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飛鳥時代の昔から変わらない、人とギャンブルの関わり [日々雑感]


カジノのルーレット台に向かい、真剣な表情で玉の行方を見守る黒猫こまち。
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狙うは数字の一点張り、
”末広がりの八”。

日本最古の
ギャンブルと禁止令

『日本書紀』に「天武天皇が貴族たちと盤双六の賭けをした」との記載があり、これがわが国最初のギャンブルの実例であるとされています。
時に西暦685年9月。
まだ平城京も開かれていない、飛鳥時代のこと。

天武天皇と位の高い貴族たちが遊んだ「盤双六」とは、後に”和風バックギャモン”とも称された二人対戦式のボードゲーム。
盤双六2.jpg
盤上に各黒白15個の駒を配し、対戦者が2個のサイコロを交互に振って目の数だけルールに従って駒を動かす。先に相手の陣に自分の駒を全て入れた方が勝ち。

後に流行する囲碁・将棋などよりサイコロの出目によるギャンブル性が強く、宮中では反物・檜扇などの景物を賭けての盤双六は大変な人気だったそうです。

節度をわきまえて遊んでいるうちはいいのですが、勝ち負け・損得の方ばかりに気がいってのめり込むのがギャンブルの怖さ。
「博戯(賭博)」としての盤双六熱は、やがて宮中から庶民の間にも広まっていきました。

「過ぎたる遊びは人心を惑わし国と民を荒廃させる」
との懸念から、賭け盤双六大好きだった天武天皇崩御後の西暦689年『禁断双六の令』が発布されます。

お触れを出した持統天皇は、
天武天皇の奥方。

「あたしゃ亭主で懲りてるからね。賭け双六なんて熱くなっちゃロクなことないんだから、やるもんじゃないよ!」

おそらくは潔癖な女帝であったであろう持統天皇。身近にギャンブル依存症の人がいて賭博の怖さを知っているからこそ、こういう禁令を出したのでしょうね。

二度目の禁令も
やはり女帝が発布!

ご亭主のギャンブル熱に手を焼かされたのは、持統天皇だけではありませんでした。
禁令をかいくぐり方々で行われる賭け双六に業を煮やしたもう一人の女帝・孝謙天皇も、759年に再度厳しい盤双六禁止のお触れを出しています。

この方の旦那さまは、やはり盤双六を好んだ帝である聖武天皇。
権力者である奥さんが、その死後に満を持して法を整備し発した禁令。
聖武天皇がお隠れになられた3年後という発布のタイミングには、生前の旦那の賭け事三昧を苦々しく思っていた孝謙天皇の心情が垣間見えるような気が。
孝謙天皇と持統天皇.jpg

「役人も農民も法を恐れず双六にうつつを抜かしている」
「子は親のいましめも聞かず、家業まで滅ぼしてしまう」
禁令を出すにあたって、孝謙天皇はこう嘆いてもいます。

貴族たちの雅な時代に発せられたこの言葉、現代にもそっくりそのまま通用する。
いかにギャンブルというものが、時代を超えて人々の心を魅了し続けているかということでしょう。

ブログ主
生涯一度だけの大博打

小心者の私は、人生半ば以上生きてきて未だ本格的なギャンブルというものをしたことがありません。
学生時代は寄席三昧で後半ほとんどキャンパスに行かなかったので、友だちはできず麻雀も覚えず。
噺家になってからは競馬好きだった師匠のお使いでよく馬券を買いに行ったものですが、自分でもやってみようとは微塵も想いませんでした。

そんな私が今までの生涯でただ一度だけ、大博打(自分としては)を打ったことがあります。



あれはまだ子どもたちが産まれる前、私たち夫婦が30代だった頃のこと。
飲み友だちご夫妻と一緒に、韓国へ辛い物を食べる旅に行きました。
本場の焼肉や冷麺に舌鼓打ちながら過ごす呑気ツアー、4泊5日の3日目あたりだったかな。その日の夕食場所へ向かう前に、連れのご夫妻が途中にあるソウル郊外の『パラダイスカジノ ウォーカーヒル』に寄ってみようと言い出しました。

