黒猫マスコットの『楽しいままごと劇場』~ダイソー『ミニ洗濯機』体験記・後編~ [猫のいる風景]
イラストこまちから、今回記事のサポートを任されたクロネコヤマトマスコット=クロヤマさん。
※本稿は☆『大人にも人気のままごと玩具、黒猫はどう反応したか?~ダイソー『ミニ洗濯機』体験記・前編~』の続きです。
未読の方は、
ぜひ前編もご覧ください!

未読の方は、
ぜひ前編もご覧ください!
長編ままごと劇場
『クロヤマさんのお洗濯』
『クロヤマさんのお洗濯』
ある日家にやって来た、ピンクの小さなかわいらしい洗濯機。
自分たちマスコットには、
ぴったりの大きさ。

ぴったりの大きさ。

ちょうど今日はいいお天気なので、春物のシーツを洗うことにしたクロヤマさん。
よいしょよいしょと運んできたシーツを洗濯機に入れて、
蓋をします。



税込330円の洗濯機・プラスチック製の蓋は作りが甘いので、洗濯ものが飛び出さないよう上からギューッと。
念には念を入れて、
頭でも押さえておきましょう。

頭でも押さえておきましょう。

しっかり蓋が閉まったら、スイッチを入れます。
出来上がりまで、のんびりお気に入りの漫画を読んで待ちましょう。
おや、
待ちくたびれて寝てしまいました。

出来上がりまで、のんびりお気に入りの漫画を読んで待ちましょう。

待ちくたびれて寝てしまいました。

脱水が始まったのでそろそろ終わるかなと、中を覗き込むクロヤマさん。
自動で蓋が開いて洗濯終了!
※実際のミニ洗濯機は、自動では開きません。


きれいになったシーツを、洗濯槽から取り出します。
勢い余って、
ひっくり返ってしまいました。

ひっくり返ってしまいました。

気を取り直して起き上がり、洗剤のいい匂いがするシーツ抱えて干しに行くクロヤマさん…
ん、なんか忘れ物?

ついでに、
こっちもきれいにしていこう!
大丈夫かーい、しっぽとかちぎれないように気をつけてね。
こっちもきれいにしていこう!

リアル黒猫も
最後は一緒に参加
最後は一緒に参加
平日昼間からピンクのままごと玩具で遊ぶ、いい歳をしたおじさん(筆者)と猫マスコット。
(何やってんだろうこの人たちは)と言いたげに、我関せずと窓際でニャルソック中のこまち…
と思っていたら、トン!と高いところから降りて来て。
おやおや、『ままごと劇場』の最中、向こうを誰か通り過ぎて行きすよ。
見てたら面白そうだから、リアルこまちさんも参加したくなったのかい?


見てたら面白そうだから、リアルこまちさんも参加したくなったのかい?
こまち

はいはい、それでもけっこうですよ。
せっかく降りてきたんだから、イラストこまちも入ってみんなで記念撮影しようよ。
ハイ、チーズ!
せっかく降りてきたんだから、イラストこまちも入ってみんなで記念撮影しようよ。
ハイ、チーズ!



100均ショップで買った330円のおもちゃで、人間も猫もひと時楽しませてもらいブログ記事も2本書けた。
もうじゅうぶん、
元は取れています。
もうじゅうぶん、
元は取れています。
今度はこれへ実際に水を張って、マスクとか洗ってみよう。
そうだ。着物の半襟なんか洗うのにも、ちょうどいいんじゃないかな。
そうだ。着物の半襟なんか洗うのにも、ちょうどいいんじゃないかな。

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
入船亭扇治拝
タグ:猫 イラスト 写真
大人にも人気のままごと玩具、黒猫はどう反応したか?~ダイソー『ミニ洗濯機』体験記・前編~ [猫のいる風景]

100円ショップ・ダイソー両国店でお目当ての品が買えて、ご機嫌の黒猫こまち。
大人もハマった!
ままごと用ミニ洗濯機
ままごと用ミニ洗濯機
こまちが買ったのは、こちら。
ダイソーオリジナル玩具
『ミニ洗濯機』。
ミニ掃除機と並ぶ、子どもに人気のままごと用品。

『ミニ洗濯機』。
ミニ掃除機と並ぶ、子どもに人気のままごと用品。
プラスチック製の小さな筐体に、透明な蓋と排水ホースがちゃんと付いている。
単三乾電池2本で、けっこう力強く回る洗濯ファン。


税込330円ながら押さえるべきところは押さえた作りで、なるほどこれなら小さいお子さんは大喜びでしょう。
しかしこのミニ洗濯機、今大人の間でもちょいとしたブームなのだとか。
なんて感想がSNS上に数多く上がっています。
女性の方からは、
という声も。
という声も。
どこのダイソーでも扱っているわけではなく、大人気のため品薄でなかなか手に入らない時期もあったそうです。
両国の店舗に
ずらり並んでいた!
ずらり並んでいた!
私もネット記事で見かけて話のタネに買いたいなと思っていたのですが、近所のダイソー4軒回っても置いてある店はありませんでした。
ところが仕事先でたまたま入った両国のダイソーで、念願のミニ洗濯機発見!

