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明るい笑い声に包まれた、みかん色の愛媛旅日記 [日々雑感]


今年最初の、まとまった学校公演。
とてもよく反応してくれた生徒さん、

誠意をもって受け入れてくださった学校職員の方々。

そして東京へ帰ってくると、また一つ嬉しい出来事が。

自宅の玄関を開けたら…


公演が終わり帰宅したのは、令和2年9月16日午後9時近く。
最寄り駅から歩き出したたら、大粒の雨が。
バックパックに入れたパソコンをかばいながら、折り畳み傘を広げてなんとか家にたどり着きます。

玄関を開けると、奥から黒猫こまちがトコトコと。
私を、迎えに来てくれたのです!
おかえり.png


同居人不在も猛暑もなんのその、元気な猫が我が家を疾駆する!
の北海道からの帰りの時は本当に久しぶりの、私の長期不在。
こまちも多少は寂しかったでしょうから、迎えに来たくもなるんだろうなと納得。

でもあの感動の再会から、まだひと月たっていません。
ましてや、北海道よりはずっと短い日程
正直今回は、迎えに来ない可能性の方が高いかなと思っていました。

それが、前回以上の勢いで私の足元にじゃれついてきます。
びっしょり濡れた折り畳み傘が、身体に触れても平気。

どこ行ってた.png

残像がブレるほどぶんぶんと顔を左右に振って、キャリーケースの匂いを確認。
「こんどは、どこ行ってたの?ねえ、どこどこ?」

まあまあ、ちょっと待ちなよお嬢さん。
まずは洗面所で手洗いうがい、荷物をざっとほどいて。
とりあえず落ち着いたところで、
旅の土産ばなししてあげるから。

こまちはお出迎えのご褒美に、
お母さんからCIAOちゅ~るもらっておいで。

時間との戦い、駆け足でのワークショップ


今回の公演は通常の学校寄席とは異なり、文化庁主催事業
若い世代に日本の伝統芸能に親しんでもらうため、こちらの芸を鑑賞するだけの一方通行ではありません。

代表の生徒さんたち数名に、
・短い小噺を、高座で演じる。
・寄席の一番太鼓を打ってみる。
・三味線のお師匠が弾く曲に合わせて、鉦と太鼓で一緒に演奏。
といった体験をしてもらうのも、大きな目的の一つ

本来ならそのために秋の本公演の前、7月に若手真打・二ツ目・お囃子さんが事前に各学校へワークショップをやりに行きます。
私も3回、やらせてもらったことが。

まるで落語や寄席なんて知らない生徒さんたちに、一から指導するのは確かに大変なところもあります。
でも興味を持ってくれた子たちが、夏休みの間に一生懸命練習して。

秋に再会した生徒さんが、堂々と体験を披露してくれた時
教えた方として、とても手ごたえを感じるもの。

しかし今年はこういった状況ですから、ワークショップと本公演を同時に行うことに。
午前中に1時間半かけて生徒さん方にレクチャー、午後の公演中で発表してもらう突貫工事

限られた時間の中で教える噺家も、教わる生徒さんも本当にベストを尽くしたと思います。
でもできることならもっとゆったりワークショップを開催して、時間に追われることなく寄席体験をしてもらいたかったなと。

かなわぬこととは承知ながら、舞台袖で生徒さんたちの発表を聴きながら思った次第です。

コロナ禍のもと、催しをやめる勇気と実施するための努力


当初の日程では、今公演は9月13日前乗りで18日帰り・全5校のはずでした。

夏休み明けの時期、事前に文化庁から各学校・所管教育委員会に
「感染予防を万全にしたうえで、基本的には学校寄席はぜひ実施の方向で検討していただきたい」
との要請があったそうです。

しかし大勢の生徒さんを預かる、責任ある立場の学校職員の皆さん。
学校単位で慎重に考えた結果、今回は延期(今のところ、中止ではない)をギリギリになって決定した学校が3校

決まっている学校行事の日程を変更するには、現場での勇気をもった判断が必要だったことでしょう。

子どもたちの身を一番に考え、大事をとって今回は見送りとなった3校の皆さん。
状況が落ち着きあらためて呼んでいただける日を、心待ちにしております。

そして全国・ことに都市部での新規感染者が減っている現状から、衛生面に配慮しつつ予定通り実施するという決断をしてくださった2校
こちらは保護者・近隣の方への説明や、当日の受け入れ態勢など事前の努力あってのこと。

