいのは気持ちはやまやまですが、
あまり長いはご迷惑

北の想い出アルバム、
ほかのページはまた別の機会に広げることにしましょう。


オホーツク流氷館についての詳細は
オホーツク流氷館公式ページ
をご覧ください。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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5分で読めて楽しめる、江戸茶の湯と千利休トリビア [江戸のトリビア]


令和2年9月は、北海道でも熱帯夜を記録するなど全国的に暑さが続いています。
汗をかいたらまず冷たい清涼飲料水か、生ビール!

でも、ちょっと待ってください。
暑い時こそ香り高い日本茶でゆったり気分、
味わってみませんか?

えっ、この役者さんがこの役を
お茶にまつわるトリビアクイズ


私が毎月担当しているカルチャー講座、
9月のテーマは「江戸の茶道」について。
1時間ほどの解説に続いて、落語『茶の湯』を1席。

その時の講座内容から、ブログ記事用に要所を抜粋・再編集してみました。
まずは皆様を、風雅なお茶室へとご案内。
お茶室こまち.png

我が家の黒猫こまちが、
今日は亭主を務めさせていただきます。
お茶のお作法ではありませんが日本の習慣を守り、
畳のへりをよけているところ見てやってください。

このあとごく簡単に、
わが国のお茶についてのお話を申し上げますが…。
まずはTwitterでも出題のトリビアクイズ。
日本の侘び茶道中興の祖と言えばこの方、 千利休。
千利休とこまち.png

はいはい、こまちもあとでちゃんと出番あるから。
今はちょっとCIAOちゅ~るなめながら、話聞いててね。


1522年堺の豪商の子に産まれた利休は、
商いの傍ら嗜みとして修めたお茶の世界でも才能を発揮。

現代の茶道につながる
「極力華美・無駄を排し、
茶室空間・道具と礼式・作法を一体化させる」
侘び茶の道を確立したのが、60歳を過ぎてから。

歳をとってから大きな仕事をしたというのは、
噺家だと圓生師匠を思い起こさせます。
その才知と人格ゆえに織田信長・豊臣秀吉に重用され、
趣味人でありながら政治経済の世界でも重要人物だった利休。

しかし経済自治区だった堺の扱いなどを巡って、中央集権化を着々進める秀吉と利休の考えはだんだんと違う方向へ。
ついには「懐刀」と言われるほど寵愛を受けていた秀吉の逆鱗に触れ、1591年利休は切腹して果てます。


劇的な生涯を送った我が国お茶の世界の巨人は、
今まで様々な映画やドラマの題材となってきました。

ざっと思い出しただけでも、
平幹二郎
三船敏郎
三国連太郎
伊武雅刀
石坂浩二…

きら星のごときスター・個性派俳優の方々が、利休を演じています。
そうそう、桂文枝師匠もNHK大河ドラマ『真田丸』で気持ちよさそうに演じてらっしゃいましたね。

さてここで、大河ドラマ絡みの問題です。

菅原文太
高倉健
鶴田浩二

と並べば、言わずと知れた東映任侠映画の三大スター
この中で一人だけ
NHK大河ドラマで千利休を演じた俳優がいます。
いったい、誰でしょうか?

すぐ答えがわかった方は、そのまま次項へどうぞ。
思いつかない方、ネットでお調べになる前に
まずはご自分で考えたり記憶を探ってみてください。
正解は、記事のおしまいにて。

丸めて飲んでいた、最初期のお茶


☆奈良時代、遣唐使や中国・インドから来朝した僧侶らが茶を飲む習慣を日本に伝えたとされる。
☆平安時代に入り、唐代へ仏教留学した最澄・空海らが茶葉を持ち帰る。

この頃のお茶は天皇・高級貴族の口にしか入らない珍重品ですが、茶葉を煎じた味と香りを楽しむ嗜好品ではありませんでした。
心身の疲れを癒すための、薬として用いられていたのです。