おもちゃ売り場には三つしかありませんでしたが、あらためて店内を見ると2階へ上がる階段の踊り場・その壁になんとこんなに!
ミニ洗濯機がずらり並んだ光景は、いやー壮観。

そばには手間なく一緒に買えるよう、乾電池も置いてある細かい配慮。

本来の用途「ままごと」で
黒猫は遊んでくれるか?
黒猫は遊んでくれるか?
大人もハマった、このミニ洗濯機。
本来の用途は、
もちろん子どものままごと遊び用。
洗濯機自身も、小さい子に遊んでもらった方がよりやりがいがあり嬉しいでしょう。
もちろん子どものままごと遊び用。
洗濯機自身も、小さい子に遊んでもらった方がよりやりがいがあり嬉しいでしょう。
そこでわが家ではマスク洗ったりする前に、まず誰かにままごと遊びで使ってもらうことに。
さて、
誰がやってくれるかな。
さて、
誰がやってくれるかな。
今子どもたち二人、どちらも家にいるのですが…。社会人1年生の娘と大学2年の倅ですから、頼んでもおそらくやってくれないでしょう。
家の中で、ほかに「対象年齢3歳以上」のおもちゃを喜びそうな小さい子…。
家の中で、ほかに「対象年齢3歳以上」のおもちゃを喜びそうな小さい子…。
おお、ちゃんといるじゃありませんか!
愛猫こまち、
現在5歳。
愛猫こまち、
現在5歳。

ちょうどご飯を催促に起きてきたので、「ちょっとこれで、遊んでくれる?」とミニ洗濯機を見せてあげます。
初対面、
警戒心MAX。

警戒心MAX。
「遊ばなくていいから、一緒に写真撮らせてよ。そしたらご飯あげるから」となだめすかし、とりあえずツーショットらしきものは撮れたのですが…。
頑なに、洗濯機と目を合わそうとしません。




それでも撮影を強行していると、だんだんこまち嬢我慢の限界に。
洗濯機の向こうで、静かに怒りをみなぎらせています。
「いい加減にしてよー」と、耳を後足でバリバリ。
「もう疲れたー、撮影ここまでー」
と抗議のダイ・イン。



と抗議のダイ・イン。
リアル黒猫に代わり
華麗にこの人登場!
華麗にこの人登場!
「ごめんごめん、協力ありがとう」とお礼を言ってこまちの食事を支度する、その前にもう一度だけ。
お膳に、
ミニ洗濯機を置いてみます。
やはり最初は目を逸らし、下を向いて(なんでこんなものが、ここにあるんだろう)としばし思案。
そののち顔をキッと上げ、
「ここは、ご飯の場所。
こんなの置いちゃダメ!」
怒られてしまいました。
ミニ洗濯機を置いてみます。



こんなの置いちゃダメ!」
怒られてしまいました。
重ねてこまちに詫びを入れ、待たせてごめんとご飯あげてから。
しみじみミニ洗濯機を眺めつつ、まだ諦めきれない私。
しみじみミニ洗濯機を眺めつつ、まだ諦めきれない私。
そうだ!
リアルの代わりにこちらの言うことをちゃんと聞いてくれる黒猫が、わが家にはもう一人いるじゃないか。
リアルの代わりにこちらの言うことをちゃんと聞いてくれる黒猫が、わが家にはもう一人いるじゃないか。
おーいクロヤマさん、
出番ですよー!
出番ですよー!

☆『ポートレートモードにも負けない、無料アプリ「GIMP」での画像背景ぼかし』でも大活躍のヤマト運輸マスコット、満を持して華麗に登場。
果たしてこの人は、こちらの意図通りミニ洗濯機でままごと遊びをしてくれるでしょうか?
この続きは☆『黒猫マスコットの『楽しいままごと劇場』~ダイソー『ミニ洗濯機』体験記・後編~』にて。

前編のご精読、ありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
入船亭扇治拝
タグ:猫 イラスト 写真
ポートレートモードにも負けない、無料アプリ「GIMP」での画像背景ぼかし [デジタル日曜大工]

高機能なスマホカメラのAIに、使い慣れた無料アプリを駆使してパソコンで立ち向かうブログ主と共同執筆猫。
スマホのAIに
人力で対抗!
人力で対抗!
「ポートレートモード」。
複数カメラ搭載のiPhoneの7以降と第2.第3世代のSEが対応している、一眼レフカメラで撮影したかのような背景をぼかした写真を手軽に撮れる機能。※SEは人物撮影のみ。
複数カメラ搭載のiPhoneの7以降と第2.第3世代のSEが対応している、一眼レフカメラで撮影したかのような背景をぼかした写真を手軽に撮れる機能。※SEは人物撮影のみ。
このモードでシャッターを切れば、散らかった部屋で寝ている黒猫の姿もなんとなくお洒落に。
撮影後に「ステージ照明」などの効果を与えることもできます。
なんか、
化け猫みたいで怖い。