中止・延期と予定通りの開催、どちらもそれぞれの現場でベストな判断をしてくださったのだと思います。

生徒さんたちの明るい笑い声と、先生方のお見送り


いろんな経緯はあれど、公演を実施してくれた
宇和島市立一本松小学校
西条市立壬生川小学校

生徒さんたちは、両校とも本当によく聴いて笑って参加して

雷門小助六師の丁寧な解説とワークショップで、
元気に発表してくれた代表の子たち。
活きのいい二ツ目・入船亭遊京と柳亭市若さんの落語で、
全校生徒大爆笑

そして色物は、
演芸会の至宝・林家正楽師匠の紙切り
白い紙から鋏を自在に操って産み出される作品に、一枚ずつ
「おーっ!」
「うわーっ!!」
反応する小学生たち。

聴いている私まで、嬉しくなってきます。
その私の『幽霊タクシー』の一席で、文化庁主催鑑賞事業はお開き。
生徒さんたちの、盛大な拍手を背に受けて控室へ。

支度ができたらスタッフの運転するワゴン車に乗り込んで、次の目的地へと向かいます。
と、一本松でも壬生川でも。
先生方が何人か、わざわざ私たちをお見送りに出てきてくださいました!

数多く学校公演に伺ってますが、意外と職員の方のお見送りって少ないんです。
直接の窓口になっている、芸術鑑賞担当の先生だけがご熱心。
ほかの先生方はあまり関心がないという学校の方が、けっこう普通だったりします。

その担当の先生が公演後ご用があったりすると、誰も見送りなんて来てくれません。
まるで夜逃げのようにそそくさと荷物をまとめ、自分たちで校門を閉めて学校を後にするなんてパターンも多いんですが…。

今回はどちらの小学校も、複数の職員の方々でのお見送り。
中には、若くてきれいな女性の先生も。
車が見えなくなるまで、ちぎれんばかりに手を振っていてくださいました。

もちろん普段から反応のいい生徒さん・熱心な先生方なのでしょうが、この特別な状況下での公演開催。
学校行事も、夏前はほとんどまともに行われなかったのでしょう。
久しぶりの催しをみんな待っていてくれた、それが今回の温かい受け入れにつながったのかと思います。

宇和島小学校・壬生川小学校の皆さん。
あらためまして、どうもありがとう!
楽屋一同も、たくさんの元気を分けてもらいましたよ。

なかなか見つからない、隠れ家喫茶店


生徒さん・先生方の反応に感動して、つい前半が長くなってしまいました。
このあとはトントーンと、壬生川小学校の周りをぶらぶらした時のことを申し上げるとしましょう。

ほかのメンバーが解説とワークショップをやっている午前中、正楽師匠に誘っていただいて学校の周囲散策。
私は何かブログのネタが拾えるかもと、お供させていただきました。

コーヒーがお好きな正楽師匠の目的は、もちろん近所の喫茶店
市若さんがネットで周辺の様子を検索し、歩いていけるところに1軒お店発見。

「師匠、隠れ家みたいでちょっとお洒落な『デルタ』ってカフェがあるそうですよ」
との情報を頼りに、だいたいの方角を聞いて歩き出したのですが…。
行けども行けども、いっこうにそれらしい建物が見当たりません。

やっと国道沿いにCOFFEEの看板を見つけて喜んだら、とうの昔にその喫茶店は廃業
同じ建物で営業しているのは、このお店だけ。
店頭で、こんな物も売っています。
リサイクルショップ.png

う~ん、四国まで来て木彫りの熊は、ちょっとなぁ…。

そばのローソンに入ってお客さんに聞くと、
「喫茶店なら道を挟んだはす向かいに1軒あるよ」と。
お礼を言って向かった先に上がっていたのは
『珈琲泉人 珈泉』
という看板。

広い駐車場には、午前中から車がいっぱい。
お目当ての店とは違うけれどまあいいかと入ってみると、地元の方らしきお客さんで大繁盛

それもそのはず、しっかりした味わいのブレンド1杯400円
150円~250円で厚切りトーストやワッフルがセットにでき、ボリュームたっぷりのサラダも付いてくる。
珈泉.jpg


これはご近所の方、モーニングやランチで頻繁に足を運びたくなるでしょう。 パン類召し上がったお客様がお帰りになると、テーブル足元の落ちたパン屑まできれーいに掃き清める。
常に清潔な店内は、全席禁煙。
近くにお住いの方が、ちょっと羨ましくなるお店でした。

そこで正楽師匠にごちそうになり、豊かな気持ちで学校への帰り道。
ふと見ると住宅街の中の1軒、民家の壁に 「営業中」 と書いたハガキ大くらいの白い紙が貼り出してあります。