その方たちも別にギャンブル好きというわけではなく、ソウルオリンピック後に大幅リニューアルオープンした外国人専用老舗カジノをちょっと覗いてみようという軽い気持ち。
どうせ店まで行く通り道だしちょっとしたアルコール飲料なら無料サービスがあるということなので、呑兵衛の私たち夫婦も夕食前の喉湿しと運試しで行こう行こうと大賛成。

最寄り駅から送迎シャトルバスで、ソウルの不夜城カジノを訪れます。
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弱小噺家が、生まれて初めて足を踏み入れたギャンブルの聖地。
分厚い絨毯が敷き詰められたフロアは向こうが見えないほど広く、きらびやかなシャンデリアのもと観光客たちのさんざめきやディーラーの声が響く独特の雰囲気。

一人の予算は日本円で3000円~5000円くらい・滞在するのは1時間弱で軽く遊ぼうと決め、めいめいチップを交換。
それぞれスロットマシンなどでカジノ気分を味わったあと、最後は全員一緒にルーレットで締めようと台の前に集まります。
ルーレットで勝負.jpg
韓国美人の女性ディーラーが手際よく仕切るルーレットの賭けは、投げ入れられた玉の回る音を聞いたりチップが移動するのを見ているだけでも胸躍るもの。

肝心の賭けの方は最初から元手の少ない遊びですから、それぞれ好きなように赤か黒か・奇数か偶数かなど倍率の低いもの中心に賭け続けているうちほかの3人は手持ちのチップを30分ほどで使い切りました。

ここで今までギャンブルとは無縁だった私だけが大勝ちしないかわりに大負けもせず、まだ2000円ほど持って賭けに生き残っていたというのは人生の皮肉でしょうか。

あまり連れを待たせてもいけませんしこちらもお腹が空いてきましたから、ここが切り上げ時と勝負に出ることに。
手持ちのチップを半分に分け、1000円を赤黒・もう1000円を数字一つに賭けてみたのです。

その時私が選んだ数字は、冒頭イラストのこまちと同じ「8=八」。
日本人にとっておめでたいこの数は、まだ一度も私たちがルーレットに参加している台では出ていませんでした。

数学的に言えばルーレットで出る数は毎回38通りが同じ確率のはずですが、人間の心情的には(今まで出てないんだから、そろそろ来るんじゃないか)と根拠なき期待を抱きがちなもの。
私もそんな気持ちで、
8に張ってみたのです。

連れの奥さんから「やっぱり噺家さんて、末広がりって縁起担ぐんだねー」と冷やかされ、私もほとんど期待はしていませんでしたが…。

運命というのは、本当に不思議なものです。
カラカラカラカラーッ。
小気味いい音を立てて、回るルーレットの中を転がる小さな玉。
やがて盤の回転が止まりカラリッ・コトンと玉が収まった升目に刻まれていたのは…。
ルーレットで8.gif
そう、「8」でした。

カジノルールのルーレットでは最高配当の36倍大当たりを、ギャンブル初心者の私が1回限りの一点張りで射止めたのです。
女房と友人夫妻・一緒に台を囲んでいるほかの観光客からの喝采の中、美人ディーラーがうっすら笑みを浮かべながら大量のチップを私の方へスーッと運んでくれました。

震える手でそれをすくい上げると、交換所に行って即換金。
元手1000円が、3万6000円相当のウォンに化けました。
ギャンブル慣れした人には子どもの小遣い程度の額でしょうが、小市民の私には初めて賭け事で手にした夢のような大金。

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まさにビキナーズラックで振って湧いたこの儲け。
あぶく銭はひと晩で潔く使っちゃえと、玄関のベルボーイにチップを弾んで呼んでもらったタクシーで夕食に予約してある店に横付け。
もちろん普通は割り勘にする飲食代も、私の方で出させてもらいました。

帰りも奮発したタクシー代でちょうどルーレットの儲けを使い切り、ホテルのベッドに入ってからも。
ルーレットが止まった瞬間に正面の電光掲示板に点った「8」の輝きと、ディーラーの"This number is Eight!"とコールする澄んだ声が胸に蘇ってなかなか寝つかれなかったものです。

