「入浴料500円時代」到来に想う、前座時代銭湯通いのひと苦労エピソード [日々雑感]
お風呂道具を持って、近所の銭湯へやって来た黒猫こまち。
2022年夏より、東京都内の入浴料金は500円へと値上がり。

SF的発想だった
”ラーメン500円”時代
”ラーメン500円”時代
1973年(昭和48年)。
中学生の従兄が見せてくれた学習雑誌の中に、『今から50年後の日本人の暮らしはどうなっているか?』という特集記事がありました。
中学生の従兄が見せてくれた学習雑誌の中に、『今から50年後の日本人の暮らしはどうなっているか?』という特集記事がありました。
「テレビ電話の普及」「掃除ロボットの出現」といったけっこう実現しそうに思えるものから、「月への旅行・移住が日常化している」という夢物語的な話題まで。
様々な未来予測がイラストとともに掲載されており、当時小学5年生だった私はとても興味深く読んだものです。
様々な未来予測がイラストとともに掲載されており、当時小学5年生だった私はとても興味深く読んだものです。
そんな予測の中で比較的SF要素が強い=実現度が低い方の未来としてあげられていたのが、
というもの。
というもの。
多くのラーメン専門店の価格設定が600円~700円台・トッピングや特殊なスープを注文すると1000円以上のラーメンもある現代からすると、信じられない話ですが…。
私がこの世に生を受けた1962年(昭和37年)、ラーメン一杯は平均48.5円だったそうです。
私がこの世に生を受けた1962年(昭和37年)、ラーメン一杯は平均48.5円だったそうです。
50円玉出して、
お釣りが来たあの頃。
お釣りが来たあの頃。

昭和は、遠くなりにけり。
燃料・原材料高騰が
銭湯の料金も押し上げる
銭湯の料金も押し上げる
前項でご紹介した「ラーメン500円の未来」記事は、折りからの石油ショックにからめて〈燃料・原材料の価格上昇が、製品の値段を押し上げる〉という仕組みを中学生にもわかりやすく解説したもの。
漫画雑誌が半分ほどの厚みになり、高いプラモデルでも部品が減って箱の中身がスカスカだった石油ショック直撃時の日本。

あれから半世紀近く経って、また私たちの暮らしは急激な物価高に直面することに。
コロナ禍・露のウクライナ侵攻・作柄不良・円安などの要因で燃料・原材料・輸送のコストが上がったことによる、あまり健全ではない物価上昇。
コロナ禍・露のウクライナ侵攻・作柄不良・円安などの要因で燃料・原材料・輸送のコストが上がったことによる、あまり健全ではない物価上昇。
その影響はついに、内風呂が無い方の味方にして庶民の憩いの場・銭湯にも及ぶことになりました。
2022年7月~8月に従来の大人480円から、東京の入浴料金はワンコイン500円に値上がりすることが決定。
2022年7月~8月に従来の大人480円から、東京の入浴料金はワンコイン500円に値上がりすることが決定。
私が上京した1981年(昭和56年)には220円でしたから、500円という価格にはやはり時代を感じます。
噺家前座時代
苦労した銭湯の想い出
苦労した銭湯の想い出
本記事のために昔の入浴料金を調べていて私の脳裏に甦ってきたのは、(前座時代けっこう苦労して銭湯に通ったなー)という記憶。

あの頃寄席夜の部で働きその後トリの打ち上げなどにもお供すると、アパートに帰ってくるのは深夜0時近くということは日常茶飯事。
楽屋で先輩たちと間近に接するのが前座ですから、できるだけ身ぎれいにしておきたい。
夏場で風呂に入れない日が2日続いたりすると身体を濡れタオルで拭くくらいではおっつきませんので、仕舞い湯ギリギリに銭湯に飛び込むなんてこともよくありました。
夏場で風呂に入れない日が2日続いたりすると身体を濡れタオルで拭くくらいではおっつきませんので、仕舞い湯ギリギリに銭湯に飛び込むなんてこともよくありました。
もちろん遅い時間に来て申し訳ないと思いますから、番台に座っているおじさんに謝っておきます。
気のいいおじさんの「時間気にせずゆっくりね」との言葉に頭を下げ、手早く板の間で洋服を脱ぎ洗い場に入る私。

身体をきれいにしてから、湯船に肩までつかる。
狭い楽屋で身を縮めて働き固まってしまった全身が、芯からじわ~っとほぐれて。
狭い楽屋で身を縮めて働き固まってしまった全身が、芯からじわ~っとほぐれて。
ああ、
極楽ごくらく。
湯船でしばし目を閉じていると、さっきまで番台にいたおじさんが洗い場に入ってきました。
極楽ごくらく。
湯船でしばし目を閉じていると、さっきまで番台にいたおじさんが洗い場に入ってきました。
早くあがれという催促ではなく、あべこべに「こっちはできるとこから掃除始めるけど、まだゆっくりしてていいよ」と言ってはくれるのですが…。
銭湯というのは朝早く準備してから夜遅くまで、本当に重労働なのだそうです。
おじさんの方も「ゆっくり」と口で言いながら、本心はできるだけ早く最後のお客に帰ってもらいたいというのが正直なところ。
おじさんの方も「ゆっくり」と口で言いながら、本心はできるだけ早く最後のお客に帰ってもらいたいというのが正直なところ。
その気持ちが表れているのが、おじさんの掃除方法。
洗い場の風呂桶を、私が入っている湯船にどんどん投げ込んでくるのです!

もちろん私に当たらないように気をつけてですが、みるみるうちに湯船の中はプカプカ浮かぶ桶でいっぱいに。
(そろそろ、あがってくんない?)というおじさんからの無言のプレッシャー。

それは痛いほど感じるし早くおじさんを解放してもあげたいんだけれど、こちらも同じ入浴料金払うんなら少しでも長くお湯につかっていたいですから。
(遅くまでごめんなさいね)胸のうちで手を合わせながら、おじさんの方を見ないふりして口元までお湯に潜り桶の陰に顔を隠す私。
桶を投げ込んで空いた洗い場の床を、これ見よがしにデッキブラシでごしごしやっているおじさん。
桶を投げ込んで空いた洗い場の床を、これ見よがしにデッキブラシでごしごしやっているおじさん。
湯船に浮かぶ桶を挟んで、長く入っていたい私と早くあがってもらいたいおじさんとの。
息詰まる神経戦の幕が、
ここに切って落とされた!
息詰まる神経戦の幕が、
ここに切って落とされた!

そう、これが後の世に語り継がれる 「桶狭間の戦い」。
おあとがよろしいようで…。

さぁ、今回も無事記事を完成させることができました。
せっかく銭湯のことを書いたんだから、値上がり前に久しぶりで近所のお湯に行ってみるか。
こまちも、一緒に連れてってあげよう。

やったー!
お湯からあがったら、もちろんあれ買ってくれるよね?
※この記事を書いていて思い出した、銭湯以外のうち風呂無き人々の味方である”あの施設”について
で綴っております。そちらもぜひ、合わせてお読みください。
お湯からあがったら、もちろんあれ買ってくれるよね?

※この記事を書いていて思い出した、銭湯以外のうち風呂無き人々の味方である”あの施設”について
で綴っております。そちらもぜひ、合わせてお読みください。

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治
入船亭扇治
タグ:猫 落語