SSブログ
web雑俳 ブログトップ
前の5件 | -

桜咲く公園そぞろ歩き、「花見」で楽しく言葉遊び [web雑俳]


2024年4月2日、うららかな春の陽気に誘われ新宿中央公園を訪れました。
木によってはもう八分咲き以上、その下では大勢の方が桜を愛でつつ飲食や歓談に興じてらっしゃいます。
花見にはブルーシート.jpg

花見には、ブルーシートがよく似合う。
そんな当たり前のことが、コロナ自粛期間が長かった身には新鮮に感じられます。

周りにそびえる高層ビルを覆い隠し咲き誇る桜たちは、「この季節は自分たちが主役!」と言っているかのよう。
高層ビルを覆う桜.jpg
今日は桜が主役.jpg

いろんな種類の桜がある中央公園、木の下から見上げると花びらの色がそれぞれ違うのがわかります。
まさに「桜色」淡いピンクのものや、
ピンクの花弁アップ.jpg
ソメイヨシノの上品な白がかった花。
白い花弁アップ.jpg

人並みに花見気分で散歩していると、ちょいと一句ひねってみたくなりました。でも私も噺家のはしくれですから普通の俳句ではなく、江戸言葉遊び・雑俳の一つ「折句附」を拵えてみることに。

今回は自分で「花見」と題を決め、「はなみ」の一音節ずつを五七五の先頭に置いて川柳を詠むのです。

川柳には馴染みのある方が多いので雑俳の中では比較的とっつきやすい折句附ですが、気をつけなくてはいけないのが「ちゃんと意味が通り、受け手に(気が利いてるなぁ)と思わせる句を詠むこと」。

字を織り込む方ばかりに気が行き過ぎていると、
歯を磨き仲間誘ってミントティー
なんて自分にしかわからない絵日記みたいなのになっちゃいますんで。

考えるアイコン.jpg

誰が聞いても読んでももっともで、さらに洒落が利いた「は・な・み」の折句…。 うん、まずこんなのはどうでしょう。

犯人を名指すは最後ミステリー

小説やドラマの名探偵はよく最後の謎解きをする時、「実は事件後かなり早い段階で真犯人の目ぼしはついていた。ただ決定的な証拠がないので今まで伏せていたのだ」なんて平然と言ってのけたりしますよね。
わかってんならほかの被害が出る前になんとかしろよ、と突っ込みたくなる「ミステリーあるある」。



はや別れ名残り惜しげな乱れ髪

「人目をはばかる恋人同士の密会、逢瀬の時はあっという間に過ぎ…」という句意。なんとなく色っぽいねーと感じていただければ。



雑俳では「清濁随意」といって、「はなみ」の「は」を「ば」「ぱ」に変えてもいいという付帯ルールがあります。
それで一つ時事的なのを詠んでみると…。

万博は何年たっても未完成

いろいろと味噌がつくことが多い2025年大阪万博。今度は会場敷地内でメタンガスによる爆発事故が発生したり、プレミアムパートナーの小林製薬が健康被害を出したり。
資材も人手も足りないのだし、無理してやらなくてもいいような気もするんだけどなぁ。



さらに「気結び」という式目(ルール)が加わると、題にした「花見」と関連した内容を詠むことが必要になってきます。

場所取りと並ぶトイレで見ない花

花見に力いれてる会社だと、前の晩から泊まり込みでいい場所を確保しておくのが新入社員の重要な役目だったりしますね。
苦労して場所取って、いざ花見宴会が始まると上司にお酌してまわって気を使ってばかり。日が沈むとけっこう冷えてきて小用が近くなるんだけれど、同じような人ばっかりだから公園のトイレ大渋滞。

終わってみるとどっと疲れが出て、(そういえば花なんてほとんど見なかったな~)となるのも「花見あるある」。
あったかな桜.jpg



おしまいにもう一句、気結びっぽいのを。

春が来て夏秋過ぎて見る暦

「桜が咲いたねー」と言っているうちに暑くなって立秋迎えて、何にもしないうちにあれよあれよという間にカレンダーもあと一枚。
もう師走.jpg

そんなことにならないよう、一日一日を充実させなくては!