人生は
日々賭けの積み重ね

人によっては初めての大当たりでギャンブルの魅力に目覚め、深入りしていく方も多いのでしょうが…。

いい悪いではなく生来賭け事が向いていないであろう私は、ウォーカーヒルでの一夜以来本格的なギャンブルをしたことがないまま今日まで過ごしてきました。
せいぜい子どもたちが幼い頃せがまれて、スクラッチくじやゲームセンターの景品獲りをやったくらい。

「そりゃ家庭顧みないで借金こさえるほどのめり込んじゃいけないけど、まるで賭け事をやらないのも人間として面白くないんじゃないの?」
そうお思いになる方も、いらっしゃるかもしれませんが…。

小市民の私としては、生涯の職業を不安定な「噺家」という商売に決めたことが人生最大のギャンブルだと思っています。
そしてその勝ち負けは、私が寿命を全うするまでまだわからない。
いや生前売れなくてもあの世に行ってから再評価される芸人もいますから、本当に先の見えない賭けを続けている最中ということになるでしょう。



毎日いただく食事の当たりはずれや、駅で自分に都合のいい電車をタイミングよくつかまえることができるかとか。
考えようによっては、私たちの暮らしは日々いろんな賭けを積み重ねていくものなのかもしれません。

縁あって同居猫をうちに迎えたのも、わが家としては大きな賭けと言えるでしょうし。
ごはんも賭けだ.jpg
こまちが少しでも幸せでいてくれるように。
博才ゼロの私でも、この賭けには全力で勝ちに行くつもりです。

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お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
またのご訪問、お待ち申し上げております。
入船亭扇治拝

タグ:猫 落語
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あの名作アニメ完結劇場版、早くも地上波初登場! [お気に入り・おすすめ]


2022年11月25日(金)21時~『金曜ロードショー』で放送の『劇場版ヴァイオレット エヴァ―ガーデン』
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予約し忘れていた黒猫こまち、大急ぎで録画の準備!

涙腺崩壊必至の名作
地上波初登場

☆『あなたは手紙を 書きたくなる~あの名作アニメ、特別編集版・OVAがテレビ地上波初放送!~
で綴りました、『ヴァイオレット エヴァ―ガーデン』TVシリーズ特別総集編と外伝の地上波での放送。

それから1年後、満を持して完結編である劇場版が同じ金曜ロードショー枠にてテレビ初オンエア。
TVシリーズ1回目から主人公の数奇な運命を見守ってきた筆者は、ここで改めてヴァイオレットの物語が一区切りつくんだなと感無量。

もうここで私の駄文をくどくど連ねる必要はないでしょう。

戦場での「人間兵器」から、人と人とを繋ぐ手紙の代筆業「自動手記人形」として生きることになった一人の少女の物語。
手紙.jpg
製作スタッフと出演者の方々が命を吹き込んだこの作品。

世界中のファンがまるで自分の家族・友人のように見守ってきたヴァイオレット・エヴァ―ガーデンの人生の物語は、”これ以上もこれ以外もあり得ない”という最高の形で完結したと私は思っています。

さぁ、皆さんもリアル視聴・録画予約のご準備はよろしいですか?

おっともちろん、あふれる涙を拭うための大量のティッシュとハンカチいやタオルもお忘れなく。

『劇場版ヴァイオレットエヴァ―ガーデン』を既にご覧の方もそうでない方も、ご自宅のテレビで観なおせば。
きっとあなたは、誰かに
手紙を書きたく
優しくしたく
なるはず。

ヴァイオレットエヴァ―ニャーデン.jpg

☆金曜ロードショー『劇場版ヴァイオレットエヴァ―ガーデン』公式ページhttps://kinro.ntv.co.jp/lineup/20221125 

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ご精読ありがとうございます。
またのご訪問、お待ち申し上げております。
入船亭扇治拝

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2022年締めも粋な言葉遊びで!『柚子の香スピリッツ』へのお誘い [web雑俳]


2022年も秋が深まり、本格的な冬へと向かう頃。
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今年の掉尾を飾る雑俳落語会『柚子の香スピリッツ』、高円寺にて華々しく開催!