化け猫みたいで怖い。
2021年秋、 ☆ 『通信キャリア版iPhone、アップルストアでの購入も意外とお得!※楽天モバイル除く』に綴った経緯でiPhone12miniを購入した私。
それ以来ポートレートモード撮影を楽しんできましたが、人間というのは不思議なものです。
簡単便利に一眼レフ風の写真が撮れるようになると、ポートレートモード非搭載機しか持っていなくて手作業で背景をぼかしていた頃が逆に懐かしくなってきました。
簡単便利に一眼レフ風の写真が撮れるようになると、ポートレートモード非搭載機しか持っていなくて手作業で背景をぼかしていた頃が逆に懐かしくなってきました。
そこで今回は初心に立ち返り、愛用の高機能無料アプリ「GIMP」を使って久しぶりに自分で疑似一眼レフ画像を加工してみることに。
スマホ搭載AIの処理能力に人力はどこまで対抗できるかの、いい実験にもなりそうです。
しばらくやってなかった作業だけど、手順はちゃんと覚えているかな?
元画像+ぼかした画像に
消しゴムをかけて完成
消しゴムをかけて完成
まずこの画像をサンプルにして、作業を進めていきましょう。
☆『ひょんなことから参加したキャンペーンで、思わぬニコニコ!~コロナ禍の日常で出会えた、ささやかな喜び~』のご縁でわが家にやってきた、クロネコヤマトマスコット(以下”クロヤマさん”と呼称)。

iPhoneの純正ポートレート機能をかけると、こんな具合に。
いい感じに、
後ろがぼけていますね。

後ろがぼけていますね。
GIMPでこれと同じような仕上がりにするには、次のような手順を踏みます。
①元画像を複製、マスク用のレイヤーを作る。
※透明度情報無しの画像は、複製前に右クリックからアルファチャンネルを追加しておく。
※透明度情報無しの画像は、複製前に右クリックからアルファチャンネルを追加しておく。
②元画像の上に置かれたコピー画像レイヤーに、レイヤーマスク「完全不透明・白」を追加。
③レイヤーマスクに、画像途中から下までの透明グラデーションをかける。この時下の元画像は目のアイコンをクリックして非表示にしておく。

④元画像を表示させ、コピー画像本体にフィルター→ぼかし→ガウスぼかしを好みの強さでかける。
※③の作業を行った後はレイヤーマスクが選択された状態なので、必ずマスクの左側にある四角アイコンをクリックして画像を選択し直しておきましょう。

⑤コピー画像レイヤーの前景にしたい範囲を、好みの種類・大きさの消しゴムで消す=下にある元画像の、必要な部分が見えるようにする。
これで完成。
どうでしょう、iPhoneのポートレート機能にかなり近い仕上がりになったのでは。


クロヤマさんのように比較的単純でつるんとした形のものは特にそうですが、最初は少々はみ出すのは気にせず大き目の消しゴムで大胆に消していった方が効率がいいです。
周辺の消し過ぎた部分は、後でサイズを小さくした逆消しゴム(Altキー押しながらドラッグ・クリック)で簡単に修正できます。

白いものにはご用心!
クロヤマさんに続いて、相棒のシロネコマスコット=シロヤマさんにも登場してもらいましょう。
iPhoneポートレートモードだと、こんな具合に。
iPhoneポートレートモードだと、こんな具合に。

ポートレートモードを外した元画像を、クロヤマさんと同じ手順を踏みGIMPで加工。
おや、なんだか耳のあたりがハレーション起こしてます。

白は膨張色だからでしょうか、ぼかした時に元画像よりひと回りシロヤマさんの顔が広がってしまったのが原因。
これはこれで「幻想的」と言えなくもないのですが、ここはもうひと手間かけてきれいに仕上げてあげましょう。
これはこれで「幻想的」と言えなくもないのですが、ここはもうひと手間かけてきれいに仕上げてあげましょう。
切り抜いたシロヤマさんを、穴あき背景の上に乗っける形になります。
その結果は…。
けっこうざっくり切り抜いたシロヤマさんですが、それなりに周囲に馴染んでいるのでは。


おまけとして純正ポートレートが作り出していた背景の玉ぼけの代わりに、GIMPの照明効果フィルターを使ってレンズの反射フレアを入れてみました。
勘が戻ったところで
リアル黒猫に挑戦!
リアル黒猫に挑戦!
久しぶりなので思い出しながらですが、ここまでそんなに時間をかけず順調に作業を進めてこられました。
ならば、
鉄は熱いうちに打て。
作業勘が戻っている今のうちにもう少し、GIMPでの一眼レフ風加工の練習をしておくことに。
鉄は熱いうちに打て。
作業勘が戻っている今のうちにもう少し、GIMPでの一眼レフ風加工の練習をしておくことに。

挑むはつるんとしたシルエットのマスコットだけでなく、リアルこまちを配したツーショット。
iPhoneポートレートだと、こうなります。

iPhoneポートレートだと、こうなります。

対する、GIMPでの手作業。
ほぼ互角…というか手前味噌になりますが、消しゴムで細かい作業を繰り返した分こまちの右頬あたりの毛並み。純正ポートレートより、ちょっとだけ柔らかく再現できたのでは?