飲み方も今とはまるで違い、
まず葉を蒸して丸め団子にして保存。
その団子を必要なだけ削り、
上から熱湯をかけて飲むのが当時のお茶。


その名も見た様で
団茶
現代のティーバッグや、カップラーメンにちょっと似ていますね。

喫茶作法の始まりと、対極に娯楽としてのお茶も


☆鎌倉時代、宋代中国へ禅の修行に行った栄西が持ち帰った茶の実を九州背振山に植えたものが育ち、初の国産茶葉に。
☆栄西のあと中国へ禅宗留学をした道元が、禅の教えを取り入れたお茶を飲むための作法「喫茶」「行茶」などの茶礼を定める。

当時の「喫茶」というのは禅宗修行の一環でもあり、
いろんな細かい作法が定められています。

現代のように、
「ちょっと喫チャ店で、コーシー飲みながら競馬の予想して来るわ。ついちゃあ母ちゃん小遣いちょうだい、愛してるよー」
なんて気軽なもんじゃなかったんですね。

貴族の間では高尚風雅な嗜みのお茶、
武士階級ではお茶が娯楽だった時代がありました。
鎌倉時代末から室町時代にかけて武士たちの間で大流行した
「闘茶」

当時高級茶葉の本場とされた京都栂尾産・明恵(みょうえ)上人謹製のものを、「本茶」
それ以外のお茶を「非茶」と呼び、色・味・香りで本非どちらかを当てるという遊び。

方々で戦乱が続き明日の命も知れぬ武士にとっての、
手っ取り早い刹那的娯楽として大流行。
莫大な金銭・刀剣や武具も賭けての闘茶はあまりにも賭博性が強すぎるということから、寺方や朝廷・幕府から禁令が出されたほど。

ゴージャス系茶道が人気だった時代も


☆室町時代
同朋衆
(将軍に文化娯楽について進言する芸能人。
劇団四季の浅利慶太氏みたいなものですね)
だった能阿弥が、

中国渡来の台子
(だいす。茶道具を収めるための移動式棚。
テレビの通販で売っている、急須や茶碗を入れるキャスター付きのワゴンを想像していただければ)
などの道具と器を組み合わせた
「台子飾(だいすかざり」 というお茶の礼法を完成。

能の足の運びや弓の技法も取り入れた、
館うちでのいわゆる「書院の茶」全盛の時代がしばらく続きます。
禅と一体だった頃の喫茶法よりは様式美を重視し、
扱われる道具も高価な渡来ものがほとんど。
代表的なのが、こちら。
カラスと曜変天目.png


釉薬のかかり方が特徴的な、曜変天目茶碗
わが国では4点所蔵されているだけの国宝・文化財。

カラスたちには、表面の文様が大きな目玉に見えて怖いようです。
北の大空を舞う、農家を守る紅の翼
の記事の、鳥追いカイトみたい。
一緒にしちゃ、茶碗に失礼ですが。

書院台子のお茶は貴族階級だけでなく、
闘茶を禁じられた武士たちの間でも盛んにおこなわれました。

作法を守り茶を嗜むほかに、所蔵する高価な茶道具を招いた相手に見せて自らの経済力を誇示するのも大きな目的の一つ。
また当時の茶会は宴席でもありましたから、一派の武士たちが集まって敵対勢力との対し方などを稟議する 密談の場 としてもお茶席は重要でした。

華美を排した、侘び茶の時代へ


1980年代バブル期の日本のように、
どんどんエスカレートしたゴージャス系茶の湯
それに疑問を抱き本来の禅と結びついた 「侘び茶」 を提唱したのが、とんち話でおなじみ一休禅師に学んだ村田珠光

「できるだけ華美贅沢を排し、身分の差関係なく茶の席に連なる。
足らないものを欲しがるのではなく、今あるものに感謝し満足する。
五感を研ぎ澄ませて茶を味わうことで、人や自然と虚心坦懐に触れ合う」

そういった考えの茶席で使われる道具は、
派手な中国産から素朴な国産品が増えていきます。
私の生まれ故郷岐阜県=美濃の国の志野焼もその一つ。
志野茶碗とこまち.png


「これで猫にご飯食べさせときますとな…。
ときどきその猫が、旅の方に三両で売れますんで」
落語『猫の皿』を思い出したんで、
獲物ゲットバージョンのこまちを配してみました。

