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四国での学校公演で思い出す、先人の名高座 [落語情報]


小学校のステージ上に組まれた寄席の高座で、マイクチェックをする黒猫噺家。
マイクチェック体育館.jpg
ご苦労さまだけど今どき「本日は晴天なり」とは、あんまり言わないんじゃないかなぁ。


セットと照明で
体育館が寄席に変身!

毎年文化庁が企画・指定した地域の学校で開催される、「少年少女のための芸術鑑賞教室」。

それを請けた私がお世話になっている業者は、小学校での公演を『わんぱく寄席』。中学以上は『学校寄席』のタイトルで、番組製作をしています。

こま正面アイコン基本形.jpg


2021年12月5~8日・その文化庁公演で、四国は高松に伺いました。

公演2日目は、高松市内から車で1時間ほどの三豊市立桑山小学校にて。
桑山小学校.jpg
校章が「桑」のデザイン文字になっている学校。
その周りの畑やお宅の庭では、今ハッサクがたわわに実っています。
ハッサクたわわに.jpg




私が学校周辺を散策して帰ってくると、会場のセッティングが出来ていました。
遠景学校高座.jpg
学校主催の時より予算が多いので、普段の基本セットである金屏風・高座・めくりに加え舞台両袖に暖簾付き衝立が組まれます

照明も業者持ち込みのハイパワーのものを使いますから、それが当たると体育館のステージが華やかに寄席へと変身!

生徒たちに、少しでも生の寄席の雰囲気を味わってもらえたら嬉しいですね。



※この学校公演用金屏風、実は(って見りゃわかるか)本物ではありません。
持ち運びの便を図るため、ある物を使ってそれらしく作ってあるのです。

「ある物」とはいったい何か?
金屏風は何で.jpg

それについては私の個人的エピソードをからめ、別記事で綴りたいと思います。


太鼓体験に
落語関係展示コーナーも

文化庁公演では演芸の鑑賞だけでなく、日本の伝統芸能としての寄席芸を生徒さん方に体験してもらう工夫をしています。

実際に高座で短い噺を演じてもらったり、扇子と手拭いの仕草を覚えたり。

こま正面アイコン笑い.jpg


舞台下には太鼓を出して、鳴り物体験も。
学校一番太鼓.jpg

こまちも生徒さんと一緒に、お客さんがたくさん来てくれるよう「ドンドン、ドーンとコイ」。寄席の一番太鼓を打たせてもらいましたよ。




体育館入り口には、落語関係の展示物を間近に見られるコーナーも設けられています。
展示コーナー.jpg
全国各地の公演を記録したネタ帳、噺家の扇子や手拭いなどなど。

上段左端には
「しあはせは玉葱の芽のうすみどり」
と染め抜かれた、私の師匠・扇橋の手拭いも見えます。
展示物1.jpg




芸人の色紙も、何枚か展示。

これも師匠の筆で
さくらんぼの句.jpg
「櫻んぼひとつつまめば二つかな」

実はこれ扇橋吟ではなく、柳家小三治師匠が詠んだものだそうです。
一見、なんでもない句のように思えますが…。

器の上から見てひょいっと摘まみ上げたかわいいさくらんぼ。
それが軸の先で分かれて、実が二つついてたよ。
得したな、嬉しいな…。

そんな「ささやかな喜びの気持ち」がとてもよく出ていると、うちの師匠が小三治師匠に頼んで譲ってもらったという話を聞きました。




こちらは、出演者の寄席書き。
寄せ書き.jpg
座長の先代桂小南師匠、橘家文蔵・紙切りの林家正楽も共に先代。

「さんゆうていぬう生」は、奇しくも今回の旅初日である12月5日に訃報を知った三遊亭円丈師匠。

その円丈師の手拭いも、コーナーに飾られていました。
円丈師匠.jpg

常に東京の新作落語界の先頭を走り続けたパイオニア、心よりご冥福をお祈り申し上げます。


貴重な
『学校寄席』誕生時の写真

展示コーナーにはもう一つ、懐かしいものが並んでいました。

この業者さんの学校公演の歴史を振り返る小冊子に掲載の、第1回『学校寄席』の模様。
第1回学校公演.jpg

生徒向けの芸術鑑賞といえば演劇が主流だった時代、昭和47年7月3日に伊豆の学校で産声をあげた学校寄席。

鳴り物解説の光景を切り取った写真、並んでいるのは左から
・司会:桂小南
・三味線:森トシ
・笛:入船亭扇橋
・鉦:林家正楽
・太鼓:桂南笑(現・南喬)。

いやー、そうそうたるメンバー。

こま右向きアイコン.png


小南師匠は私も何度か学校公演でご一緒しましたが、まぁ解説も高座も丁寧で生徒たちにウケることウケること!

ほかのメンバーが「今日のお客さんは、ちょっと手ごわいよ」言いながら高座から下りて来るような学校でも、小南師匠がトリで『転失気』をやるとそれまでがウソのように生徒たちが笑い出す。

私が聴いた限りでは、小南師匠が学校で逸れた・蹴られた(ウケなかった)ことは一度たりとてありませんでした。


師匠・扇橋も大先輩小南師匠が学校で演じる『転失気』には一目置いており、
「ありゃ下がかった噺で、筋だけで特に小学生はよく笑ってくれるからな。ウケやすいからってお前たちが覚えて高座にかけたい気持ちはわかるけど、小南師匠くらい品よくできる腕と自信が身につくまではやらねぇ方がいいぞ」
しみじみと旅帰りの車中で諭してくれたのを思い出します。

こまち3連アイコン.png


そんな先達たちにはもちろん及ぶべくもありませんが、今の私にできるだけの話術で若い世代の人たちに落語の楽しさを少しでも伝えられたら。

さぁ、高松での学校公演・2日目もそろそろ開演時間。
始まるよわんぱく寄席.jpg
生徒さんたちの入場が、これから始まります。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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