続いての画像は、こちら。
これはポートレートモードではなく普通にiPhoneで撮影したものを、☆『iphoneでの写真撮影を楽しくする、無料アプリ「Focos」ご紹介』でご紹介したスマホアプリ「Focos」で加工。

有料版はもっと精度が高くなるそうですが、無料版だといまひとつの仕上がり。 こまちの足元がぼけてしまっていますし、頭のてっぺんの処理も不自然。

ぬいぐるみがあまり得意ではないこまちが、せっかく協力してくれた貴重な画像。
もう少しうまく、
背景をぼかしてあげたいもの。
もう少しうまく、
背景をぼかしてあげたいもの。
では先ほどの写真以上に丁寧に消しゴムを使って…。はい、30分ほどで出来上がり。

まだまだ完璧ではありませんが、頭頂部や右のひげあたりなど無料FocosのAIに勝てているのではと自負しております。

小さいサイズの消しゴムを使っての細かい作業は大変そうだと敬遠なさる方も多いかと思いますが、慣れると意外にサクサクできるものですよ。
コインで削るスクラッチくじみたいな楽しさもあって、細かいところがうまく処理できると実に気持ちがいい!
後から加工できる
生活感抜きの画像
生活感抜きの画像
以上、私の個人的なGIMPトレーニングということで綴ってまいりました。
ポートレートモードにしても今回GIMPでの作業でも、出来上がる画像はやはり本物の一眼レフカメラで撮影したものに比べると”作り物”感があるのはいたしかたないところ。
それでも場合によっては人工的に背景をぼかしてみるのも意味があるなと思うケースの一つは、
を自分の手で作りたい時。
を自分の手で作りたい時。
品物を撮るならバックに凝るとか撮影のシチュエーションはいくらでも工夫できますが、動いている生き物相手だとなかなかそうはいきません。
小さいお子さんや、ペットが時折り見せる宝石のような瞬間。
胸の想い出アルバムにしまうとともに、シャッターチャンスに恵まれて写真に収めることもできた!
胸の想い出アルバムにしまうとともに、シャッターチャンスに恵まれて写真に収めることもできた!
さっそくLINEで知人に送ったり、SNSで公開したりしようと画像を見直すと…。
被写体の映りは最高なのですが。バックに映りこんでいるのが室内干しの洗濯ものや、流しに積まれた食器の山だったりしたら。
よほど親しい人相手でなければ、(ちょっと、このままじゃ見せられないなー)と二の足を踏んでしまうでしょう。
被写体の映りは最高なのですが。バックに映りこんでいるのが室内干しの洗濯ものや、流しに積まれた食器の山だったりしたら。
よほど親しい人相手でなければ、(ちょっと、このままじゃ見せられないなー)と二の足を踏んでしまうでしょう。
せっかくいいショット撮れたのに、残念!
そんな時に後から加工が施せるフォトレタッチは、とても有効なのでは。
そんな時に後から加工が施せるフォトレタッチは、とても有効なのでは。
このブログでは何度も言ってますが、GIMPは無料でとにかく高機能・動作も軽くて安心して使えるアプリ。
使い込むほどに楽しくなるGIMP、私にとってはiPhoneでの撮影と車の両輪。
二つを合わせて、少しでも皆様のお目に留まるような画像作りを心がけてまいります。
二つを合わせて、少しでも皆様のお目に留まるような画像作りを心がけてまいります。
まぁでも素敵な写真撮るのに一番大切なのは、ファインダー越しの被写体が元気でいい表情見せてくれること。
これに、
尽きるのでしょうね。

尽きるのでしょうね。

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
入船亭扇治拝
タグ:画像加工 猫
タイムマシン小説のエヴァーグリーン 広瀬正『マイナス・ゼロ』~扇治の私的時間SF傑作選その③~ [お気に入り・おすすめ]
1965年雑誌『宇宙塵』誌上で連載、1970年に単行本化された広瀬正『マイナス・ゼロ』。
発表から半世紀以上経った今日も”日本時間SFの金字塔”として愛され続けるこの名作、満を持して当ブログにてご紹介。

初めての出会いは
ラジオドラマで寝落ち
ラジオドラマで寝落ち
私がこの作品を初めて知ったのは、1973年8月にNHK第一で『文芸劇場・SFシリーズ』として放送されたラジオドラマ。
このシリーズでは、トム・ゴドウィン『冷たい方程式』やダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』などもラインナップされていました。
このシリーズでは、トム・ゴドウィン『冷たい方程式』やダニエル・キイス『アルジャーノンに花束を』などもラインナップされていました。
前年にテレビ放送のドラマ『タイム・トラベラー』で時間SFの魅力に目覚めた私は、新聞のテレビ・ラジオ欄の解説を読んで(これは聴かねば!)と。
父から借りたラジオを枕元に置き、土曜の夜9時5分が来るのを床の中で今か今かと心待ちに。
父から借りたラジオを枕元に置き、土曜の夜9時5分が来るのを床の中で今か今かと心待ちに。

『ウルトラマン』お馴染みの俳優・小林昭二が声の出演をしているのも楽しみで、番組が始まると(おお、ムラマツキャップが喋ってる!)と最初は喜んで聴いていたのですが…。
複雑に入り組んだ時の流れを耳で聴いただけで理解するのは、小学5年生にはまだ難しかったのでしょうか。
番組関係者の方にはまことに申し訳ないのですが、55分の放送半ばにして寝落ちしてしまった私。
深夜気がついたらNHKのラジオ放送自体が終了しており、真っ暗な中で「ザーッ」という音だけが響いていました。
番組関係者の方にはまことに申し訳ないのですが、55分の放送半ばにして寝落ちしてしまった私。
深夜気がついたらNHKのラジオ放送自体が終了しており、真っ暗な中で「ザーッ」という音だけが響いていました。