そして落語に出てくる茶道具と言えば…。

小井戸茶碗.png


名器、井戸の茶碗。
高麗産ですが、先ほどの天目茶碗より質実剛健なイメージ。

私がやった落語『井戸の茶碗』を聴いて名人・古今亭志ん朝師匠が、アドバイスをくださったことが。
知らなかったので千代田朴斎や清兵衛が茶碗を持つ時、私は湯?みみたいな形だと思ってやってました。

ご覧の通り今に残る井戸茶碗は、
口が大きく開いているのが特徴。

「だから両手で包み込むんじゃなく、下から支えるように持つのが正しいんだよ。
いや僕も最初は知らなくて、親父(古今亭志ん生師匠)に言われて初めてわかったんだけどさ」

華やかに笑いながら教えてくれた、平成・昭和の名人

名人古今亭志ん朝のお宝エピソード
の記事でも書きましたが、そのあまりにも早過ぎる旅立ち。
しかしたくさんの想い出を、お客様や仲間にくれた心優しい大先輩。
あちらへ行った時少しでも恥ずかしくないよう、私ももっと精進しなくちゃ。

千利休の残した、三つのもの


クイズの正解の前に、もう少ーしだけお茶トリビアを。
茶の湯(お茶が正式に幕府の礼法に取り入れられ「茶道」となるのは、利休の没後)の巨人・千利休の偉大なる遺産について。

①まず、名言
利休はお茶席に関する言葉を数多く遺していますが、
その代表格はなんといっても

一期一会

これです。

以前から禅の教えの中にこの考え方に通じるものはあったそうですが、それをこれだけ端的に言い現わすとは。
さすが無駄を省いた侘び茶の巨匠、本当に頭のいい方で言葉の使い方のセンスも抜群だったんですね。
私も落語や雑俳をやるうえで、見習いたいもの。  

②意外な日用品
皆さんは普段お使いになることはないでしょうが、
昔の人には必需品
現代でもお相撲さん・役者さん・私ども噺家、
そして昔かたぎのヤ〇ザさんが履いている

雪駄

が、利休ゆかりの発明品。

いわれは諸説あって、
☆雨の日にお茶会に来る方が、草で編んだ草履履きだと道中足が濡れて冷たい。
そこで利休自身か知り合いの茶人が、草履の裏に防水用の皮を貼り鋲で留めることを考案。

☆庭木に水をやっている最中の利休が、濡れた地面で足を滑らせたのを見た織田信長。
大事な茶人の体に障りがあってはならじと、家来に命じて滑り止め目的で動物の皮を貼らせた。

うーん、どっちもうなずける説。
いずれにしても利休がいなければ、
この世に存在しなかったかもしれない雪駄。
私たちは、千利休のお墓の方には足を向けて寝られません。

③今でも頻繁に使う、日常語
自身の造語ではありませんが、

名物

も千利休あっての言葉。

今では
「ナゴヤドーム名物ドアラのバク転」
「広島名物もみじ饅頭」
といった使い方をしますが、
もともとは茶道具の銘品を指した言葉。

さらに「名物」も時代によって3つに分かれており
(1)利休以前の銘品=大名物
(2)利休自身・門弟の鑑定による品=名物
(3)利休の教えを継ぐ小堀遠州が名器と定めた道具=中興名物?
の3種類。

これから類推するに、
「この品は、いいですね。これは正真正銘、名物と言っていいでしょう」
という言い方は以前からあったとしても、頻繁に使い人口に膾炙させたのは利休だったのではないでしょうか。

『開運!なんでも鑑定団』の中島誠之助さんの名文句
「いい仕事してますね!」みたいに、
当時の流行語になっていったのでは。
そう、愚考する次第です。

さあ、トリビアクイズ正解発表!


ではお待たせしました。
おしまいに
「東映任侠路線三大スターで、
大河ドラマで利休を演じたことがあるのは誰?」
答えを、こまち宗匠から発表してもらいましょう。

ここまでわからなかった方のために、ヒントを二つ。
・三人のうち一人は、映画に比べテレビドラマ出演の本数が極端に少ない。
・幕末を舞台にした大河で、利休が出たドラマと近い時期に主人公を演じたことがある俳優が一人いる。

ここから消去法で考えると、けっこうすぐわかっちゃうかも。
それではこまち師匠、お願いします。


蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治

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北の大空を舞う、農家を守る紅の翼 [日々雑感]


