聖なる日に読み返したい、超短編ミステリ [お気に入り・おすすめ]
街のクリスマス気分最高潮の12月24日、久しぶりでこんな本を書棚から引っ張り出してきました。
エラリー・クイーン編『ミニ・ミステリ傑作選』東京創元社刊。
読み応え十分の
ミステリ詰め合わせ
ミステリ詰め合わせ
アメリカミステリ黄金期を支えた作家の一人(ほんとは二人だけど)であり、編集者・アンソロジストとしても多くの業績を残したエラリー・クイーン。
そのクイーンが1969年に編んだ『ミニ・ミステリ傑作選』には、古今東西のショートショートがなんと67編も収録されています。
そのクイーンが1969年に編んだ『ミニ・ミステリ傑作選』には、古今東西のショートショートがなんと67編も収録されています。
作者はミステリ専門作家だけでなく、SF界の大御所アーサー・C・クラークやセルヴァンテスにモーパッサンといった文豪まで多士済々。
1編が3~5分ほどで読める超短編ばかりですから、就寝前のナイトキャップがわりに・旅のお供に最適。
1975年に邦訳を初版で買って以来、私は数年おきにこの本を開き何篇か拾い読みしては楽しんでいます。
味わい深い「時の流れ」
私が今回この時期に『ミニ・ミステリ傑作選』を手に取ったのは、収録作のうちある二編を無性に読み返したくなったから。
一つはクリスマス短編定番中の定番『賢者の贈り物』からの連想で、O・ヘンリーの『二十年後』。
そしてもう一編は初読時の感動が忘れられない、アーサー・ミラー『ある老人の死』。
そしてもう一編は初読時の感動が忘れられない、アーサー・ミラー『ある老人の死』。
たまたまどちらも警官が登場し「時の流れ」を扱った作品、忘れがたい読後感が残るストーリーです。
『二十年後』
雨もよいの夜のニューヨーク、時刻は午後10時前。
巡回中の警官は古びた金物店の前に立っていた男から、「自分は怪しい者ではない」と声をかけられる。
巡回中の警官は古びた金物店の前に立っていた男から、「自分は怪しい者ではない」と声をかけられる。
その男・ボブは今夜この時刻、昔別れた親友ジミーと再会するためここに来たのだという。
西部でひと旗あげるため街を出るボブと、友人から一緒にと誘われてもニューヨークに残ることを選んだジミー。二人は昔その場所にあったレストランで一緒に食事し、「たとえ互いがどんな立場になっていても、20年後の午後10時にはまたここで会おう」と約束して袂を分かつ。
西部でひと旗あげるため街を出るボブと、友人から一緒にと誘われてもニューヨークに残ることを選んだジミー。二人は昔その場所にあったレストランで一緒に食事し、「たとえ互いがどんな立場になっていても、20年後の午後10時にはまたここで会おう」と約束して袂を分かつ。
警官が「友人に会えるといいね」言い残して去った後、霧雨のなか友を待ち続けるボブ。
そして10時を過ぎた時、通りの向こうから近づいてきた男が「君か?」と声をかける…。
そして10時を過ぎた時、通りの向こうから近づいてきた男が「君か?」と声をかける…。
『ある老人の死』
深夜2時近くの大衆食堂。
「ついさっき、人が死んだ」。
カウンターに座った警官が、顔馴染みの店員に向かって問わず語りに話を始める。「それがおれの知ってる人だった」と。
「ついさっき、人が死んだ」。
カウンターに座った警官が、顔馴染みの店員に向かって問わず語りに話を始める。「それがおれの知ってる人だった」と。
工場地区のスラム街で死者が出たとの通報で駆けつけた警官は、貧しいアパートのそばまで来た時10年前のことを思い出す。そこは、自分がまだ駆け出しの頃に担当した現場だったのだ。
みすぼらしいアパートの一室で自ら命を絶とうとした、年金暮らしの孤独な老人。
一命はとりとめたものの自殺願望が強くこのままでは精神病院送りにしなければならない老人と、その場で新米警官はある約束を交わした…。
一命はとりとめたものの自殺願望が強くこのままでは精神病院送りにしなければならない老人と、その場で新米警官はある約束を交わした…。
『二十年後』は短編の名手O・ヘンリーの面目躍如たる切れ味・『ある老人の死』の方は社会派作家アーサー・ミラーらしい余韻を残してと、それぞれの結末のつけ方は違いますが。両作品とも短いながら、ミステリの域を超えて人生の重みというものを感じさせてくれます。
私は今回読み直すまで(どっちかはクリスマスの日の出来事だったよなー)と、すっかり思い込んでいました。
そんな”クリスマス”テイストも漂う二作品をご紹介した本稿、結びに「猫リース」をご覧いただいて締めといたしましょう。
そんな”クリスマス”テイストも漂う二作品をご紹介した本稿、結びに「猫リース」をご覧いただいて締めといたしましょう。
皆様、Merry Christmas!
入船亭扇治・記
タグ:おすすめ本 猫
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