このラジオドラマ版『マイナス・ゼロ』全編、YouTubeにアップされています。
ご興味おありでしたら、☆ 『ラジオドラマ マイナス・ゼロ 広瀬正』チェックしてみてください。音楽や効果音の使い方など当時のラジオ文化が窺い知れて、なかなか面白いですよ。
ご興味おありでしたら、☆ 『ラジオドラマ マイナス・ゼロ 広瀬正』チェックしてみてください。音楽や効果音の使い方など当時のラジオ文化が窺い知れて、なかなか面白いですよ。
10年近くの時を経て
名作との新たな邂逅
名作との新たな邂逅
途中で寝てしまいましたが、夜の闇の中で聴いた『マイナス・ゼロ』のストーリーは子ども心にも印象深いものでした。
(いつか原作を読んでみたいな)という思いが実現したのは、1982年・私が大学2年生の時。
河出書房新社から単行本で出ていた『広瀬正・小説全集』が、全6巻集英社文庫に収録されることになったのです!
河出書房新社から単行本で出ていた『広瀬正・小説全集』が、全6巻集英社文庫に収録されることになったのです!

新聞広告でこれを知った私は、さっそく書店に赴き第1巻『マイナス・ゼロ』を購入。
今度は寝落ちどころか、面白さにページを繰る手が止まらずひと晩で一気読み。
興奮冷めやらぬまま、順次刊行された後続巻も次々と読破していきました。
今度は寝落ちどころか、面白さにページを繰る手が止まらずひと晩で一気読み。
興奮冷めやらぬまま、順次刊行された後続巻も次々と読破していきました。
全6巻はいずれも粒揃いの名作で、今でもわが家書棚の宝物ですが…。中でも『マイナス・ゼロ』は夭折した作者の第1長編であり、ラジオドラマの想い出も相まって私にとっての特別な作品。
~『マイナス・ゼロ』 あらすじ~
物語の始まりは、昭和20年の東京。
主人公・中学2年の浜田俊夫少年が暮らす梅ヶ丘の借家、その隣には大学教授伊沢先生と、高等女学校5年生の美少女・啓子が住んでいた。
伊沢家の庭には、先生が「研究室」と呼ぶ迷彩塗装を施した不思議なドーム型建物が。
伊沢家の庭には、先生が「研究室」と呼ぶ迷彩塗装を施した不思議なドーム型建物が。

伊沢先生は物静かで穏やかな人だが時折り「この戦争は日本が負ける。無謀な戦いはすぐにやめるべきだ」と発言したりして、浜田親子以外の近所の人々からは敬遠される存在でもあった。
昭和20年5月25日深夜。
東京一帯は、アメリカ軍B29大編隊による大空襲を受ける。
東京一帯は、アメリカ軍B29大編隊による大空襲を受ける。
隣家に火の手が上がるのを見た俊夫は、普段勉強を教えてもらいお世話になっている先生と内心憧れている啓子を救うため、早く防空壕へと呼ぶ母の声を背に研究室ドームへ向かう。
焼夷弾の直撃を受け破壊されたドーム内で、瀕死の重傷を負い倒れている伊沢先生。
「啓子さんを呼んできますから」と言う俊夫を引き留めた先生は、彼に耳元に口を寄せ”ある重大な”ことを頼む。
「啓子さんを呼んできますから」と言う俊夫を引き留めた先生は、彼に耳元に口を寄せ”ある重大な”ことを頼む。
結果的に先生の遺言となったその言葉は…
という不可解なものだった!
という不可解なものだった!
秀逸で緻密な
タイムマシンの設定
タイムマシンの設定
その後も沢山の時間SFが産まれ続けていても、永遠のエヴァーグリーンとして輝き続ける『マイナス・ゼロ』。
その魅力の一つとして、作中のタイムマシンの設定があげられるかと私は思います。
その魅力の一つとして、作中のタイムマシンの設定があげられるかと私は思います。
H.G.ウェルズが「機器を使ってのタイムトラベル」を発案してから、本当に色々な形のタイムマシンが登場してきました。
中でも出色でユニークなのは、これですね。
映画『バック・トゥ・ザ・フューチャー』シリーズの、デロリアン型タイムマシン。
中でも出色でユニークなのは、これですね。

劇中で主人公のマーティから「なんでスポーツカーをタイムマシンにしたの?」と尋ねられた製作者のドクが答えていわく、
PART1のクライマックス・時計塔へ向かって疾走するデロリアン、確かにカッコいいですよね!
未来へ行ったドクが改造してからは、車輪を畳んでホバー航行できるというスーパーマシンに。
未来へ行ったドクが改造してからは、車輪を畳んでホバー航行できるというスーパーマシンに。
それに対して『マイナス・ゼロ』のタイムマシンは、
「シェルターのよう」だと俊夫少年は思いますが、現代の皆様は「スチール製物置」みたいなものを想像していただければよろしいかと。
「シェルターのよう」だと俊夫少年は思いますが、現代の皆様は「スチール製物置」みたいなものを想像していただければよろしいかと。
そんなイナバ物置型時間移動機と、スーパーカー改タイムマシン。
こまちでなくても、見た目だけだったら皆後者をを選ぶでしょう。