北海道で出会った、透明な空を舞う鳥の姿。
気ままに飛んでいるのではなく、
実は日常生活の中で人間の役にたつ、
重要な役割を担った翼。


浅学にして初めて知ったこの鳥のエピソードと、
動画はGIFとキーフレームアニメの豪華!(?)2本立て。

人家近くを飛びかう、巨大な鳥たち


今回のテーマは、ずばりこれです。

鷹匠こまち.gif

こまちが扮しているのは、鷹を自在に操って狩りをする
鷹匠(たかじょう)

江戸時代には将軍家・大名旗本に召し抱えられた、伝統の業師。
その血脈は現在途絶えていますが、保存会・意外なところでは
害虫獣駆除の業者さんに技術は受け継がれているそう。

しかし今記事で取り上げるのは人間の匠ではなく、
鷹の方です。
最近、街中ではまず見る機会のない大きな鷹を何羽も目撃したので、
その模様を渾身のレポート。


令和2年8月下旬に訪れた、北海道北見・網走方面の旅。
前乗りしたあくる日・道東での仕事口開けは、
おいしいメロンの産地でもある訓子府町

地元の味に元気をもらう、道東の旅
の記事では、名物の卵でとじないたれカツ丼も取り上げています。

近隣の置戸町・留辺蘂町と並んで、
町民一人あたりの図書館資料貸出冊数全国トップクラスの町
庁舎やお店が集まる中心地の街並みもきれい、とてもチャーミングな感じがして好きな土地の一つです。

町の社会教育課の方の運転で北見から30分ほどの会場へ向かう道中、
街道沿いの畑や人家の庭先でこんな風景に何度か出会いました。
鳥追いカイト鷹風景.jpg

大きな翼を広げて、悠々と青い空を舞う鳥の勇姿。
一見「トンビかな?」とも思ったのですが、
身体がはるかに大きく羽根のフォルムも違っています

ひょっとして、鷲か鷹
北の大地は東京と違ってとにかくスケールが大きいですから、
巨大な猛禽類をこんな身近に見ることができるのでしょうか。
でも人の家の軒すれすれに飛んでいる、
浅草花やしきのジェットコースターみたいな姿も。

車の窓越しですがよーく見ると、
角度によってなんだか飛んでいる身体がぺったんこ
厚みがあまり感じられません。 
さらに窓に顔をおっつけて観察すると…。

飛んでいるのは生身の鳥ではなく、
大型猛禽類の姿を印刷した
凧=カイト
だと判明。
切り抜きアップ鷹.png

その翼、農家と作物の頼れる味方


本物ではなく、鳥型の凧
この時期に、凧あげ。
北海道と本州では風習もいろいろ違いますから、ご当地では夏場にカイト遊びをするのが当たり前なのでしょうか。
しかし私が凧を目撃したのは、平日午前中。
凧で遊びそうな子どもたちは、皆学校へ行っている時間。

いったい誰が何の目的であれをあげているのか、
運転中の係長さんに聞いてみると
「ああ、あれは畑や庭のカラス除けですよ」
教えてくださいました。

私はまるで知らなかったのですが2016年あたりから製造販売が始まり、今では東北の農家の方を中心に全国的に使われている
「鳥追いカイト」 という商品。

本体はポリエチレン製・ステンレスのポール竿とグラスファイバー製ワイヤーがセットになって、ホームセンターやネット通販で簡単に手に入ります。
あとで見ていただきますが、お値段は品物やお店によって若干差はありますがだいたい2800円~3500円くらい。

気になる効果のほどはとネット上の商品レビューを見てみると…。

「設置したら、すぐカラスがこなくなった。これは大当たり!」

「ワイヤーがもう少し長いと理想的ですが、家にある針金を足してやって充分使えています。」

「確実に効果が表れています。
設置してまだ1か月なので耐久性がどれくらいかはまだわかりませんが、このお値段なら毎年買い替えてもいいと思っています」

「カラスには効果てきめん!
ただしハトやキジ、スズメなど小型の鳥はまるで怖がりません。
大き過ぎて、最初から天敵とは認識しないのでしょうか」

などなど高評価する声の方が、役に立たなかった・無駄な買い物をしたというレビューより私が見た範囲では多かったですね。

日をあらためて訓子府の別の職員方に伺ったら、庭の家庭菜園を守るために設置したら立派にカラス除けを務めているそうです。

一時はやったほかの対カラス撃退法やグッズ
・不要なCDプレーヤーを紐で吊るす。
・大きな目玉を印刷した、カラス除け風船。
などと同じく、しばらく経つとカラスが学習して怖がらなくなるのでは?