こま正面アイコン基本形.jpg

こんな具合に花見の散歩がてらにでも、思い立ったらすぐ遊べるのが雑俳の楽しさ。気軽に頭の体操をしながら、言葉とユーモアの感覚を磨くことができますよ。

皆様もぜひ、おやりになってみてください!

蔦飾り線.png

入船亭扇治・記

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

黒いものを探してうまく隠そう!~頭の体操に最適の雑俳「物者附」拙吟~ [web雑俳]


作り甲斐のある物者附

江戸言葉遊び・雑俳の兼題、「物者(ものは)附」。

ちゃんと意味が通る物事(表)を「○○だった・した■■」「○○の■■」という形で詠み、題に沿った別の物事(裏)を連想させる遊び。

題意の物事はあくまで裏に隠すもので、表で詠むのはそれとまるで無関係なものでなくてはなりません。

雑俳の中でも難易度の高い兼題で、噺家連中も「未だによくわからない」という者が多い。
でも段々ルールとコツがわかってくると、とても作り甲斐があって楽しいのがこの兼題でもあります。



私どもを指導してくださる小ゑん宗匠がよく過去作からお手本として挙げるのが、「空であるするものは」という兼題での「Sのシャツ」

表はもちろん「Sサイズのシャツ」、では裏に隠れている空に関係するものはいったい何?

「空に舞う、胸にSマークが入ったシャツ」の絵柄を頭に思い描けば…。わかりますよね?
飛んでくSのシャツ.jpg
そう、風に飛ばされた洗濯物!

ではもちろんなくて、正解はこちら。
スーパーマン見上げる.jpg

どうでしょう、物者附のルールと面白さ。 少しはお伝えできましたでしょうか。

拙吟「黒いもの」問題編

2023年前半に行われた私どもの雑俳の会で、小ゑん宗匠から出された題の一つが物者附「黒くてあるするもの」。

黒いものって何があったかな…。
カラス・タイヤ・海苔、色々思いつきます。

わが家で夕食の時よく見られるこんな光景、黒と黒。
黒生飲んで景気づけ.jpg

今回この題での私の拙吟は、以下の10句。

①落ちた足元

②干された浅草

③すった汁

④右折した車

⑤固かった銀杏

⑥吐いた逃げ口上

⑦半ぱだった鍵や

⑧灰をまいた山

⑨門をとざした音

⑩蒸しかえした関わり



表の意は本来説明すべきものではありませんが、②⑦は落語ファンでないとわかりにくいかもしれないので野暮を承知で記しますと…。

②「浅草」は寄席『浅草演芸ホール』、そこに最近使われなくなったなーという嘆き。

⑦江戸の大きな花火店『鍵屋』は、並び称される『玉屋』より技術・人気面で劣っていたから、商売としてはちょっと「半ぱ」。



後はまぁ、見た様読んだ通りの意味です。

そしてそれぞれの句の裏に「黒いもの」が隠されているのですが、さぁそれは何でしょうか?

この後に答えを記しますが、その前に少しだけ読者皆様も考えてみてください。自分の頭の中で、あるいは他の人と「あれかな、これかな?」と思いを巡らせてみるのは、けっこう楽しいと思いますよ!

それではしばし、
Thinking Time!