車や小型飛行機としても活躍するデロリアンに対してマイナスゼロマシンは据え置き型ですから、そっちの方でも派手さに欠けます。
しかしその「据え置きで空間を移動できない」タイムマシンという縛りが、実は『マイナス・ゼロ』作中では重要なポイントに。
それまでの時間SFではけっこう曖昧にされることが多かった
この点についていかにも工学部出身の作者らしく緻密に考えられており、ストーリー運びに捻りを加えています。
この点についていかにも工学部出身の作者らしく緻密に考えられており、ストーリー運びに捻りを加えています。
粋なユーモアと
妥協なき取材力
妥協なき取材力
そして私が『マイナス・ゼロ』を何度も読み返してたくなる魅力のもう一つが、物語を支える「粋で都会的なユーモア」と「圧倒的な取材力」。
先述のラジオドラマはけっこう長い原作を1時間弱にまとめるため、主人公たちのタイムトラベルに焦点を当てたストーリーになっています。
BGMと効果音もサスペンス風味が強く、ラストはほとんどホラー。
BGMと効果音もサスペンス風味が強く、ラストはほとんどホラー。
しかしラジオドラマでは省かれた戦中・戦後の東京の景色や風俗描写、これが実に豊かで細かい!
全集第1巻のあとがきを書いている星新一に、広瀬正が語った言葉。 当時の写真誌『アサヒグラフ』を、すべて集めたそうです。

全集第1巻のあとがきを書いている星新一に、広瀬正が語った言葉。 当時の写真誌『アサヒグラフ』を、すべて集めたそうです。
昭和7年にタイムトラベルした俊夫が購入する自動車「ダットサン・フェートン」。
作中にはその仕様書が、約1ページに渡って引用されています。これも凝り性の作者らしく、その頃のカタログを探し出して納得できるまで取材した成果。


わけあって突然過去でしばらく暮らさなくてはいけなくなった俊夫を助けてくれる仕事師のカシラ一家との、心温まる交流。
未来の知識を使って慣れぬ世界でなんとか生き抜こうとする、主人公の奮闘。
このあたりを綴った文章には、中央区産まれの江戸っ子らしい粋で都会的なユーモアが感じられ読んでいて楽しい。
未来の知識を使って慣れぬ世界でなんとか生き抜こうとする、主人公の奮闘。
このあたりを綴った文章には、中央区産まれの江戸っ子らしい粋で都会的なユーモアが感じられ読んでいて楽しい。
昭和38年から過去に来ている俊夫がその時代で終戦を迎え
という誓いを果たすため、横浜中華街へ向かう…。
このくだりなどは何回読んでも思わず膝を打って、ひとりでニヤニヤしてしまいます。
という誓いを果たすため、横浜中華街へ向かう…。
このくだりなどは何回読んでも思わず膝を打って、ひとりでニヤニヤしてしまいます。
郷愁を湛えた
夭折作家の作品集
夭折作家の作品集
処女長編『マイナス・ゼロ』が、連載終了後なかなか単行本化されなかったり。
3回に渡って直木賞候補にあがりながら、いずれも受賞に至らなかったり。
出版社からの依頼で、自分の意に沿わない作品を書かなければならなかったり…。
3回に渡って直木賞候補にあがりながら、いずれも受賞に至らなかったり。
出版社からの依頼で、自分の意に沿わない作品を書かなければならなかったり…。
小説家としては不遇な時を長く過ごし、さぁこれからという1972年。
春も間近い3月の昼下がり、赤坂の路上にて。心臓発作のため広瀬正の生涯、47年でその幕を下ろすことに。
春も間近い3月の昼下がり、赤坂の路上にて。心臓発作のため広瀬正の生涯、47年でその幕を下ろすことに。
あまりにも早いその旅立ちを惜しんで、多くのSF作家たちが弔問に訪れた茅ヶ崎の広瀬家。
祭壇に安置された棺には、「タイムマシン搭乗者」と書かれた札が貼られていた…。
祭壇に安置された棺には、「タイムマシン搭乗者」と書かれた札が貼られていた…。

直木賞選定委員の中で毎回ただ一人広瀬作品を押し続けた司馬遼太郎は、『ツィス』のあとがきでこう述べています。
大正産まれで、
江戸っ子の広瀬正。
彼は高度成長期以降の日本に生きながら常に、その頃から振り返っての「古き良き東京」を愛し慈しみ続けていたのではないでしょうか。
江戸っ子の広瀬正。
彼は高度成長期以降の日本に生きながら常に、その頃から振り返っての「古き良き東京」を愛し慈しみ続けていたのではないでしょうか。
乾いて都会的な文体の中に、漂う郷愁。
そんな夭折作家の想いが凝縮された全作品をまとめた『広瀬正・小説全集』。 今でも版を重ねており、電子書籍でも読むことができます。
そんな夭折作家の想いが凝縮された全作品をまとめた『広瀬正・小説全集』。 今でも版を重ねており、電子書籍でも読むことができます。
未読の方はもちろん、既にお読みになっている方も。 この機会にひと時ゆったりと、「広瀬正ワールド」に浸ってみられてはいかがでしょう。
極上の読書体験が、きっとあなたを待っているはず。

