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秋の雑俳落語会、『笠附 百人一首上五取り』作品一挙公開! [web雑俳]


古今亭駒子師主催『天高く雑俳の秋スピリッツ~江戸言葉遊び雑俳と落語の会~』。
筆者が出演する10月8日(土)夜の部の兼題は、小倉百人一首を扱ったもの。
白熱のかるた大会.jpg
百人一首から好きな歌を選び、その上五の後に自分で新しい七五をつけ句を詠む『笠附』遊び。

投句作品、一挙公開!

9月末日締切までに集まった句は、噺家・お客様作合わせて79句
いずれ劣らぬ名句秀句、今回は記事内にて一挙公開!

2022年『秋スピリッツ』その⑥
兼題:笠附 小倉百人一首上五取り 五七五体
※行頭の数字は、作品一覧「地巻」での通し番号。
※少しでも見やすいように、10句ごとに区切りを入れております。



1 あさぼらけもうひと眠りぬくぬくと
2 あしびきの山捨て里住む猿や熊
3 天津風乙女卵に掛ける餡
4 あらし吹くオイチョもカブも吹き飛んで
5 あらし吹く過去最大は聞きあきた
6 あらし吹く夫婦の契いつの日か
7 ありあけのハーバー土産に帰省する
8 いにしえの名人見たと威張る客
9 いにしへのスリムな身体何処へやら
10 きみがため思い強すぎモラハラに



11 きりぎりす鳴け恋人に逢えるまで
12 心にもない世辞ならべ渡る娑婆
13 このたびはないない尽くし無計画
14 このたびは旅行支援は使えるの?
15 これやこのあそこのあれで解る仲
16 これやこの並んでまでも買う価値が
17 さびしさに顔出す店も早仕舞い
18 しのぶれど貴方はいつも背を向けて
19 しのぶれど前座の私語に腹立ちて
20 しのぶれど腹が出にけり5キロ増

こま正面アイコン笑い.jpg

21 ながらへばゴルゴこち亀読破する
22 ひさかたのギャラは振り込み三月先
23 久方の敬老会は延期なり
24 ひさかたの寄席の出番はサラ交互
25 ひさかたの声に安堵の自粛中
26 ひさかたの噺に楽屋やかましく
27 吹くからに海猫鳴き群来は春を呼ぶ
28 みかのはらユカの太ももリカの腕
29 もろともに客を呼べよと二人会
30 わが庵はしかぞ住みたる四畳半



31 わが袖はないので振れぬ失業中
32 わが袖は羽織長めと春團治
33 わが袖は広く歓迎付け届け
34 侘びぬればフォーカスフラッシュ文春砲
35 奥山に越しても仕事テレワーク
36 奥山に父の秘密があるらしい
37 花の色は遺伝子組み換え自在なり
38 君がためいつもそう言い叱る母
39 君がためその一言に騙されて
40 君がためマイホーム買いやせ細る

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41 君がため禁煙決めた妻出産
42 君がため若大将といつまでも
43 君がため大きなお世話ダメ上司
44 契りきな靴下丸めて脱がないで
45 古えの噺で笑う若い衆
46 高砂に娘と並ぶ婿憎し
47 今はただコロナ収束待つばかり
48 今はただ我慢の時と早三年
49 今はただ耐えて明るい未来待つ
50 今来むとケータイ掛ける立前座



51 今来むと円弥の声の懐かしき
52 今来むと尺間違えてサゲたネタ
53 思ひわびさても夜は明く腹は減る
54 秋風に首筋寒しプロ野球
55 住の江の競艇場で会う真打
56 春すぎて衣替えヤでまだセーター
57 心にもないのは知りつ切りきれず
58 心にも無いこと言っても安月給
59 心にも無きこと綴る起請文
60 世の中よ少し慌てていないかい

