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東高円寺鰻の名店『小満津』さん、15年ぶりの訪問! [お気に入り・おすすめ]


胸を高鳴らせてお店の前に立つ、食レポーターの黒猫こまち。
小満津さん表.jpg
彼女が大緊張するのも当然、今から入るのは東京屈指の鰻名店『小満津』さんなのですから!

本当に久しぶりの
名店再訪問

青梅街道沿い・地下鉄丸の内線新中野駅と東高円寺駅間に位置するこのお店は四世代に渡り鰻ひと筋を貫き、東京いや日本中の鰻ファンから愛され続けています。

通りに面したお店の窓に掲示された、途切れず『ミシュランガイド』認定店であることを示す輝かしきシンボル。
輝くミシュラン.jpg
その輝きあまりの眩しさに、写真が反射して見づらいのはご容赦ください。

お店の玄関先には、「当店は予約のみ」と書かれた看板。
予約のみ.jpg
良い食材をおいしく提供し、お客様にゆったり過ごしていただくための完全予約制。

普段は近所のラーメン屋などで
私「ごめんください、一人です」
店主「空いてるとこ適当に座って、今水出すから」
という生活をしている弱小噺家が、なぜこのような名店を訪れることができたのか?

実は私の師匠・九代目入船亭扇橋と京橋でお店をやっていた二代目小満津ご主人は遠い親戚関係にあたり、二代目のお孫さんである現店主・前田治雄さんが東高円寺で新規開店してからも親しくお付き合いさせていただいておりました。
看板は師匠の字.jpg
今のお店の看板の文字も、九代目の筆になるもの。

その縁があって私なんぞも、小満津さんが常連のお客様向けに開いていた落語会に出させてもらったりとお世話になっていたのです。
当時のお店は青梅街道から少し奥へ入った閑静な住宅街の一角に建つ、風情ある木造一軒家でした。そこから15年前(2023年現在)現在の店舗に引っ越されたのは知っていたのですが、こちらもまだ子育ての真っ最中だったりして何かととりまぎれ新しいお店にはずっと伺わずじまい。

それが今度また、久しぶりで落語会を復活させてくださるというのでお声がけいただきました。結果的に10月29日に予定されていたその会はお客様の都合で延期になったのですが、ちょうどいい機会だと思い「キャンセルなさった方の代わりに、当日家内と二人で食事に伺っていいですか?」とお願いしてみたら女将・前田恭子さんから「おいしいものを用意して待ってますから、ぜひどうぞ!」というありがたいお返事が!

お言葉に甘え、日曜のお昼に夫婦して小満津さんへお邪魔することになったのです。

親子二代の職人技
女将さんの神接客

私たちが入店するとすかさず「いらっしゃいませー」女将さんが15年の歳月を感じさせぬ明るさで迎えてくださいました。
その後ろでニコニコなさっているご主人も髪には白いものが増えて年相応の貫禄がつきましたが、板場を離れたとたんに優しくなる目元は昔のまま。

そしてこれは時の流れを感じて嬉しい驚きだったのが、私が前のお店に行っていた頃小学生だった次男・孝介さんが四代目として入店していたこと。
問屋から始まり錚々たる鰻の名店で修業を続けてきた息子さんと、父親である現ご主人が二人で焼く鰻。
楽しみだなぁ。

この日のお昼はなんと私たち夫婦で貸し切り、板場が見える奥まった良い席を用意していただきました。
奥のテーブルにて緊張.jpg
いつもやんちゃな食いしん坊こまちも、名店ではさすがにかしこまった様子。

久闊を叙し、グラスビールで私ども夫婦・お店の皆さんとで乾杯。
お料理の一番手は「お通し三点盛り」。
前菜盛り合わせ.jpg
歯応えがあるのに柔らかいかぶと煮・絶妙に味が沁みたカボチャとトマト。そして私が昔から大好きなのが、鰻の骨せんべい!ちょうどいい塩味でカリっと揚がっており、ビールとの相性抜群。



続いて串焼き、ご主人が火にかける前の食材をまず見せてくれます。
焼く前の串4種.jpg
右から背びれ・肝・中落ち・生ひれ。

食中酒としての日本酒をすごく勉強してらっしゃる女将さんのチョイスに従い、さっぱりめの『磯自慢』から始めていろんな銘柄を贅沢に繋げていくうち、串が焼き上がってきました。

数匹分の背びれを使った串焼き。
背びれ焼き.jpg
噛むと皮の塩気に続いてねっとりしたコラーゲンの食感。
「蒲焼に残った背びれの小骨が気になる」とのお客様の声を聞いたご主人が、(それなら火を通した背びれの部分を、別の一品にしてみよう!)思い立って開発した小満津さんオリジナルの串。
その日のメニューにあったらラッキーの逸品です。

