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令和4年の初雪に想う、見習い時代のエピソード [日々雑感]


2022年1月6日、木曜日。
東京に、初雪が舞いました。
国立駅の黒猫.png
JR国立駅のホームから、雪化粧の駅舎と街路樹をのぞむ黒猫。


風花程度かな、
と思っていたら…

当日は
都心でも宵のうちまで雪が降り、山間部では積もるところも
という予報が出ていました。

毎月恒例で務めているカルチャー講座のため、午前10時過ぎに自宅から中野駅に向かった私。

その途中で、白いものがちらほらし始めます。
まだまだ、傘をさすほどではありません。

駅前で早めのお昼をすませて乗った中央線から見る車外、風花程度の降りは変わらず。

こま正面アイコン基本形.jpg


(東京の初雪は、このくらいのもんかな)たかをくくっていたのですが…。

12時前に国立の会場へ着いた時には、雪片が大きく振り方もかなり激しくなってきました。

13時に講座開始してからも、教室の窓の外が真っ白になっていくのがわかります。

「お互い、帰りの足元が心配ですから」と、予定より5分早く15時前に講座はお開きに。

その後も雪は降り続け、乗り換えでホーム下りた三鷹駅は吹きっさらしで寒い!
三鷹駅ホームから.jpg


帰りを急ぎつつ
雪景色にうっとり

強まる寒気に都心でも夜にかけ10㎝ほどの降雪があるかもと、天気予報が変わります。

夕方の帰宅ラッシュを前に、23区と都下に大雪警報が発令されるとの情報も。 帰ったらもう今夜は出なくてもいいよう途中で食糧を買い込み、急ぎ足でわが家を目指す弱小噺家。

もう5cmくらい積もっている雪で足元が滑りますから、下ばかり向いて歩いて来たのですが…。


うちまであと少しという辺りまで来ると、周りの景色を眺める余裕が出てきました。

中野富士見町駅そばの見慣れた公園、
近所の公園.jpg
白一色をまとって別世界のよう。

桜の木って、雪とも相性がいいんですね。
仰ぎ見る桜の木.jpg
まるで、結晶の花。

白いところには、黒いものも映えます。
雪景色と黒猫.png


無事自宅の前まで来ると、今度はイラストこまちがお出迎え。
白いわが家でお出迎え.png
「お帰りなさい、お疲れさま!早くうちの中へ入ってあったかくして、こまちと遊ぼー」。