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61 世の中よ値上げもいいが小遣いも
62 千早ふる髪コテ効かず立つ寝癖
63 朝ぼらけオールの辛さで知る老化
64 朝ぼらけ始発で帰る深夜寄席
65 朝ぼらけ振られて帰るまぬけ面
66 長らへばそれも立派な芸のうち
67 天つ風どうかそんなに猛らずに
68 天の原街の灯りにかすみけり
69 天の原南西を見て母偲ぶ
70 天の原二重の虹がロンドンに



71 忍ぶれど彼にバレちゃうサプライズ
72 八重むぐら空家対策思い捨て
73 八重葎摘んだ空き地に建つ億ション
74 八重葎繁る妾宅来ぬ旦那
75 風いたみのべつ気になる尿酸値
76 風そよぐブラと思たらマスクでした
77 風そよぐ向きも強さも手元にて
78 風そよぐ香りはカレーゆうげ時
79 忘らるるLINE返信待つ辛さ

ひらがな表記を
活かした詠み方も

こうして人の作品を見てみると、自分も含めてですが
現代でも意味が通じやすい上五の歌を題材にした
句が多いのに気づきます。
その方が後に続く七五をつけやすいですから、当然と言えば当然。

落語の題名にもなっている『千早ふる』などは噺家だったら詠んでみたいのですが、今は使わない枕ことばなのでかなり工夫しないと意味の通った句にまとめられない。
ちはやふる.jpg

だから「心にも」「君がため」といったところを使った句が、どうしても多くなるのです。
※もちろん、それがいけないわけというわけではありません。あまり人が使わない上五をうまく題材にすると高得点が狙えるかも、ということ。

たとえば「筑波嶺の」「浅茅生の」とかの上五は、今回集まった79句では使われませんでした。
そんな中で今回私が(おっ、面白いな)と目を止めた句の一つが、28番。
みかのはらユカの太ももリカの腕

なんだか、キャバクラでセクハラ親父がおだを上げてるような句ですが…。
実はこれ、かなり雑俳としての工夫が凝らされているのです。

この上五は漢字だと「甕原」「三香原」などと表記される、京都の地名。
この歌に限りませんが、昔の和歌は詠まれた時には31文字全てひらがなで書かれていたはず。
それに藤原定家以下後世の人が自分のセンスで漢字を混ぜていった結果が、今に伝わる百人一首の表記。

その”本来はひらがな表記である”ということを利用して詠んだのが、28番の句。
ちゃんと雑俳の約束通り「みかのはら」とひらがな表記したうえで、続く七五で「ミカの腹」を連想させているところがうまいと思います。

よろしければ
会場でお会いしましょう!

このように和歌・俳句とはまた違う日本語の深みと面白さを楽しめる、江戸言葉遊び・雑俳。

上記の作品一覧をご覧になって(この句の元になった和歌って、どんなのだっけ?)なんて調べていただくのも一興。
百人一首今はただ.jpg

そしてもしご都合よろしければ、実際にご来場いただいて噺家たちと遊んでみませんか?
ご希望の方は当日ご自分でお好みの句を「天地人」に選んでいただいたり、新しく出る席題で句を詠んでみたり。
落語4席と互選会「開き」でたっぷりお楽しみいただけるよう、楽屋一同も精一杯務めます!

会の詳細は
☆『芸術の秋、落語と雑俳で噺家たちと楽しく遊ぼう!
ご確認のうえ、

kokontei.chiyorin@gmail.com
古今亭駒子までお申込みを。

当日互選の結果は、また当ブログにて発表予定。
どんどん広がる雑俳の世界、皆様のご参加心よりお待ち申し上げております!

※そのほかの『秋スピリッツ』シリーズの作品一覧は、
☆『江戸っ子たちの心持ちになって、こんな『無駄口』で遊んでみよう!
☆『雑俳のラスボス『物者附』あなたはこの「裏」がわかるか?
にてご紹介しております。

蔦飾り線.png

ご精読ありがとうございます。 ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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