なんの店かなと正面に回ってみると、やはりごく控えめな小さい黒板にお品書きが。
その中には 「デルタセット 750円」 という1行。
民家の喫茶店_R.jpg


ええーっ、あんなに探してわからなかったデルタ カフェってここだったの?
市若さんからおおよその方角だけ聞いて、店構えの画像を見ていませんでした。

外観知らなきゃ、まず一見さんには喫茶店とは認識できないですよね?
いくら隠れ家カフェったって、ここまで隠れてちゃ見つけられませんよ。

扉を開けてみると中は、本当に普通の一軒家
出てきてくださった女性オーナーさんに伺うと、三和土で靴を脱いで庭に面した洋間と和室それぞれ1室ずつ。
限られた空間でゆったり、お茶やお菓子をいただけるそうです。

こちらのお店も気にはなりますが、けっこう量たっぷりのブレンドを飲んだ後なので…。
オーナーさんには丁重に事情を説明して、隠れ家カフェを後にしました。

水鳥は、見えないところで努力する


国道から1歩中へ入ると、あちらこちらに用水路が引かれ広がる緑滴る水田

「おっ、あそこに鷺がいる」
正楽師匠の指差す先へ目をやると、
遠目にもすっきりとした首の長い立ち姿。
優雅な鷺.jpg

スマホのズームでは、ここまで寄るのが精いっぱい。
写真だけでは鳥だとわからないので、イラストで想像図を挿入。

「飛んだとこ、写真に撮れるといいんじゃない」
優しい師匠が気をつかって言ってくれます。
お言葉に甘えしばらくその場でシャッターチャンスうかがったのですが、いっこうに羽ばたく気配なし。

石を投げたりしちゃかわいそうだし、大先輩をいつまで待たせておくわけにもいきません。
お付き合いいただいてありがとうございますと正楽師匠にお礼を申し上げ、歩みを再開して田んぼの向こうへ回り込んでみると…。

今まで見ていた稲穂の群れのすぐ先は、もう収穫がすんだ水田
件の鷺はぬかるむ泥土へ慎重にひと足ずつ歩を進めながら、こんな愚痴を言っているかのよう。
歩きにくい.png

よほど潔癖症の鷺なのでしょうか。

急ぐので見届けませんでしたが、あの鷺がぬかるみを脱して無事
「足抜け」
できたことを願ってやみません。
白さぎマンション.png


柑橘王国からの帰還と、我が家のワンダーみかん


お客様とこまちへの旅の土産ばなし、締めは何といってもこの話題。

四国でも愛媛とくれば、日本一の出荷量を誇る
「柑橘王国」
温州みかんの生産だけでは、和歌山に次いで全国2位
しかし伊予柑やデコポンなど種類豊富な柑橘類ともだと、年間合計生産量21万トンでぶっちぎりのNo.1!

松山空港のロビーには、
名物みかんジュースタワー
みかんタワー.png

輝くオレンジ色の液体が、惜しげもなくずっと流れ続けています。

私は以前から、甘みと酸味がほどよいおいしさ・愛媛ポンジュースの大ファン。
久しぶりの四国訪問が嬉しくて、ポンジュースお土産も買いました。
ポンお土産_R.jpg


チロルチョコの方は、箱が空いたらこまちにあげるからね。

ああ、この写真見ていたら無性にみかん食べたくなってきた。
もっと秋が深まる頃になったら、早生の愛媛みかん買ってこようかな。

うん、なんだいこまち。
みかんならあるよ.png

あんのかい、今うちにみかんが!
留守中に、お母さん買っといてくれたのかな。
じゃあ、さっそく台所へ…。

えっ、みかんがあるのはそっちじゃない?
だったら、どこに置いてあるんだい。
ほらね!.png



ははぁ、なるほどね。
廊下に敷いてある、オレンジ半分型のい草ラグ。
みかん型ラグ.png

近所のホームセンターで、見切りになっていたのを購入。
今ではこまちお気に入りの狩場の一つ、ラグの端はもうボロボロ。

それが
猫と鏡が織りなす、ミラクル映像!
の記事のように鏡に映って、
大きな丸いみかんができています。

そこへ紙を細長くひねったこより状のおもちゃを放ってやると、みかんの周りで猫大喜び。


柑橘王国から帰ってそうそう、我が家の巨大みかんでこまちが遊んでくれた。
その姿に旅の疲れも、一気に吹っ飛んだところで…。

愛媛学校公演旅日記も、これをもって無事
かんきつ(完結)
とさせていただくことにしましょう。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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