鳥追いカイトを使っている職員さんに、
この疑問をぶつけてみました。
カラスって、本当に賢いですからね。

するとその方いわく

「自分が訓子府でこのカラス除けよく見るようになったのは去年くらいからなので、このあたりではまだ効果が持続しているということなんでしょうね。
効き目がなくなったら、新しいのは買わないし古いのも捨てちゃうでしょう。
まあ、処分が面倒で吊りっ放しのところもあるかもしれませんけど」

とのお返事でした。

カラスにとっては恐るべき存在、
禽類食物連鎖の頂点に君臨する鷹。
鳥追いカイトはそのシルエットをうまく表現し、支柱から吊られた本体は微風でもまるで生きているかのように飛翔するデザインになっています。

私が見た時もほとんど風はなかったはずですが、
このように元気に飛んでいました。
鳥追いカイト鷹.gif


カラスが学習し慣れてしまうまでは鳥追いカイトできるだけ長く、
農家の方々と農作物の頼れる味方
であり続けていてもらいたいものです。

ご参考までに、ネットで買える鳥追いカイト情報。


私はまだ実際にホームセンターなどで実物をみたことがありませんので、取り急ぎwebで購入できる商品を調べてみました。


一番オーソドックスなのが、Amazonでも扱っているこちら。
Amazon 鳥追いカイト鷹.jpg

福農産業謹製の『鳥追いカイト 鷹』
お値段税込み3361円、送料無料。
下に配されたスイカ畑が、いい味を出してます。


大手ホームセンターチェーン・コメリの通販では、鳥追いカイト鷹の第2世代を発見(ほかでも、もちろん売ってますよ!)。

お客様からの要望を受け、本体の強度をアップ・羽根と胴体に反射材を装備。 見た目もぐっと精悍になったこちらの商品、
『鳥追いブラックカイト 鷹NEO』
コメリ 鳥追いブラックカイト鷹 NEO.JPG

うーん「NEO」、いいネーミングだな。
『仮面ライダースーパー1』
とか
『ウルトラマンZERO』
みたい。

中日ドラゴンズの黄金ルーキー・根尾君も、
鳥追いカイトNEOのように大きく羽ばたいてもらいたいものです。

お値段2980円、送料別。
ただしお近くのコメリ店舗でお受け取りなら、送料はかかりません。


そして楽天市場内のお店では、安農というメーカー製の
『防鳥具 カイト鷹』
が目につきました。
愛農 カイト鷹.JPG

商品パッケージに印刷された、鷹の顔の迫力。
眼光鋭く、まさに鷹のような目でほかの鳥を圧倒。
お値段3480円・一度に3500円以下の購入だと別途840円の送料がかかりますが、購入意欲をそそるインパクトはこの商品が一番。

お店の名前もなかなか凝っていて、
「日用品卸問屋 火の鳥」さん。
店主の方が、手塚治虫かストラヴィンスキーのファンなのでしょうか。


以上ざっとですがお手軽に購入できる鳥追いカイト、
ご紹介しました。
都会でも近くに大きな木があるお宅にお住いの方は、
春先などカラスの害にお困りということも多いのでは。

そんなお宅や家庭菜園の見張り番として、
「鳥追いカイト鷹」
けっこう、お役にたつかも。

おしまいは、空に憧れる猫のアニメで


この歳になって初めて知った、鳥追いカイト。
鳥の記事のトリは、
我が家の黒猫こまちにとってもらいましょう。

東京とまるで透明度が違う澄んだ青空を鷹カイトが舞うのを見たその瞬間から、
「こまちもに、この空を身体中で味わってもらいたい!」
強く思いました。

ではその思いをこめた、
キャプション付きキーフレームアニメ。
お粗末ながら、
少しでも北の夏の透明な日差し・爽やかに吹き抜ける風
を感じていただけましたら。


蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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