はいはい、でもちょっと待っててね。

先に玄関前の雪かきをしておかなくちゃ。


雪かきで思い出す、
見習い時代のエピソード

暗くなってから帰ってくる、女房と倅が滑って転んだら大変。
そう思いながらプラスチック製のちり取りで、せっせと雪をかく私。

そんなまだるっこしいことしてないで、こまちはこうするニャ!
燃える除雪車.png
君のは、
豪快な雪かきだねー。

でも今は雪かき用スコップもないので、ちり取りでザクザクガリガリと地道な手作業。




そんなことをしているうち、噺家見習い時代の想い出が蘇ってきました。

芸名はついたけれどまだ寄席には出ていない、私が入門して最初の冬。
2月半ば頃のことだったでしょうか。


師匠アイコン.jpg

明日は久しぶりに夫婦で朝寝するから、お前は昼の12時前くらいにうちへ来るようにしてくれ。

早起きの仕事が続いた師匠からそう言われ、わかりましたとアパートへ帰った私。

自分も寝坊できてありがたいと、その晩は好きなミステリを読んだりして普段よりちょっと夜更かし。

日付が変わった深夜1時過ぎに、眠りに落ちました。

こまち3連アイコン.png


朝5時前、
寒さで目が覚めます。

おーさぶさぶとトイレに行って小窓から外を見ると、外は一面の銀世界!
銀世界こまち.png

夕べの天気予報では、そんなことはまるで言っていませんでした。
私が寝てから急激に、寒気が強まったのでしょうか。


損得抜きの
自発的早朝雪かき

寒さに震え用を足しながら、その時私の脳裏にこんな考えがよぎります。
(師匠とおかみさん、いきなりの雪で困るんじゃないかな)。

二人で朝寝するとは言ってましたが、それでも10時くらいには起きて新聞とったりするかもしれない。
郵便受けまでいく2・3歩でも、雪に足をとられちゃ不自由だろう。

よしっ、ここはどうせ起きちゃったんだし。
今から師匠んとこ行って、玄関先だけざっと雪かきしてこよう。

そう決意するとすぐあったかいなりをしアパート備え付けのスコップを担いで、歩いて2分とかからない扇橋宅へと向かいます。


岐阜の山間部育ちで、それなりに雪かき経験もある私。
玄関周りの雪は、15分ほどで片づけることができました。

その頃にはもう雪は止んで、空には星が瞬いています。

こま正面アイコン笑い.jpg

これでOK、帰ってもうひと眠り…と思ったのですが。
(ここまでやったんなら、もう少し雪片づけていくか。 昼過ぎには師匠もおかみさんも、どっか出かけるだろうしな)。

明け方の冷え込みで雪が凍って固くなる前にできるだけの雪かきはしていこうと、スコップを握り直します。
雪かきの想い出1.png

師匠宅前だけだといかにもですから、お隣やお向かいの家の前までザクザク・ポイポイ。

結果的には夜のしらしら明け直前の、午前6時過ぎまで作業をしていました。

すっかりきれいになった師匠宅周りを眺めて、(うん、我れながらいい仕事ができた)。

満足感・達成感と心地よい疲労を覚えながら、意気揚々とアパートに帰り二度寝をすることに。


目覚めてみると、
予想外の結末が!

ここで寝坊・遅刻したら、せっかくの隠れた善行が台無しです。

午前9時には起床して、じゃあ今度は自分のアパートの雪かきをと外へ出てみると…。

あれだけ降り積もっていた雪が、ほとんど跡形もなく溶けてしまっているではありませんか。

こま右向きアイコン.png

気づいてみれば空には太陽が燦々と輝き、2月とは思えない暖かさ。
明け方から劇的に、
気温が上昇したらしいのです!

夜のうちだけ急に降った雪は、季節外れの陽気の前にはひとたまりもなかったのでしょう。


時間になって師匠宅へ行くと、当然そこには雪も私の早朝労働の形跡も残ってはいません。

(せっかく、あれだけきれいにしたのにな…)。 がっかりはしましたが。

(いやいや、別に人にほめてもらおうとやったことじゃないから。師匠とおかみさんのために、やった雪かきなんだから。二人が転んだりしなかったんなら、それでいいじゃないか)。

そう自分に言い聞かせ「おはようございまーす」中へ入ろうとして、ちょうど新聞を取りに出てきたおかみさんと鉢合わせ。

そのおかみさん曰く、


おかみさんアイコン.jpg

あら扇べいさん、おはよう。


いえね、私もっと早く起きるつもりだったんだけど。夕べ明け方近くにうちの表でなんだかガリガリゴソゴソ変な音がしてて、そん時目が覚めちゃったのよー。それから寝直したから、さっきまでもうぐっすり。

それにしても、あの音なんだったんだろうねぇ。 きっと浮浪者かなんかかもしんないね、近頃この辺りによくいるっていうから。

扇べいさんとこもすぐそこなんだから、気をつけなよ。いろいろと、物騒な世の中だからねー。

雪かきの想い出.png

…なんということでしょう。
明け方前の私の大奮闘がなかったものになっただけでなく、物騒な浮浪者と思われていたとは!

アイコン集.jpg

「そうですねー、気をつけますー」返事をする私の胸中は、実に複雑なものでありました。




そんなおかみさんと師匠の、在りし日の写真が出て来ましたのでご披露。
私と女房の結婚披露宴、
仲人席に並んだ二人。
師匠とおかみさん.png

おかみさんの方が特にピントがぼけちゃっていますが、生前写真撮られたり人前に出るのがあまり得意でなかった方。


おかみさんアイコン.jpg
お父さんがちゃんと写ってりゃ、
アタシなんかいいんだよー。

そんな言葉が、聴こえてくるような気がします。


蔦飾り線.png


お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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