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国際舞台での”痛い一球”が、爽やかな感動を産んだ! [日々雑感]


2023年3月東京ドームで行われた、第5回WBC(ワールド・ベースボール・クラシック)1次リーグ・プールB国際大会。
多数のメジャーリーガーが参加し、各国とも”大会史上最強のドリームチーム”を編成。日本でも二刀流で参戦の大谷翔平選手始め錚々たるメンバーが名を連ね、野球にさほど興味がない方でもワクワクする陣容となっています。

テレビ地上波で放送された初戦からの4試合は、いずれも平均視聴率40%超え!これは近年のNHK『紅白歌合戦』を、はるかに上回る数字。
野球盤でWBC.jpg

このように大勢が注目するWBC1次戦では、名プレーの数々とともに「二つのデッドボール」が日本中・いや世界中の人々の記憶に刻み込まれることになりました。

既に多くの記事に取り上げられている題材ですが、本稿では吞気ブログオリジナルイラストでこの印象的なシーンを振り返ります。

不穏な空気を
ジョークで一掃

デッドボール=死球。
当てられた方はもちろん痛いし、当てた投手も精神的に動揺する。
それだけに細心の注意を払ってピッチャーは投球し、打者は危険なコースに来た球は極力避けるのですが、お互い人間だから当たってしまうこともある。
こまちデッドボール.jpg

3月10日WBC日本対韓国戦・6回の裏。
日本代表ラーズ・ヌートバー選手が、韓国のキム・ユンシク投手から背中にデッドボールを受けました。
上体を捻って避けた後、バットを投げ捨てマウンドを凄い形相で睨みつけたヌートバー選手。球場内が一時不穏な空気に。

これに対し「現役メジャー選手が国際大会でああいう態度をとるのは、いかがなものか」という意見も多くありましたし、リアルタイムで観戦していた私も(あそこまで恐い目しなくてもいいんじゃないのかなー)と思ったりもしたのですが…。

背中を襲うデッドボールは「故意死球」の可能性があることから、メジャーリーガーたちはあのコースに外れる球にかなり敏感なのだそうです。
また、1戦目から気迫溢れるプレーで日本代表チームを鼓舞してきた”熱い漢(おとこ)”ヌートバー選手。「母が産まれた国の期待を背負って戦っているんだ!」という想いも相まっての、”ひと睨み”だったのではないでしょうか。

そしてこれだけだったらただの”ちょっと後味の良くないデッドボール”で済んでしまっていたのを、ヌートバー選手は自らの絶妙なジョークで一件落着させています。
試合終了後のヒーローインタビューでの
「ちょうど凝っているところに当たって、背中がほぐれて良かった」
との粋なコメント。

たちまちSNS上には「タツジ(ヌートバー選手のミドルネーム)最高!」との賛辞が溢れ、私も画面に向かって(うまいねー、座布団1枚!)と思わず拍手。
亡くなった父が、先がとれた肩叩き棒に軟式野球ボールをくっつけて使っていたのを思い出して、一人クスクス笑いも。
ボールで肩たたき.jpg

万雷の拍手
死球後の爽やかプレー

もう一つのデッドボールは、3月11日の日本対チェコ戦時。
4回に侍ジャパン先発・佐々木朗希投手の投じた球が、ウィリー・エスカラ選手の右膝を直撃。時速162kmの剛速球を受けたエスカラ選手はその場で仰向けに倒れしばし悶絶。
バッターボックスにはチェコチームのトレーナーとコーチ陣が、帽子をとって謝罪した後の佐々木投手が立つマウンドにはチームメイトがそれぞれ集まり、エスカラ選手の状態を見守ります。

球場内が緊迫した空気に包まれ30秒ほど経過後、息を整えたエスカラ選手は立ち上がりその場で足の様子を確認し、ゆっくり一塁へ。
それを見て一塁へ向かった日本の山川穂高選手も帽子をとって謝罪の言葉をかけると、エスカラ選手は相手の腰に手を回し右膝をポンと叩き「野球だからよくあること、大丈夫だいじょうぶ」とアピール。

さらにいったん一塁ベースを踏んでから、ファウルグラウンドをライトスタンド方向へ小走りで向かったエスカラ選手。クルっと振り向くと今度は一塁へ向かって全力疾走
東京ドーム内にはひときわ大きな拍手と歓声が沸き起こり、試合は何事もなく再開されたのでした。
だいじょうぶ全力疾走.jpg

「チェコの選手って、なんて紳士的!」「心配している佐々木投手のことも気遣った、スポーツマンシップ溢れるプレー!」とこちらもSNSでは賞賛の嵐。
一夜にして日本中にチェコチームの大ファンが増え、翌日の対韓国選では多くの日本人観客がチェコ選手たちに大きな声援を送ったそうです。

こま正面アイコン基本形.jpg

そして3月13日。
チェコチームの宿舎を「コアラのマーチ」などロッテのお菓子がいっぱい入った袋を抱えた佐々木投手が訪れ、帰国前のエスカラ選手に会ってあらためてデッドボールの謝罪を。快く受け入れたエスカラ選手は佐々木投手にボールへのサインを求め、二人で記念のツーショットを撮り再会を期すのでした。
※佐々木朗希投手自身のインスタグラム掲載の画像は
https://www.nikkansports.com/baseball/samurai/wbc2023/news/202303130000746.html
など各種ネットニュースにも引用されています。

相手への気遣いが
デッドボールも美談に

2011年3月11日の東日本大震災でご家族を失っている佐々木朗希投手が、12年後の同じ日に国際大会のマウンドに立つ。当人にはとても大きくて重い意味があるこの登板での、相手打者へのデッドボール。
中継を観ていた私は(野球の神様、なんて残酷なことを!)と内心悲鳴をあげましたが、その神様はこちらの思う以上の結末を用意してくれていたのです。

もしエスカラ選手が相手の謝罪を受け入れないまま試合が進んでいたら、どうなっていたでしょうか。

今なお震災の爪痕残る東北・地元の方々に希望と力を与えたいと願う佐々木投手の胸に、試合に勝ったとしても拭い切れない一抹の翳りが残ったに違いありません。
しかしエスカラ選手の神対応により、死球の悲劇は「WBC史上に残るスポーツ美談」となったと言えるのでは。ちょっとおおげさかもしれませんが、私はそう感じました。

☆お菓子でパンパンになったレジ袋を手に下げて、佐々木投手と二人でファインダーに収まるエスカラ選手。
☆ヒーローインタビューで「さっきはアメリカの癖でつい睨んじゃったけど、気にしてないからね!」とのニュアンス込めたジョークを飛ばすヌートバー選手。
3人の笑顔は、まさにキラキラ輝く野球少年のそれ。

こま正面アイコン笑い.jpg

相手への気遣いで、デッドボールすら爽やかなエピソードにできる。
スポーツマンシップって素敵だなぁ。

えっ、ここまで読んできて、こまちはデッドボールの新しいルールを考えたって?
当ててみろ.jpg
なるほど、ここに当たったら1塁へ行くだけでなくおやつのCIAOちゅ~るもらえるんだね。

「死球」ではなくおやつが「支給」されるこまちルール、WBCでも採用されるでしょうか。
ボールの罫線.jpg

お開きまでお付き合いくださいまして、まことにありがとうございます。他記事へのご訪問、お待ち申し上げております。
入船亭扇治拝

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