こまち3連アイコン.png

拙吟「黒いもの」解答編


①影

②海苔

③墨汁

④右翼の街宣車

⑤熊本城

⑥イカスミ

⑦半音の鍵盤

⑧炭

⑨闇

⑩蒸気機関車

こま正面アイコン基本形.jpg

①~⑥は表が表す情景から裏を連想する「絵物者(えものは)」。
⑦~⑩は表に含まれる文字が裏を想起させる「字物者(じものは)」。
⑧は「山」「灰」を合わせて「炭」、⑨は「門」の中に「音」が入って「闇」。このように漢字を分解して表で詠むテクニックもありです。

楽しさ深まる
読み手との知恵比べ

物者附が他の雑俳兼題と異なるのは、「作者と読み手間での知識共有」が必要になる点。

こちらが句意に込めた表→裏へ誘導する仕掛けを読む側がまるで理解してくれないと、句の上手い下手以前にまるで面白味が伝わりません。

考えるアイコン.jpg

今回拙吟では、「⑤固かった銀杏」がそうでした。
難攻不落と言われた「守りの固い」熊本城は、外壁の色から「黒い城」の代表格ともされています。そして敷地内には多くイチョウが植えられているところから、熊本城の別名は「銀杏城」
黒き銀杏城.jpg

実はこれ、けっこう自信があったのですが…。
残念ながら「銀杏城」「黒い城」に思い至ってくれる人が少なく、互選会ではまるで採ってもらえませんでした。

アイコン集.jpg

そしてもう一つの自信作が、「⑥吐いた逃げ口上」。

これは絵物者と字物者のハイブリッドになっておりまして、キーワードは「口上」

イカが敵に吹きかける黒い液体、そのイカスミを発する部分。口と勘違いしがちですが、これは「漏斗」と呼ばれる推進機関。ここから海水を噴射して水中を進みます。

本当の口は脚の付け根にあり、そこより上にある漏斗から出すイカスミだから「口上」。
吐いた逃げ口上.jpg

小ゑん宗匠からは「字が一つも遊んでない(無駄な文字がない)」とのお褒めの言葉とともに、選を頂戴しました。

こま正面アイコン笑い.jpg

こんな具合の言葉遊び、時間のある時なんとなく考えてみるといい頭の体操になるんですよ!
ぜひ皆様も、豊かな言葉の世界に遊んでみてください。

蔦飾り線.png

入船亭扇治・記



nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

連歌のためのイメージトレーニング!雑俳「脇起こし」互選記録 [web雑俳]


2023年2月12日に開催された、古今亭駒子師プロデュースの江戸言葉遊び雑俳落語会『巻いてみようスピリッツ』。

今回の兼題は「脇起こし(わきおこし)」
複数人が交互に五七五と七七を詠んで繋げていく「連歌」、その最初の部分
①発句(五七五)
②脇句(七七)
③第三(五七五)
で遊ぶという趣向。

連歌をする貴族.jpg
※連歌で遊ぶ平安時代の貴族(と猫)。

18句・36句・規模が大きくなると100句で一巻完結というのもある連歌ですが、雑俳の遊びとしては「①からの連想で詠まれた②に選者が効きとしての③を付ける」ところまでになります。

また正式な連歌・歌仙だと
・①は体言止め。
・①と②の季節を揃える。
・③は「~し」「~て」「~らむ」「~つつ」「~もなし」の留め字で終わる。
等の約束事があるそうですが、今回は参加者全員がそれを理解しておらず、縛りのない「自由連句」として開き(互選会)を行うことになりました。

投句していない筆者も駒子師から声をかけてもらい開きに参加してきましたので、そこで読み上げられた篝火舎(柳家)小ゑん師匠による本巻(宗匠選)を以下にご紹介いたします。

今回発句として使ったのは    
☆手折らるる人に薫るや梅の花(加賀千代女)
☆夜桜や上野を通る戻り道(正岡子規)
の二句。

小ゑん宗匠は投句作から梅と桜それぞれで「天地人」「雲隠し」を選び、「自句」も一句ずつ添えてくれました。

篝火舎小ゑん選
「梅の花」編

※各句の行頭数字は投句作一覧「地巻」での通し番号、末尾カッコ内は作者名。

発句
手折らるる人に薫るや梅の花
梅手折る.jpg



人の位
効き 双眼鏡覗き小さんを思いつつ
27.春を告げるも開かない口(本屋)
~梅の蜜を吸いに来るメジロはウグイスのようにくちばしを開けて鳴くわけではありませんが、春の風物詩の一つ。その鳥を観察しながら、自らの師五代目小さん(住んでいた所から「目白」と呼ばれる)を偲んでいる小ゑん宗匠。~