師走を彩る
計6回公演

仲間うちは敬意を込めて”雑俳の女神”と呼ぶ古今亭駒子師プロデュースの、『江戸言葉遊び雑俳と落語の会』。
今年はGW・秋(前後編)に続いて12月にも開催。

会場はスピリッツシリーズでは初めての『竹芳亭(ちくほうてい)』
竹芳亭.jpg
JR高円寺駅前パル商店街の地下にある、こぢんまりした演芸スペースです。
☆住所:東京都杉並区高円寺南4-25-9 地下一階
※地図はこちらのリンクをご覧ください。
https://goo.gl/maps/62UEz1DYAqdNdi8C8

その竹芳亭を舞台に開催される柚子の香スピリッツ、師走の日曜3日間に各昼夜2回ずつ・計6回公演の豪華版!
もちろん毎回出演者・演目・雑俳兼題は違いますから、どの回もお客様を飽きさせません!

各回の出演者と兼題は、以下の通り。



12月11日(日)
~昼の部①~

☆出演:三朝 扇蔵 司 窓輝

☆兼題:前句附 きりたくもありきりたくもなし
【例句】 盗人を捉えてみれば我が子なり



 ~夜の部②~


☆出演:司 窓輝 菊志ん 玉の輔

☆兼題:小噺附(短ければ短い程良し)
【例句】
息してるか
ハイ

スッキリした顔してるな
そうかい



12月18日(日)
~昼の部③~

☆出演:駒子 扇里 金八 一琴

☆兼題:同音折句 こ・う・え・(ん)・じ
【例句】 恵比寿講枝も撓るる縁起物



 ~夜の部④~


☆出演:扇里 金八 一琴 扇治

☆兼題:据字附 中七数字冠り
【例句】
秋晴や十勝平野の収穫祭
気の合わぬ二番太鼓の昼前座



12月25日(日)
~昼の部⑤~

☆出演:志ん陽 小せん 志ん丸 扇治

☆兼題:地口附 古今東西有名名言一切
【例句】
利休は青かった
陰険だもの



 ~夜の部⑥~


☆出演:扇蔵 志ん陽 小せん 玉の輔

☆兼題:冠沓附 雑俳に関する一切 三音以上
【例句】
ゴセン 午後のひと時点てた一煎
ゴキャク 互選あばれた常連の客



~開場・開演時間~
☆昼の部:開場12:30 開演13:00
☆夜の部:開場16:30 開演16:45

~木戸銭~
☆予約・前売り 2500円
☆当日 3000円

~ご予約・ご投句・お問合せ~
☆kokontei.chiyorin@gmail.com
☆090-1767-2273 (駒子)

~ご投句について~
☆投句数:各題につきおひとり様10句まで
※ご投句は当日ご本人様か代理の方がご来場いただけるお客様に限らせていただきます。

☆投句締切
・12月11日分:12月3日(土)
・12月18日分:12月9日(金)
・12月25日分:12月16日(金)

※雑俳の題・作り方につきましては柳家小ゑん師匠の
☆『新・雑俳の手引き
をご参照いただき、それでもご不明な点は上記駒子師までお問合せください。

筆者参加回の
兼題について

ここで筆者が出演させてもらう回の題について、実際に詠み始めてから感じたことを自分の思考を整理するために記しておきます。

まず、その④の「据字附」。
通常据字と言えばたとえば「それにつけても」という具合に中七を決めておき、それに合わせて上五と下五を詠み川柳を完成させます。
今回は遊び方をちょっと捻った「数字冠り」、中七が数字から始まるように詠まなければなりません。

わが国には「一石二鳥」「三寒四温」など数字が入った四字熟語が多くあるので、最初はそれを使って句を作り始めたのですが…。
これが便利なようで、意外と使いづらいことに気づきました。

それだけで意味が完結している四字熟語をはめるとそれだけで中七のうちほとんどの音数を使ってしまい、句を詠むうえでの自由度がぐっと下がってしまうケースがけっこう多いのです。
もちろんうまくはまればいい句になるのでしょうが、今のところ私が捻り出した句では数字の四字熟語は使っておりません。