広瀬作品『鏡の国のアリス』については
☆『猫と鏡が織りなす、ミラクル映像!』
にて。
☆『猫と鏡が織りなす、ミラクル映像!』
にて。
ほかの私的時間SF傑作選は、
☆70年の時を超える『愛の手紙』~扇治の私的時間SF傑作選その①~
☆『エヴァンゲリオン』監督が真正面から描き切る、「ウラシマ効果」SFアニメ~扇治の私的時間SF傑作選その②~
にて綴っております。
☆70年の時を超える『愛の手紙』~扇治の私的時間SF傑作選その①~
☆『エヴァンゲリオン』監督が真正面から描き切る、「ウラシマ効果」SFアニメ~扇治の私的時間SF傑作選その②~
にて綴っております。

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入船亭扇治拝
入船亭扇治拝
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八百八町の労働力を下支えした、江戸時代のハローワーク [江戸のトリビア]
新しい仕事先を求めて、
ハローワーク訪れた黒猫こまち。
係の人はちょっと困ってますけど、「食べて遊んで寝る」は確かに猫の主要業務ですからね。
ハローワーク訪れた黒猫こまち。

江戸時代の
職業斡旋業者
職業斡旋業者
現代の「ハローワーク」、筆者世代には「職業安定所」という名称もまだ耳馴染みがあります。
江戸時代にも、働き先を求める人たちに就職を斡旋する業者が存在しました。
当時幕府はこういった業者を総じて「人宿(ひとやど)」と呼称していましたが、庶民の間では落語のタイトルにもなっている「口入屋(くちいれや)」と呼ぶことが多かったそうです。
読んで字のごとく”働き口に人を入れる”が語源。
読んで字のごとく”働き口に人を入れる”が語源。
もう少し洒落た言い方で「肝煎(きもいり)」、あるいは「桂庵(けいあん)慶安・慶庵とも)」なんてのもあります。
えっ、こまちはどっちも知ってるって?
レバニラ炒めとアニメ『けいおん!』、似てるようでまるで違ってるよ。

世界で最初に人口100万を突破した江戸の街。
その市中と街道から江戸への入り口あたりには、合わせて全盛期で390軒の口入業者が店を構えていました。
その市中と街道から江戸への入り口あたりには、合わせて全盛期で390軒の口入業者が店を構えていました。
中でも有名な口入屋の一つが、落語『百川』冒頭にその名が出てくる日本橋・葭町の「ちづか屋」。
大きな店の前には、江戸での働き先を探す人々が大勢集まっています。 右上に「葭町の慶庵」と書いてありますね。

おいしい商売・口入屋、
でも責任も重大だった
でも責任も重大だった
口入屋の店先に掲げられた、「手代二名」「船頭二名」などといった”求人情報”。
それを見て中へ入った人が、口入屋の番頭と交渉しているところ。
いかにもよく喋りそうな女性に、番頭の方が押され気味。


話がまとまり「口入札」と「請状(うけじょう」をもらった人たちは、晴れて奉公先へと派遣されていきます。

口入屋はもちろんボランティアではありませんから、就職を世話した人たちから給金の8分~1割5分程度を斡旋料として受け取ります。
さらに雇い主からも、
それなりの謝礼金や仲介料がもらえた。
さらに雇い主からも、
それなりの謝礼金や仲介料がもらえた。
ほとんど元手入らずで始められて儲かるいい商売に思えますが、なにしろ扱っているのが生身の人間ですから。
口をきいた奉公人が実は大変に心邪まな奴で、店の金に手をつけて逐電…。なんてことがあると、身元保証人でもある口入屋が賠償しなくてはいけない。
口をきいた奉公人が実は大変に心邪まな奴で、店の金に手をつけて逐電…。なんてことがあると、身元保証人でもある口入屋が賠償しなくてはいけない。
反対に奉公先の待遇があまりにも良くない、パワハラセクハラが横行していると奉公人から苦情が出た場合。心ある口入屋は雇い主と交渉して、奉公人のために示談金を勝ち取ってくれたり。
人を見る目と面倒見の良さを武器に商いをする口入屋は、その儲けに比例するだけの大きな責任も負っていたのです。
元々の口入屋業務
武家への人材派遣
武家への人材派遣
江戸初期の口入屋での主な業務は、
でした。
でした。
徳川泰平の世が続くにつれ武家階級の実質的な社会的ステータスはどんどん下がり、経済的に困窮する武士が増えていきます。
本来なら家の格に合っただけの家来を常時抱えていなければいけないのに、そんな余裕がない大名や旗本たちが全国に溢れていた時代。
だから表向きは幕府から指定されただけの人数を抱えていることにしてあるのですが、軽輩の多くは員数合わせの実在しない”幽霊家来”。
そういう帳面上の操作で苦しい経済状況をなんとか乗り切ろうと、侍たちも涙ぐましい努力をしていたのですね。
そういう帳面上の操作で苦しい経済状況をなんとか乗り切ろうと、侍たちも涙ぐましい努力をしていたのですね。