地の位
効き 落研の粋な誘いに乗せられて
21.合格祈願なでた牛の背(うさぎりんご) 



天の位
効き 親猫の教え小猫は仰ぎみて
26.襲名披露告げる鶯(なかよし)
~2023年3月から盛大に行われる、小猫改め五代目江戸家猫八襲名披露。ずらり並んだお祝いの花が目に浮かぶようです。~

こま正面アイコン基本形.jpg



雲隠し
効き 生来の冒険心に火が付いて
11.闇を破りし恋猫の声(うさぎりんご)



自句
野良の春眠覚ます移り香

篝火舎小ゑん選
「夜桜」編

発句
夜桜や上野を通る戻り道
花より団子で帰り道.jpg



人の位
効き 社長室ソウルへ転勤告げられて
60.正楽に出す題はお花見(Fe-man)
※元句は「紙切りお題花見にしよう」。



地の位
効き 遠距離の恋の成就を祈りつつ
76.弁天堂に朧なる月(うさぎりんご)



天の位
効き 里帰り子らは蛇踊り魅せられて
81.夜行の時刻待った春宵(小せん)
※元句の下五は「古(いにしえ)」。
~懐かしのブルートレイン「さくら」号で長崎へ家族旅行…と解釈した、鉄道ファンである宗匠らしい効き。~



雲隠し
効き ガールズバー恐いメンズに凄まれて
71.湯島で引かれ寄る花ざかり(小せん)
~ほろ酔い加減の花見帰り、ちょっと色気を出してその手の店に入ったら…。酒も桜も人の心を惑わせ正常な判断力を奪いますから、皆様もじゅうぶんご注意ください。~



自句
花の嵐をよぎる流星

僭越ながら 
ブログ主の選も

さすがは宗匠、季無しの作品にもうまく「斧(ふ)を入れる=手直しをする」ひと手間をかけたうえで、効きを付けてありますね。

その本巻のあとでお目汚しでもございましょうが、せっかく開きに参加したので不肖・入船亭扇治の選も続けてご披露させていただきます。

【扇仮名女選】

客の一
効き 風流と色気は抜きと食しつつ
30.匂いおこせよソース焼きそば(なかよし)

客の二
効き 定期券自由自在に下車をして
64.松屋で下見買うは吉池(なかよし)
~御徒町駅前にある吉池デパートの食品売り場は、昔から庶民価格
作者の方は吉池のそばにある「松坂屋」のつもりで間違って詠まれたようですが、私としては銀座の「松屋」から上野まで足を延ばして…というのがかえって面白味があると思い採らせていただきました。~

客の三
効き 子ら集い賑わう屋台日を浴びて
57.好天祈るテキ屋親分(駒子)

客の四
効き それぞれの思い車窓に灯るらむ
82.旅立つ君へ汽笛ひと声(うさぎりんご)
~『銀河鉄道999』の味わいですね。~

客の五
効き 若き日の惑い今では埋み火に
11.闇を破りし恋猫の声(うさぎりんご)
~これはちゃんと季語が入って一つの世界を表していますし、なにより「猫」が入っていたら筆者としては採らせていただかない手はありません。~

こま正面アイコン笑い.jpg



人の位
効き 朧月寄席帰り客照らしつつ
58.散り散りの背に響く追い出し(本屋)



地の位
効き 光射し幟上がるや晴れの日に
26.襲名披露告げる鶯(なかよし)



