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連歌のためのイメージトレーニング!雑俳「脇起こし」互選記録 [web雑俳]


2023年2月12日に開催された、古今亭駒子師プロデュースの江戸言葉遊び雑俳落語会『巻いてみようスピリッツ』。

今回の兼題は「脇起こし(わきおこし)」
複数人が交互に五七五と七七を詠んで繋げていく「連歌」、その最初の部分
①発句(五七五)
②脇句(七七)
③第三(五七五)
で遊ぶという趣向。

連歌をする貴族.jpg
※連歌で遊ぶ平安時代の貴族(と猫)。

18句・36句・規模が大きくなると100句で一巻完結というのもある連歌ですが、雑俳の遊びとしては「①からの連想で詠まれた②に選者が効きとしての③を付ける」ところまでになります。

また正式な連歌・歌仙だと
・①は体言止め。
・①と②の季節を揃える。
・③は「~し」「~て」「~らむ」「~つつ」「~もなし」の留め字で終わる。
等の約束事があるそうですが、今回は参加者全員がそれを理解しておらず、縛りのない「自由連句」として開き(互選会)を行うことになりました。

投句していない筆者も駒子師から声をかけてもらい開きに参加してきましたので、そこで読み上げられた篝火舎(柳家)小ゑん師匠による本巻(宗匠選)を以下にご紹介いたします。

今回発句として使ったのは    
☆手折らるる人に薫るや梅の花(加賀千代女)
☆夜桜や上野を通る戻り道(正岡子規)
の二句。

小ゑん宗匠は投句作から梅と桜それぞれで「天地人」「雲隠し」を選び、「自句」も一句ずつ添えてくれました。

篝火舎小ゑん選
「梅の花」編

※各句の行頭数字は投句作一覧「地巻」での通し番号、末尾カッコ内は作者名。

発句
手折らるる人に薫るや梅の花
梅手折る.jpg



人の位
効き 双眼鏡覗き小さんを思いつつ
27.春を告げるも開かない口(本屋)
~梅の蜜を吸いに来るメジロはウグイスのようにくちばしを開けて鳴くわけではありませんが、春の風物詩の一つ。その鳥を観察しながら、自らの師五代目小さん(住んでいた所から「目白」と呼ばれる)を偲んでいる小ゑん宗匠。~



地の位
効き 落研の粋な誘いに乗せられて
21.合格祈願なでた牛の背(うさぎりんご) 



天の位
効き 親猫の教え小猫は仰ぎみて
26.襲名披露告げる鶯(なかよし)
~2023年3月から盛大に行われる、小猫改め五代目江戸家猫八襲名披露。ずらり並んだお祝いの花が目に浮かぶようです。~

こま正面アイコン基本形.jpg



雲隠し
効き 生来の冒険心に火が付いて
11.闇を破りし恋猫の声(うさぎりんご)



自句
野良の春眠覚ます移り香

篝火舎小ゑん選
「夜桜」編

発句
夜桜や上野を通る戻り道
花より団子で帰り道.jpg



人の位
効き 社長室ソウルへ転勤告げられて
60.正楽に出す題はお花見(Fe-man)
※元句は「紙切りお題花見にしよう」。



地の位
効き 遠距離の恋の成就を祈りつつ
76.弁天堂に朧なる月(うさぎりんご)



天の位
効き 里帰り子らは蛇踊り魅せられて
81.夜行の時刻待った春宵(小せん)
※元句の下五は「古(いにしえ)」。
~懐かしのブルートレイン「さくら」号で長崎へ家族旅行…と解釈した、鉄道ファンである宗匠らしい効き。~



雲隠し
効き ガールズバー恐いメンズに凄まれて
71.湯島で引かれ寄る花ざかり(小せん)
~ほろ酔い加減の花見帰り、ちょっと色気を出してその手の店に入ったら…。酒も桜も人の心を惑わせ正常な判断力を奪いますから、皆様もじゅうぶんご注意ください。~



自句
花の嵐をよぎる流星

僭越ながら 
ブログ主の選も

さすがは宗匠、季無しの作品にもうまく「斧(ふ)を入れる=手直しをする」ひと手間をかけたうえで、効きを付けてありますね。

その本巻のあとでお目汚しでもございましょうが、せっかく開きに参加したので不肖・入船亭扇治の選も続けてご披露させていただきます。

【扇仮名女選】

客の一
効き 風流と色気は抜きと食しつつ
30.匂いおこせよソース焼きそば(なかよし)

客の二
効き 定期券自由自在に下車をして
64.松屋で下見買うは吉池(なかよし)
~御徒町駅前にある吉池デパートの食品売り場は、昔から庶民価格
作者の方は吉池のそばにある「松坂屋」のつもりで間違って詠まれたようですが、私としては銀座の「松屋」から上野まで足を延ばして…というのがかえって面白味があると思い採らせていただきました。~

客の三
効き 子ら集い賑わう屋台日を浴びて
57.好天祈るテキ屋親分(駒子)

客の四
効き それぞれの思い車窓に灯るらむ
82.旅立つ君へ汽笛ひと声(うさぎりんご)
~『銀河鉄道999』の味わいですね。~

客の五
効き 若き日の惑い今では埋み火に
11.闇を破りし恋猫の声(うさぎりんご)
~これはちゃんと季語が入って一つの世界を表していますし、なにより「猫」が入っていたら筆者としては採らせていただかない手はありません。~

こま正面アイコン笑い.jpg



人の位
効き 朧月寄席帰り客照らしつつ
58.散り散りの背に響く追い出し(本屋)



地の位
効き 光射し幟上がるや晴れの日に
26.襲名披露告げる鶯(なかよし)



天の位
効き 紙切りの注文声も華やぎて
33.春一番にマスク解禁(なかよし)
※元句はの上五は「芳しき風」
~長かったマスク生活も、2023年3月半ばをもってひと区切り。寄席のお客席からかかる声も、いっそう賑やかになることでしょう。~
紙切り注文.jpg



雲隠し
効き 薄紅の褥で愛を交わしつつ
84.絨毯敷いた春の長雨(張子の猫)



自句
梅 青さ鼻つく太きアスパラ
~雅な梅の花に対して、ぐっと生活感あふれる野菜の香り。でもどちらも、春を告げるかぐわしきものであるなぁ…なんて気持ちで捻った拙吟。~

いつかはやりたい 
連歌・歌仙

雑俳は連歌を嗜むためのお稽古という側面があり、最終的には大勢の詠み手で歌仙を巻けるようになるのが理想だそうです。

もちろん筆者はまだまだとてもその域ではありませんが、式目(ルール)にのっとり気の合った者同士のんびり五七五七七を連ねていくのは、とても楽しそう。
いつか実現することを夢見て、江戸言葉遊びをこれからも続けていきたいと思います。

考えるアイコン.jpg

※『巻いてみようスピリッツ』投句作一覧は、
https://drive.google.com/file/d/12ZXsBwz24HpWo6ZfiUvlJlXU3VZcb8dP/view?usp=sharing
でご覧いただけます。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます 。よろしければまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

タグ:雑俳 落語
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