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「数字縛り川柳」ブログ主の互選と拙吟 [web雑俳]


☆『楽しい川柳で、2022年暮れをのんびり過ごそう!
で公開いたしました、師走の雑俳落語会に集まった作品93句。
先日その互選会『開き』が行われましたので、筆者の選と拙吟をご披露いたします。

まずは、 筆者選ご披露

2022年師走『柚子の香スピリッツ』
兼題「川柳据字附 中七数字冠り」
扇仮名女 選

客の一
効き 若い自分に言ってやりたい
18.あの人に一筋だった何でだろ
馬耳東風

「若気の至り」「恋は盲目」…。
あんな夢中になっていた相手もひと時の熱が冷めると、そんな言葉とともに苦笑する想い出に。



客の二
効き なぜこの時期にと嘆く毎年
60.台風と三連休の仲の良さ
馬耳東風

台風シーズンにあたってしまっている、わが国秋の連休。
台風と三連休.jpg
今さら変えようがないので、せめて6月の梅雨入り前に休日作ってくんないかなぁ。



客の三
効き 人生半ばが身に沁みる夜
23.どうしよう一晩じっとの冬の蠅
なかよし

おそらくこの羽根が生えた小さな生き物は、冬を越すことはできないでしょう。
「やれ打つな蠅が手を擦る足を擦る」に通じる秀句だと思います。



客の四
効き かごに入れたる街の歳時記
21.スーパーで二十四節気知る今日日
うさぎりんご

季節の移ろいは、こんな人の営みを通じても知ることができる。
スーパーで冬至.jpg
歳時記を繰るようなつもりで店頭を眺めると、スーパーでの買い物がより楽しくなるかも。



客の五
効き ドジョウは痩せて煮詰まりし汁
34.映画では三部作だと尻すぼみ
一琴

”柳の下にドジョウは三匹いる”というのは、興行の世界などで昔から言われていることですが…。
続編を重ねるに従って息切れしてくる作品も、枚挙にいとまがありません。



人の位
効き 人間だものおまけ一回
46.仕方ない四度目許す生き仏
金八

本家の仏様よりも一回多く許してくれる、心の広い生き仏。
ありがたい猫仏様.jpg

人間なんだから間違いはあるさお互いさまだよという気持ちが「仕方ない」という表現になり、諧謔味がよく出ていると思い抜かせていただきました。



地の位
効き 代わりに行ってのギャグも定番
22.トイレすら億劫になるイン炬燵
張子の猫

(炬燵やぐらしょったままでトイレに行きたい…)寒がりの私は、子どもの頃から真剣に思っていました。
こたつでトイレ.jpg

この冬の防寒具として大人気の『着る毛布』は、その夢をある程度叶えてくれそうな気がします。
着る毛布.jpg
後で、近所のニトリへ買いに行こう。



天の位
効き 喧騒離れしばし風流
83.満月と一献我の影も友
馬耳東風

「雑俳の選で天の位には、スケールが大きい・おめでたいといった内容の句を選ぶのが理想」という観点では、まさに天に叶う玉淑にふさわしいということでお採りした句。
一人月見酒 .jpg



雲隠し
効き 振られた遊び癒す女房
65.朝ぼらけ千六本を刻む音
馬耳東風

長屋の木戸をくぐると聞こえてくる、甲斐甲斐しく朝餉を支度する音。
廓で花魁にしょい投げくらって帰ってきた亭主、欲求不満解消のためつい女房を後ろから抱きしめて…。 という意の効きで、雲にしてみました。
季語を入れると俳句としても立派に成立する秀句をあえてこんな感じで色っぽい句と解釈させていただくのも、雑俳の面白味の一つ。



軸(自句)
人の世は九十九の坂の繰り返し

拙吟を振り返って

今回の入船亭扇治拙吟は、以下の10句。

7.いにしえの一発屋たち今いずこ
37.気がつけば二つ穴なり藁人形
39.空浮かぶ七つの星で汲んだ夢
40.隅の席一人の酒が似合う客
41.元日は三日坊主の始めなり
50.手のかかる三つ子のままに若旦那
56.素顔無き八方美人の厚化粧
57.息あがる九段の坂で知った年
79.腹にない二つ返事が招くミス
80.仏さま四回目には渋い顔

このうち半分の5句は、どなたの選にも入れてもらえず坊主でした。

アイコン集.jpg

7・37・50番は当たり前過ぎるし説明調で、なるほど川柳の面白さが出せていなかったなと反省。

80番は同じ内容でも、先ほどご紹介の金八師の句の方がはるかに川柳らしい仕上がり。

そして57番、これは別に「九段」でなくてもほかに坂の多い町はたくさんあるので、この地名を使う必然性に欠けるのが敗因。
私のほかにも数字で始まる地名で詠んだ方がいらっしゃいましたが、同じ理由でそういった句は選に入りづらかったようです。

考えるアイコン.jpg

逆にうまくいったなと手応えを感じた句が、
39.空浮かぶ七つの星で汲んだ夢
これは今回自分で一番気に入った句だったので、41番とともに小ゑん宗匠初め出演者・お客様に抜いていただき光栄でございます。
夢を汲む北斗七星.jpg

 もう一日ある!
年内納めの雑俳

今回の開きを通じて思ったのが、
(雑俳って本当に頭の体操になるし、ボキャブラリーが増えて楽しいな!)
ということ。

駒子師が使った「穣田」「兆域」なんて言葉、私はこの歳になって初めて知りました。

そんな面白くてためになる雑俳の会、なんと年内もう一日開催されるのです!
筆者が出演するのは、
12月25日(日)13時~の回。

詳細は
☆『2022年締めも粋な言葉遊びで!『柚子の香スピリッツ』へのお誘い
にて。

当日ご参加の方にその場で遊んでいただける「席題」もご用意しておりますので、投句なさっていないお客様もぜひ聖なる日を雑俳でゆったりのんびりお過ごしになりませんか?
楽屋一同、ご来場心よりお待ち申し上げております。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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