天の位
効き 紙切りの注文声も華やぎて
33.春一番にマスク解禁(なかよし)
※元句はの上五は「芳しき風」
~長かったマスク生活も、2023年3月半ばをもってひと区切り。寄席のお客席からかかる声も、いっそう賑やかになることでしょう。~
紙切り注文.jpg



雲隠し
効き 薄紅の褥で愛を交わしつつ
84.絨毯敷いた春の長雨(張子の猫)



自句
梅 青さ鼻つく太きアスパラ
~雅な梅の花に対して、ぐっと生活感あふれる野菜の香り。でもどちらも、春を告げるかぐわしきものであるなぁ…なんて気持ちで捻った拙吟。~

いつかはやりたい 
連歌・歌仙

雑俳は連歌を嗜むためのお稽古という側面があり、最終的には大勢の詠み手で歌仙を巻けるようになるのが理想だそうです。

もちろん筆者はまだまだとてもその域ではありませんが、式目(ルール)にのっとり気の合った者同士のんびり五七五七七を連ねていくのは、とても楽しそう。
いつか実現することを夢見て、江戸言葉遊びをこれからも続けていきたいと思います。

考えるアイコン.jpg

※『巻いてみようスピリッツ』投句作一覧は、
https://drive.google.com/file/d/12ZXsBwz24HpWo6ZfiUvlJlXU3VZcb8dP/view?usp=sharing
でご覧いただけます。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます 。よろしければまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

タグ:雑俳 落語
nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

あの名言が、楽しい地口に変身! [web雑俳]


古今亭駒子師プロデュースの江戸言葉遊び・雑俳と落語の会『柚子の香スピリッツ』。
全6回公演のうち「その⑤」への投句作品出揃いましたので、以下に一挙公開。

兼題:地口附 
古今東西有名名言一切

1.いざ山倉
2.インゲンは食べられる豆である
3.インテルだけが丸儲け
4.オッパイは初めての母
5.カキは本能寺にあり
6.この秘書に不可能の文字はない
7.サバ読むことは見苦しき哉
8.ゼニに及ばず
9.それでも時給は決まってる
10.それでも時給は下がっている

11.だってカルトの元締めよ
12.でっけえかなでっけえかな
13.バレ思う故に我あり
14.パンはペンよりも強し
15.はん治の隣人を愛せ
16.ヒモジー
17.ファンがいないならおダンを呼べばいいじゃない
18.フェイクドラマ
19.ブルータス、トワエモワ
20.ブルータスお前ホモか

21.ブルマンよお前モカ
22.吾輩の辞書に不感症の文字はない
23.愛とは決して商売にしないこと
24.噂でアレがバレた日だ
25.我重い故に肉あり
26.求めよ皿は与えられん
27.供述は扼殺だ
28.啓蟄は春先だ
29.枯れても紫朝は口説いている
30.採掘するとこに石がある

31.参加することに意地を張る
32.笑点よ大志を抱け
33.人間が贖える鯵である
34.人参の人参による人参のための政治
35.先生、和助がうるさいです
36.着の身着のまま乾杯
37.中年よ体脂肪減らせ
38.珍念よ懐疑を抱け
39.底に穴があるから
40.溺死は繰り返す

41.板垣死すとも自由な施設
42.富士では月見そばがよく売れる
43.奮い立つ おまえもか
44.平日は托鉢だ
45.魯山人はB級に過酷です


”名言”の縛りが
意外と難しかった?

