贅沢な和の空間での寄席ご案内と、高級料亭『福田家』の想い出 [落語情報]
演芸会が行われる会場の前で、畏まってご挨拶する黒猫噺家。
こまちが緊張するのも道理、ここは元・有名な料亭『福田家』だったところ!

風情ある会場で
落語とマジックを
落語とマジックを
四ツ谷駅ほど近く・ホテルニューオータニそばに佇む福田家は、かつて政財界の重鎮たちの会合にもよく使われた、老舗の料亭。
店舗移転に伴い隣接する上智大学が旧福田家ビルを買い取り、2017年から『紀尾井亭』という名称で貸しスペースとして運営しています。
店舗移転に伴い隣接する上智大学が旧福田家ビルを買い取り、2017年から『紀尾井亭』という名称で貸しスペースとして運営しています。
昔は尾張藩の江戸屋敷があった、由緒ある場所。



今回ゲストにお招きするカズ・カタヤマさんは、私が個人的に親交があり大ファンでもある熟練マジシャン。確かなテクニックに裏打ちされたスタイリッシュなパフォーマンスと、まろやかでユーモラスなトークが相まって、不思議で楽しいステージを展開します。
歴史を感じさせる風情ある和の空間での、落語と奇術の競演。
こまちのミニアニメコーナーもありますよ!
上智大学関係者に限らずどなたでもご参加いただけますので、爽やかな5月末の日曜、よろしければ四谷の地へお運びくださいませ。
こまちのミニアニメコーナーもありますよ!
上智大学関係者に限らずどなたでもご参加いただけますので、爽やかな5月末の日曜、よろしければ四谷の地へお運びくださいませ。
旧・福田家の想い出
私は真打ちになりたての頃、一度だけ噺家として旧・福田家にうかがったことがあります。
季節は夏、蝉時雨が降りしきる大変に暑い日でした。福田家謹製のお弁当が付いた「納涼落語会」というシリーズのうちの1日に出演させてもらったのです。
季節は夏、蝉時雨が降りしきる大変に暑い日でした。福田家謹製のお弁当が付いた「納涼落語会」というシリーズのうちの1日に出演させてもらったのです。
当日燃えるような真夏の陽射しのもと福田家にたどり着いた私は、汗をかきかきしばらく玄関先を行ったり来たり。
裏口を、探していたのです。
裏口を、探していたのです。

明治大正から昭和30年代くらいまでは、高級料亭での「お座敷落語」というものが盛んに行われていました。お金持ちの旦那衆が噺家を呼んで間近に芸を楽しむという贅沢な遊び、総理大臣になった吉田茂氏もお座敷落語が大好きだったそうです。
超一流のお客様をお迎えする老舗の料亭はとにかく格式が高く、店の側からすると芸人・噺家なんてのは下の下の存在。
お座敷落語に慣れない噺家がうっかり玄関から入ろうとすると、目を三角にした女将や仲居からこっぴどく怒られる。
だから八代目桂文楽・古今亭志ん生といった看板どころの名人上手たちも、一流料亭に呼ばれた時は勝手口から腰をかがめて遠慮がちに店の中に入ったのだとか。
お座敷落語に慣れない噺家がうっかり玄関から入ろうとすると、目を三角にした女将や仲居からこっぴどく怒られる。

だから八代目桂文楽・古今亭志ん生といった看板どころの名人上手たちも、一流料亭に呼ばれた時は勝手口から腰をかがめて遠慮がちに店の中に入ったのだとか。
それを前座時代お供で新橋の料亭『金田中』に行った時師匠から教わっていた私は、福田家さんでの仕事を頂戴した時から(表じゃなくて、勝手口から入るんだぞ)と何度も自分に言い聞かせていました。
ところが現地に来てみると、どこをどう探せど勝手口らしきものが見当たらないではありませんか。
そもそも庭から裏へ回る道自体、ないようのです。
ところが現地に来てみると、どこをどう探せど勝手口らしきものが見当たらないではありませんか。
そもそも庭から裏へ回る道自体、ないようのです。
滝のような汗を流しながらの勝手口探索の末、これ以上ウロウロしていると楽屋入りが遅くなってしまうと覚悟を決め、玄関脇にある呼び鈴を鳴らしました。
そして出てきた番頭さんらしき男性に
緊張しきって自分でも訳のわからない口上をしどろもどろで述べると、番頭さんは気の毒そうに私を見て。
そして出てきた番頭さんらしき男性に
緊張しきって自分でも訳のわからない口上をしどろもどろで述べると、番頭さんは気の毒そうに私を見て。

存在しない裏口を暑い中、
延々と探し回っていたとは。
今こうして記事を書いていると笑い話にできますが、その時はどっと疲れが出て思わずしゃがみ込みそうになったものです。
延々と探し回っていたとは。
今こうして記事を書いていると笑い話にできますが、その時はどっと疲れが出て思わずしゃがみ込みそうになったものです。

という狂歌がありますが、
それに倣うと
てなことになりますかね。
それに倣うと
てなことになりますかね。

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。よろしければまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
入船亭扇治拝
タグ:落語 入船亭扇治