投句作ではありませんが、こんなのを思いつきました。
うちの猫三つ子のままでいておくれ

私たちよりはるかに早く歳をとる、猫という生き物。
もし叶うなら、人間の子で一番かわいい時期とされる三歳くらいで、わが家の猫の成長も止まってくれないかな…。
三つ子でいておくれ.jpg
猫好きなら、一度は抱く願望。



そしてその⑤、有名な名言の地口。
冒頭しかいじってはいけない洒落附に比べ、題材のどこをどう言い換えてもいい地口附は自由度が高く詠みやすいとされていますが…。

私が今回いきなり悩んだのは、
「名言とはなんぞや?」
という根本的な定義。

「古今東西有名ことわざ」での地口はこれまで何度もやったことがありますが、それと「名言」の違いはなんなのでしょうか。
そうそう、「格言」も厳密に言うと「名言」とは違うそうですし。

調べてみた結果わかったのが、
いつ誰ともなく言い出した暮らしの中の様子・知恵・風刺を表した文句が、時代とともに人口に膾炙したのが「ことわざ」。

ことわざより教訓的な内容に特化した短文が、「格言」。

「名言」は教訓を含み格言と重なるものもあるが、それだけでなく物事の本質そのものを(うまいこと言うねぇ~)という言葉で表現した文句・短文。
格言より比較的歴史が新しいものが多い。
私たちの身近だと、『流行語大賞』に選ばれるような文句がのちに名言として人々の記憶に残ったりします。

・「早起きは三文の得」はことわざ。
・「天才とは1%のひらめきと99%の努力である」は格言。
・「芸術は爆発だ!」は名言。

ことわざ・格言・名言をざっくり区別すると、こんな感じ。

考えるアイコン.jpg

今回は「格言」と「名言」の違いはそんな神経質にならなくてもいいのかもしれませんが…。

何にしても題材になる言葉を多く知っていないと句が詠めないので、図書館から借りてきた分厚い『世界名言集』に目を通すこまち。
名言集読むこまち.jpg
なんとか、いい句はできそうかい?

さぁ皆様も、こまちや噺家たちとご一緒に。
粋な言葉遊びで、暮れのひと時を楽しく過ごしてみませんか?
そう、あったかい柚子湯に肩まで浸かっているようなゆったり気分で。
柚子の香スピリッツ.jpg

皆々様のご参加ご来場、出演者一同心よりお待ち申し上げております!

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ご精読ありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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実際の距離以上に遠かった、青ヶ島への旅 [旅のアルバム]

青ヶ島へ向かう.jpg

ヘリコプター『愛らんどシャトル』が向かっているのは、青ヶ島。

伊豆諸島の中で”最も上陸が困難”と言われる東京都無番地の島に、黒猫こまちは無事たどり着くことができるでしょうか?

早朝の出発
混み合う空港

2022年11月18日~20日、学校公演で青ヶ島を訪れることになった筆者。
公演自体は19日(土)の午前中1回のみ、前後の日程は移動日です。

青ヶ島を目指すにはまず東京都心から360㎞離れた八丈島へ渡り、そこから連絡船かヘリコプターでもう60㎞移動。
所用時間は連絡船が約3時間・ヘリだと約20分、それぞれ一日に一便だけ。

島の周囲全てが切り立った断崖絶壁の青ヶ島の港には、波が少しでも高いと連絡船は接岸できず八丈島へ引き返さなければなりません。
その就航・接岸成功率、なんと年間平均50~60%。
島に暮らす方々の、
ご苦労がしのばれます。



私を含めた『わんぱく寄席』一行は、公演前日に船より確実なヘリで青ヶ島入りする行程。
9時40分発の愛らんどシャトルに連絡する飛行機は、朝7時30分羽田発。
早起きしてまだ暗い中電車を乗り継ぎ、午前6時半前に空港へ着いてみて驚きました。
3か所稼働している保安検査場が、いずれも出発のお客さんで長蛇の列
政府の旅行支援を使って旅をする方がまだまだ多いのと、1か所の検査場で探知機トラブルがあったのが原因。

私はなんとか一番空いているレーンを見つけて比較的スムーズに検査場通過、朝の日に照らされた全日空機へと乗り込みます。
早朝の出発.jpg
爽やかな朝の旅立ち、まさかその後に予想外の事態が待っていようとは…。