その⑤の総句高は45句と、比較的少なめ。
その中で、19.20.21.43番が「ブルータス、お前もか」。32.37.38番が「少年よ大志を抱け」など、同じ題材で詠んだ句が多いのも今回の特徴。
黒猫も大志を抱け.jpg

それだけ”名言”での地口という縛りが、意外と難しかったということでしょうか。
これが「古今東西有名ことわざ」だと、もっと投句数も伸びバリエーションも増えたかもしれません。

でも時にはハードルが高めの題に挑戦してみるのも「雑俳脳」を鍛えるためには必要だし、言葉遊びの楽しさもより深まるというもの。

今回の作品の中でたとえば、17番。
悲劇の王妃マリー・アントワネット言ともされるこの長めの言葉に着目し、それを地口にしてみたというチャレンジ精神はとてもいいと筆者は思います。
マリーアントワネットこまち.jpg

ぜひ会場へ
お運びください!

数は少なめでも、いずれも秀句揃い。
12月25日(日)13時~からの会当日には楽屋一同が、工夫を凝らした「効き」を付けてそれぞれの選をご披露します。

『笑点』の大喜利とはまた違った互選会「開き」が楽しい『柚子の香スピリッツ』その⑤。
高座と客席が一体となる小ぢんまりしたスペースで、あなたも粋な言葉遊びの世界に浸ってみませんか?
表柚子の香スピリッツ.jpg
☆webチラシ本体は、以下のリンクからご覧になれます。
https://1drv.ms/b/s!AuMPkLP-OmbV7Ue9B9NwxQ7EcUbM? e=COOjF3

☆会場『竹芳亭』:東京都杉並区高円寺南4-25-9 地下一階
※地図はこちらのリンクをご覧ください。
https://goo.gl/maps/62UEz1DYAqdNdi8C8

☆お申込み
kokontei.chiyorin@gmail.com
090-1767-2273 (古今亭駒子)

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。またのご訪問、心よりお待ち申し上げております。
入船亭扇治拝

タグ:雑俳 落語
nice!(1)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー

「数字縛り川柳」ブログ主の互選と拙吟 [web雑俳]


☆『楽しい川柳で、2022年暮れをのんびり過ごそう!
で公開いたしました、師走の雑俳落語会に集まった作品93句。
先日その互選会『開き』が行われましたので、筆者の選と拙吟をご披露いたします。

まずは、 筆者選ご披露

2022年師走『柚子の香スピリッツ』
兼題「川柳据字附 中七数字冠り」
扇仮名女 選

客の一
効き 若い自分に言ってやりたい
18.あの人に一筋だった何でだろ
馬耳東風

「若気の至り」「恋は盲目」…。
あんな夢中になっていた相手もひと時の熱が冷めると、そんな言葉とともに苦笑する想い出に。



客の二
効き なぜこの時期にと嘆く毎年
60.台風と三連休の仲の良さ
馬耳東風

台風シーズンにあたってしまっている、わが国秋の連休。
台風と三連休.jpg
今さら変えようがないので、せめて6月の梅雨入り前に休日作ってくんないかなぁ。



客の三
効き 人生半ばが身に沁みる夜
23.どうしよう一晩じっとの冬の蠅
なかよし

おそらくこの羽根が生えた小さな生き物は、冬を越すことはできないでしょう。
「やれ打つな蠅が手を擦る足を擦る」に通じる秀句だと思います。



客の四
効き かごに入れたる街の歳時記
21.スーパーで二十四節気知る今日日
うさぎりんご

季節の移ろいは、こんな人の営みを通じても知ることができる。
スーパーで冬至.jpg
歳時記を繰るようなつもりで店頭を眺めると、スーパーでの買い物がより楽しくなるかも。