普段は最低減の家来衆だけで生活し、参勤交代・公用での登城・城や屋敷での対外行事などの際だけ臨時に人数を増員し体裁を繕う。
映画『超高速参勤交代』や浅田次郎の小説『一路』などでは、こういった武家の家来やり繰りの様子がわかりやすく描かれています。
映画『超高速参勤交代』や浅田次郎の小説『一路』などでは、こういった武家の家来やり繰りの様子がわかりやすく描かれています。

参勤交代の人員構成は政令により厳密に決められており、予算と相談しながら家来衆を揃えていくわけですが…。
行列の先に立つ槍持ち奴は一番目立つ”参勤交代の顔”ですから、ここは少々無理しても姿かたちが絵になる人材を雇うよう重役たちも苦労して算段するのが常でした。

町人社会での
短期労働者も扱うように
短期労働者も扱うように
江戸時代も中期に入り町人階級がますます経済的に力を増してくるに従い、豊かで働き口が多い将軍様のお膝元・江戸の街へ他国から出稼ぎに来る人々の数も多くなってきました。
労働力が増えるのは結構なことですが、太田裕美さんの名曲『木綿のハンカチーフ』のように。
故郷より花のお江戸の方がいいと定住する人ばかりになるのも、また幕府は困る。
人口増加による治安や衛生状態の悪化が懸念されますし、本来なら諸国地元で働くべき人材が江戸に流出して生産性低下→年貢米の減少はもっと避けたい事態。

人口増加による治安や衛生状態の悪化が懸念されますし、本来なら諸国地元で働くべき人材が江戸に流出して生産性低下→年貢米の減少はもっと避けたい事態。

そこで幕府がとった対策が、「出替(でがわり)奉公」という制度。
という、現代の就労ビザよりもかなり厳しい規制です。
後には「他国から江戸への移住は原則として認めない」というお触れも出され、長期に江戸で働きたい人は人別帳に名前が記載されない「無宿者」になるリスクも負わされました。

出替によって頻繁に入れ替わる、
下働き労働力。
奉公先を求める人と雇い主の橋渡しを効率的に進めるため、口入屋で斡旋する件数は次第に武家奉公より町人社会でのそれが多くなっていきます。
下働き労働力。
奉公先を求める人と雇い主の橋渡しを効率的に進めるため、口入屋で斡旋する件数は次第に武家奉公より町人社会でのそれが多くなっていきます。
そして短期契約の季節労働者である出替奉公人の仕事の内容は、準終身雇用の「年季奉公」とは一線を画す単純作業が主でした。
商家の場合だと、小僧や手代がやるような商いに関わることは一切やらせてもらえません。
商家の場合だと、小僧や手代がやるような商いに関わることは一切やらせてもらえません。
ええっ、
こんな仕事も斡旋?!
こんな仕事も斡旋?!
男性なら力仕事・使いっ走りなど、女性は針仕事や子守・乳母などなど、そして両者共通の下働きさまざま。
いろんな仕事を世話していた街の口入屋、出稼ぎ人の出替奉公のほか変わり種のこんな職業も守備範囲でした。
まず、こちら。
賭場や廓などの、用心棒。
腕のたつ浪人者だったら、いい給金で雇ってもらえたそうです。
まず、こちら。

腕のたつ浪人者だったら、いい給金で雇ってもらえたそうです。
そして現代の倫理感覚からは考えられない、こんなビジネスも。
お囲い者・お妾さん。

歌川豊国・画の『絵本時世粧』中の一幅。湯屋の板塀に貼られた口入屋のビラの前で立ち話している、左側の帖に描かれた女性たち。
向かって右から
「親身に面倒見るから、うちへ来てみないかい」とやり手の女将、ご婦人たちを勧誘しているのでしょうか。
向かって右から
「親身に面倒見るから、うちへ来てみないかい」とやり手の女将、ご婦人たちを勧誘しているのでしょうか。
男女比5:3と圧倒的に女性が少なかった江戸の街。
口入屋を介しお金を払ってまでご婦人と一緒に過ごしたいという男どもが一定数いたからこそ、成立した”職業”と言えるでしょう。
口入屋を介しお金を払ってまでご婦人と一緒に過ごしたいという男どもが一定数いたからこそ、成立した”職業”と言えるでしょう。
一期一会の
奉公も多かった
奉公も多かった
なんだか話が生臭い方へ行ってしまったので、おしまいにちょっとほっこりするような川柳を一句ご紹介。
一年間の奉公が明けて、
国元へ帰る乳母。
ともに過ごした時を懐かしみながら、すやすや眠る子どもに胸の中でお別れの挨拶を。
そんな光景が目に浮かびます。
国元へ帰る乳母。
ともに過ごした時を懐かしみながら、すやすや眠る子どもに胸の中でお別れの挨拶を。
そんな光景が目に浮かびます。

お互いに限られた期間の奉公だからこそ、かえって凝縮された濃密な時を過ごせるということも多かったであろう江戸の出替奉公。
その仲立ちをした口入屋。
その仲立ちをした口入屋。
昔も今も人と人を結ぶ縁というものの大切さ、本稿書いていてあらためて実感した次第です。

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
入船亭扇治拝
タグ:江戸豆知識 落語 猫