神ならぬ身の筆者には、
知る由もなく。

久しぶりで
窓外の景色を満喫

今回は本当に久しぶりで飛行機窓際の席に座り、好天に恵まれた空の様子を満喫させてもらいました。

窓外に見渡す限り広がる、もこもことした雲の波。
広がる雲海.jpg
太陽がだんだん高く昇り、雲海を幻想的に照らします。
日が昇る雲海.jpg

こまちが思わず 『天空の城ラピュタ』みたい! と指差した、まさに「竜の巣」のような雲の塊を抜けると…。
竜の巣.jpg
東京から360㎞の海に浮かぶ、八丈島の姿が見えてきました。
現れた八丈島.jpg

ほどなくして飛行機は定刻から20分遅れで、緑豊かな島の滑走路に無事着陸。
着陸八丈島.jpg

まさかまさかの
トラブル続き!

羽田での出発が大幅に遅れたため、われわれが八丈島へ到着したのは8時50分。
ヘリの出発時刻9時20分まで、あまり余裕がありません。
そこへもってきて、今度は預けた荷物がなかなか出てこないのです!
中型飛行機ほぼ満席のお客様がみなジリジリしながら待っているのに、荷物は積み下ろしレーンから回転台へと一つずつガッタンゴットンとのんびり出て来る。

9時を回るとヘリの運行会社・『東邦航空』の地上職員が、「受付時間過ぎてますよー!」と呼びに来ました。
事情を話してなんとか受付を延ばしてもらい遅々として進まない荷物の排出を待っていると、やっと最後に独楽の芸人さんの模擬刀と私のスクリーン用三脚が流れてきます。

それをひっつかんで愛らんどシャトルの受付に駆けつけたのは、9時15分過ぎ。
手荷物計量・体温測定・今日二度目の保安検査を経て、ようやくヘリに搭乗することができました。
ヘリコプター乗り換え.jpg

荷物のことではちょっとトラブったけど、ヘリに乗ってしまえばこっちのもの。
『わんぱく寄席』出演者一行4人・観光客の方4人、そして私たちを迎えに来てくださった青ヶ島中学校の先生がおひとりで満席のヘリコプター、正副操縦士が揃ったところで扉が閉まります。

さぁ、いよいよこれから20分の島から島への空の旅だ!
機内にて.jpg
ワクワクしながら待っていると、計器の最終チェックが済んで副操縦士がメインスイッチらしきものをパチリ。
エンジンがグオーンと音をたてローターがブルンブルン、ブぅ~ンと回り出し…のはずが…。
スイッチを入れても、
何も反応しません。

首をひねりながら何度かパチパチやっていた操縦士たち、しばらくして二人で顔を見合わせ何か相談した後。
正操縦士から
「すいません、機材トラブルが発生しました。点検と修理を行いますので、待合室でしばらくお待ちください」
とのアナウンスが!

青ヶ島を目前にして、
まさかの足止めです。
いったん降りる.jpg

呑気に待っていると…

待合室へ逆戻りした愛らんどシャトルの乗客9人は、だだをこねているこまち以外はいたって落ち着いたもの。
4人連れ観光客の方は余裕を持たせた日程らしく、最悪今日青ヶ島に渡れなくても八丈島で泊まればいいやという乗りで話してらっしゃいます。

私たち芸人も交通機関や天候の関係で仕事の予定が変更になったなんてことは、これまで何度も経験していますし。
それこそ待てば海路の日和ありと、仲間どうし過去に「こんなんで足止めくったことがあってさー」という体験談を語り合いながら呑気に東邦航空からの案内を待っていると…。

待合室に戻ってから40分ほどたった頃、地上職員の方が申し訳なさそうに
「すいませ~ん、機体トラブルが直りませんので今日は欠航ですー」
と言いに来ました。

そうか、ダメだったか。

迎えの先生に伺うと、船ほどでの頻度ではないにせよ天候・今回のような機材トラブルでのヘリ欠航は日常的にあることだそうです。
ましてやその日私たちが乗るはずだった機体は近年老朽化が進み、来月には後継機との交代が予定されているのだとも。