ほかの串も炭火の遠赤外線効果で、表面はパリッと中はジューシー。
串焼き盛り合わせ.jpg
熱いうちにハフハフかじりついて、どっしりした味わいのお酒『而今』を口に含む。素材・タレ・炭火の香り・お酒が口中で渾然一体となり、これぞ和食の醍醐味。



コースも佳境に入り、う巻の登場。
う巻.jpg
お皿に乗ったお店の焼き印入りのふっくらした卵焼き、さながら豊満な美女がベッドに横たわってこちらを誘っているよう。
中の鰻が見える角度で、写真撮ればよかったなぁ。



ここでいよいよ、このひと品が。
白焼き.jpg
し、白焼き。
思わず舌がからまってしまったのは、岐阜で生まれ育った私にとって蒸してタレをつけずに焼き上げる鰻は「江戸・東京の粋」を体現する憧れの料理だから。

焼きたてで身から油がじわじわ沁みだしてくる、身の厚い鰻。
これだけ白く焼き上げるのは、親子二代で心こめて腕を振るう職人技ゆえ。
「ワサビをつけた白焼きには、これが合いますよ」と絶妙のタイミングで女将さんが次の銘柄を勧めてくださるので、盃もどんどん重なっていきます。
ずらり日本酒.jpg



炭火の香り高い白焼きを完食すると、これも私が小満津さんで大好きな『うざく』の出番。
うざく.jpg

かなりの老舗でもうざくの鰻は作り置きしてある店があったりするそうですが、小満津さんではこの料理のため新たに焼き上げるのが売り。 だからおしまいまで鰻の身が合わせ酢で崩れることなく、しっかりした食感が保たれています。



おいしい鰻とお酒で過ごしてきた店内の時間も、そろそろフィナーレ。
ぬか漬け盛り合わせ.jpg
大きな器に盛った自家製ぬか漬け(左にいるコンニャクが絶品!)を露払いに、うな重が本日のトリを務めます。
お重登場.jpg

重厚な塗りの器、蓋を開けると…。
うな重全容.jpg
おお、重箱いっぱいに広がるまるまる鰻一匹分の蒲焼き。
安いチェーン店の鰻丼のことを思えば、「下のご飯が鰻でほとんど見えない」とはなんと贅沢なことか。

鰻の照り具合・タレご飯の色合いを目で堪能したあと、満を持してお重の左下から食べ始めます。ひと口分の蒲焼きとご飯が、口中でホロリと崩れまた混じり合って。「和風ケーキ」と形容したいこの食感が、私のとっての東京鰻重の味わい真骨頂。

時折りお酒とともに、すっきりした味の肝吸いで口を洗いながら。
きも吸い.jpg
箸を進めてきた鰻重、やがて箱の底の赤い塗りがすっかり見えてコースはお開き。

どんなおいしい料理でも食べ終わる頃は(もうおしまいかー)とちょっぴり寂しい気持ちになったりしますが、15年ぶりにいただいた小満津さんの鰻は一食で見事に完結。まさに「堪能した」という言葉がふさわしい。
「今は満腹満足、でもまた近いうちに食べに来たいなー」という魅力に溢れています。

こま正面アイコン笑い.jpg

わざわざお店の外まで見送りに出てくださった皆さんに別れを告げ、秋の午後一杯機嫌でぶらぶらうちまで歩いて帰る(それくらい近い距離なのです)。
たまにはこんな贅沢な食事もいいねー、夫婦で言葉交わしながら帰宅すると…。「アタシ置いてどこ行ってたのー、なにおいしいもの食べてきたの、ずるいー!」
ねだるこまち.jpg
お腹空かした留守番猫がえらい剣幕で待っていました。

ごめんごめん、でもこまちのおかげでお父さんお母さんゆっくりできたよ。
ご褒美カリカリあげて今食べてきた鰻の話を聞かせたら、こまちもすっかり小満津さんのファンになったようです。
こまちも鰻資金.jpg
「鰻資金を貯めて、今度はこまちも一緒に行くニャ!」

小満津さん、鰻ちゅ~る出してくれるといいね。

☆『東高円寺 小満津』公式サイト
https://unagi-komatsu.com/

蔦飾り線.png

入船亭扇治・記

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前田孝介

ブログ拝見させていただきました。
美しい文章で料理を一品一品ご紹介頂き、誠にありがとうございます。
父母の背を見てこれからも小満津の暖簾を守るべく日々精進いたしますm(_ _)m
by 前田孝介 (2023-10-30 21:07) 

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