客の五
効き ドジョウは痩せて煮詰まりし汁
34.映画では三部作だと尻すぼみ
一琴

”柳の下にドジョウは三匹いる”というのは、興行の世界などで昔から言われていることですが…。
続編を重ねるに従って息切れしてくる作品も、枚挙にいとまがありません。



人の位
効き 人間だものおまけ一回
46.仕方ない四度目許す生き仏
金八

本家の仏様よりも一回多く許してくれる、心の広い生き仏。
ありがたい猫仏様.jpg

人間なんだから間違いはあるさお互いさまだよという気持ちが「仕方ない」という表現になり、諧謔味がよく出ていると思い抜かせていただきました。



地の位
効き 代わりに行ってのギャグも定番
22.トイレすら億劫になるイン炬燵
張子の猫

(炬燵やぐらしょったままでトイレに行きたい…)寒がりの私は、子どもの頃から真剣に思っていました。
こたつでトイレ.jpg

この冬の防寒具として大人気の『着る毛布』は、その夢をある程度叶えてくれそうな気がします。
着る毛布.jpg
後で、近所のニトリへ買いに行こう。



天の位
効き 喧騒離れしばし風流
83.満月と一献我の影も友
馬耳東風

「雑俳の選で天の位には、スケールが大きい・おめでたいといった内容の句を選ぶのが理想」という観点では、まさに天に叶う玉淑にふさわしいということでお採りした句。
一人月見酒 .jpg



雲隠し
効き 振られた遊び癒す女房
65.朝ぼらけ千六本を刻む音
馬耳東風

長屋の木戸をくぐると聞こえてくる、甲斐甲斐しく朝餉を支度する音。
廓で花魁にしょい投げくらって帰ってきた亭主、欲求不満解消のためつい女房を後ろから抱きしめて…。 という意の効きで、雲にしてみました。
季語を入れると俳句としても立派に成立する秀句をあえてこんな感じで色っぽい句と解釈させていただくのも、雑俳の面白味の一つ。



軸(自句)
人の世は九十九の坂の繰り返し

拙吟を振り返って

今回の入船亭扇治拙吟は、以下の10句。

7.いにしえの一発屋たち今いずこ
37.気がつけば二つ穴なり藁人形
39.空浮かぶ七つの星で汲んだ夢
40.隅の席一人の酒が似合う客
41.元日は三日坊主の始めなり
50.手のかかる三つ子のままに若旦那
56.素顔無き八方美人の厚化粧
57.息あがる九段の坂で知った年
79.腹にない二つ返事が招くミス
80.仏さま四回目には渋い顔

このうち半分の5句は、どなたの選にも入れてもらえず坊主でした。

アイコン集.jpg

7・37・50番は当たり前過ぎるし説明調で、なるほど川柳の面白さが出せていなかったなと反省。

80番は同じ内容でも、先ほどご紹介の金八師の句の方がはるかに川柳らしい仕上がり。

そして57番、これは別に「九段」でなくてもほかに坂の多い町はたくさんあるので、この地名を使う必然性に欠けるのが敗因。
私のほかにも数字で始まる地名で詠んだ方がいらっしゃいましたが、同じ理由でそういった句は選に入りづらかったようです。

考えるアイコン.jpg

逆にうまくいったなと手応えを感じた句が、
39.空浮かぶ七つの星で汲んだ夢
これは今回自分で一番気に入った句だったので、41番とともに小ゑん宗匠初め出演者・お客様に抜いていただき光栄でございます。
夢を汲む北斗七星.jpg

 もう一日ある!
年内納めの雑俳

今回の開きを通じて思ったのが、
(雑俳って本当に頭の体操になるし、ボキャブラリーが増えて楽しいな!)
ということ。

駒子師が使った「穣田」「兆域」なんて言葉、私はこの歳になって初めて知りました。

そんな面白くてためになる雑俳の会、なんと年内もう一日開催されるのです!
筆者が出演するのは、
12月25日(日)13時~の回。

詳細は
☆『2022年締めも粋な言葉遊びで!『柚子の香スピリッツ』へのお誘い
にて。

当日ご参加の方にその場で遊んでいただける「席題」もご用意しておりますので、投句なさっていないお客様もぜひ聖なる日を雑俳でゆったりのんびりお過ごしになりませんか?
楽屋一同、ご来場心よりお待ち申し上げております。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

nice!(0)  コメント(0) 
共通テーマ:趣味・カルチャー
前の5件 | - web雑俳 ブログトップ