島民の方の大事な翼として長年飛び続けてきたシコルスキー型ヘリ、老体に鞭打って羽ばたこうとしてくれたけれど今日はたまたま体調が悪かったんだね。
謝るヘリコプター.gif

いいよいいよ、
今日のところはゆっくりお休み。

明日からはまた元気になって、新しい機体に後を譲るまではこれまで通り青ヶ島と八丈島を結ぶ大事な架け橋の役を果たし続けておくれ。

日程変更かなわず
島からのトンボ帰り

こういう状況になって、今さらジタバタしても仕方ありません。
呑気な芸人連中は今後の対応を学校公演の事務所に託し、もうオープンしている空港レストラン奥の席に陣取ります。

島と言えば、地の焼酎。
島のお酒.jpg
どう転んでもこの日はもう公演はないわけですから、午前10時30分からもう呑み始める出演者たち。

一座の雷門小助六師とともに名物明日葉ビール(美味!)を何杯もお代わりしたり、おまかせ焼酎2種セットもいろいろ試してみたり。
明日葉ビール.jpg

お酒抜きで同席してくださった青ヶ島中学校のK先生(ご自宅は高円寺だそうです)から島の暮らしについての興味深いお話を伺ったりしているうち、事務所から公演についての最終決定の連絡が来ました。
結果は、
今回のわんぱく寄席は一旦完全中止。

明日の早朝ヘリの臨時便を出してもらうか、連絡船の時刻に合わせて公演の開始時間を送らせるか。
その2案でギリギリまで事務所と村役場での折衝が続いたそうですが、諸事情によりどちらも実現不可能ということで公演中止のやむなきに至ったとか。

みんなが一生懸命やってこの結果なら、天命として受け入れるほかありません。
不安定な交通機関のもとに成り立っている青ヶ島の暮らしの現状を、少しでも体感できたことは今回私にとっては収穫でもあります。

学校公演事務所からほどなくして送られた来た東京への帰りの便は、13時40分発。
8時50分の到着からあまりにも早い、滞在時間4時間50分での八丈島からのトンボ帰り・強制送還。

ぜひまた、
I shall return!

へべれけというほどではないけれど、レストランで短時間にけっこう聞こし召した私たち。
本日三回目の保安検査を済ませて、ANA機上の人となります。

来る時と違って、機内はガラガラ。
ふと気がつくと、さっきまで日が射していたのに窓が雨で濡れている。
名残の雨.jpg
青ヶ島上陸が叶わなかった私への、天からの名残り涙でしょうか。

酔ってセンチメンタルになった目で通路を挟んだ向かい側を見れば、窓際席でにこやかにVサインの小助六師。
二度目に期待.jpg
「おいおい、この状況でVサインやピースはないだろ?」とツッコむとすかさず小助六師、
「いえいえこれは、”ぜひまた戻ってきますよ、二度目は絶対公演成功させますよ!”ってお守りです!」

おぉさすがに噺家、
うまいこと言うねぇ~。

こま正面アイコン笑い.jpg

小助六師が決めてくれたおかげで、短時間ながら波瀾万丈の青ヶ島ツアーも無事お開きに。

いい心持ちでうちに帰れば、キョトンとした顔で出迎える黒猫。
もう帰ってきたの.jpg
おいおい、ご挨拶だねぇ。
お父さんは早く帰ってきてこまちに会えて、嬉しいよ。

そうだ、これお土産にあげよう。八丈島空港ロビーの外に咲いていた、小ぶりだけれど目に鮮やかなハイビスカス。
空港のハイビスカス.jpg

黒に赤、
きっとお似合いだよ。
ハイビスカスとこまち.jpg

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お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
またのご訪問、心よりお待ち申し上げております。
入船亭扇治拝

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Windowsボイスレコーダーで録音できない!時は、慌てず設定を見直そう [お役立ち情報]


Windowsパソコンで手っ取り早く録音できる標準機能、ボイスレコーダー
ボイスレコーダー.png
パソコン作業中にほかの録音機器を使わなくてすむ便利なアプリですが、時に「録音できない!」というトラブルに見舞われることも。

一門後輩の
披露目のために

2022年11月12日、川崎市中原区にある『人形劇団ひとみ座』のステージにて第63回目の『ひとみ座寄席』が開催されました。
ひとみ座寄席番組.PNG
私の甥っ子弟子の真打昇進披露興行。

十代目の入船亭扇橋を襲名する一門後輩の披露目を、芸の上での叔父として少しでも賑やかに盛り上げてあげたい。
当日の番組は落語が5本(口上あり)で色物さんが入らないので、(そうだ、イラストこまちのアニメーションを色物代わりにしてみよう)と思い立ちました。
傘構えるこまち.jpg
傘の上で毬を回してみせる、曲芸師のこまち。

すぐに使い慣れた無料高機能アプリを駆使して、アニメ製作開始。
傘・毬とこまちのレイヤーの重ね方がけっこう難しく、思ったよりも時間がかかって会前日夜に始めた作業は翌日まで持ち越されることに。

パッパッと
パソコンで録音…できない?

11月12日、ひとみ座寄席の当日。
早起きして作業の続きに取り掛かり、朝昼兼用の食事もそこそこになんとかアニメーション本体は完成させることができました。

仕上げは、
アフレコです。

お囃子やBGM、そしてこまちの台詞。
「末広がりは、傘の曲芸でございま~す」という文句は、私自身で喋ってこまちの声に加工しなくてはいけません。

ICレコーダーやスマホに録音しパソコンに送る時間も惜しいので、Windowsボイスレコーダーで録ることに。
久しぶりでボイスレコーダー立ち上げ、録音の準備。

ボイスレコーダーは本当にシンプルなアプリで、起動した画面にある青いマイクボタンを押すだけで録音が始まります。
開始画面.png
そのボタンをクリックして、パソコンに向かって猫の声色で喋っているおじさん(私)。
あまり、
人には見せられない姿です。

1回目はそばにいたリアルこまちの声が入ってしまったので、隣室に退去してもらってテイク2を録音。
7秒ほどに収まった台詞を、再生確認すると…。
音声ファイルは、無音状態。

驚くアイコン.jpg

ボイスレコーダー自体は録音時間がカウントされちゃんと作動していたのに、肝心の音が録れていないのです!

気づかないうちに
マイクがミュート状態

もう家を出て会場へ向かう時刻が迫っていましたから、開いたファイルが無音だった時には一瞬焦りましたが…。
比較的最近同じ失敗をしていたのを思い出し、気を取り直して対処を開始。

Windowsボイスレコーダーで録音できない原因は「録音機器として内臓マイクが有効になっていない」等幾つかありますが、今回の私のケースはこれが悪さをしていました。
「設定」→「システム」→「サウンド」→「マイクコントロールパネル」と進み、マイクのプロパティを開いてやると…。
マイクのプロパティ.PNG
「レベル」タブ内マイク音量スライダーの右にあるアイコンに、赤いマークが。
私はいじった覚えはないのに、勝手に内臓マイクがミュート状態になっていたのです!

現時点では原因ははっきりわかっていないのですが、私の環境下では再起動したり配信動画を見たりした後にかなりの高頻度でこの状態になっているようです。

ミュートを解除してやれば、その後はスムーズに録音することができました。
ミュート解除.PNG

私と同じ現象でお困りの方、まずは落ち着いてマイクのプロパティをご確認ください。

ぎりぎりで完成
色物猫のアニメーション

無事録音したこまちの台詞を、音声編集アプリでピッチを変えて高いアニメ声に加工。
それを口パクの動きに合わせて長さを調整してはめ込み、曲芸こまちの出来上がり!
アフレコ.PNG

出発時刻まで1時間を切ってなんとか完成させることができた曲芸こまちの動画は、YouTubeにて限定公開しております。
ひとみ座の前.jpg

十代目扇橋のために真心込めて作ったつもりの2分ほどの色物猫アニメ、どうぞ以下のリンクから見てやってくださいまし。
☆『ひとみ座寄席色物こまち』
https://youtu.be/T9TEjS-AB8Q


蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
またのご訪問を、お待ち申し上げております。
入船亭扇治拝

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