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旅先で突然の事故に遭遇!~4時間に及ぶ“新幹線カンヅメ”体験記~ [日々雑感]


人類の産んだ偉大な発明の一つ、缶詰。

ありがたい缶詰.jpg

その缶詰を手に随喜の涙と涎を流す、貧乏噺家と食いしん坊猫。


できたら勘弁
ありがたくない‶缶詰”

チョコボールで当たる『おもちゃのカンヅメ』。
風邪ひいた時くらいしか開けてもらえなかった、シロップ漬けみかん。

子供憧れの缶詰.jpg

子どもの頃、憧れた缶詰たちです。


500矢絣緑.jpg

でも世間にあまたある缶詰の中で、誰もがこれは勘弁してもらいたいというのが
強制的に、閉鎖空間に閉じ込められる
という意味での「カンヅメ」

締切が間近に迫った小説家や漫画家が、編集者監視のもと一室にこもって執筆したりするのをこう呼びますね。


不慮の事故でエレベーターや運行中の交通機関に閉じ込められるのも、‶ありがたくないカンヅメ”の一つ。

筆者は先日、
そんな現場に遭遇。



順調な航海のあとに…
降ってわいた災難

令和3年10月半ば、客船にっぽん丸の「別府・生口島クルーズ」に乗船した私。

好天と良いお客様に恵まれ、3泊4日で8回公演を無事務めあげることができました。

好天のにっぽん丸とこまち.jpg

10月18日午前11時、船は神戸港に着岸。
お客様に続いて私も下船、スタッフ・乗組員の方々にお礼と再会の約束を述べて港を後にします。

にっぽん丸下船.jpg




その足で新神戸駅12時30分発ののぞみ号に乗車、東京までは2時間44分

本を読んだりタブレットに入れた映画を観ているうちに、あっという間に着いてしまう…はずだったのに。


ニュース画面.jpg

当日12時54分・豊橋駅で発生した人身事故の影響をもろに受け。

13時20分頃岐阜羽島駅の行き違い線に退避した新幹線車内で、しばし我慢の時を過ごすことになったのです。

運行再開したのは、16時50分。
新幹線缶詰.jpg

約4時間の、新幹線カンヅメ生活の始まり。


落ち着いていた
待機中の車内

岐阜羽島で一旦停止した直後は、携帯電話をかけにデッキへ出る人や席でスマホを操作する方たちで慌ただしかった車内。

でも1時間もしないうちに、私を含め乗客の様子はすっかり落ち着きました。

JR東海側にはまるで非のない、避けようのなかった人身事故。

車内ではどこにも文句を言う相手は無し、もう起きてしまったことは仕方がない。
各方面への連絡がひと段落すると、皆さんそういった思いで背もたれに身体を預け体力を温存。

何人か乗っていた小さいお子さん方も、親御さんや乗務員の方の気遣いで皆おとなしく大人と一緒に運行再開を待っています。

こま正面アイコン笑い.jpg




事故発生直後から車掌室より
☆原因は豊橋駅での人身事故であること。
☆現在、警察と消防による現場検証と救護活動が行われていること。
☆それと並行して、線路の安全確認も進めていること。
☆運行再開見込み時刻は、最短でも今から1時間30分後以降と予想されること。
事細かに車内放送で情報提供があったのも、乗客の不安を軽減するのに役立ちました。


新幹線の罫線.jpg

当日は家に帰るだけの私も、気持ちを落ち着けてカンヅメ生活に備えます。

スマホ・タブレット・ノイズキャンセリングイヤフォンを車内のコンセントに繋いでフル充電、ポケットWi-FiでAmazonPrimeVideoの映画を2本ダウンロード。

まだ3分の1しか読んでない本もあるし、アニソンのプレイリストもたっぷりタブレットに蓄えてあります。
これなら数時間の車中カンヅメでも、退屈することはないでしょう。


こまちも音楽聴きながら『動物のお医者さん』を読み、CIAOちゅ~るをつまんでご機嫌。

新幹線車内にて.jpg


デッキの風景に
よみがえる師との想い出

こうして皆さん比較的平常心のまま、穏やかに過ぎていった新幹線カンヅメの時間。

ぽっかり空いた、
この時の流れの中で。

読書や映画鑑賞の合間、私は30年以上前のある出来事を思い出しました。

足腰を伸ばしがてら立ったデッキで見た風景が呼び覚ます、噺家見習い時代の師匠との想い出。

フレーム入り師匠の写真.jpg
※旅先の楽屋にて、大ファンだった島倉千代子さんの写真を前に色紙を書く入船亭扇橋(この時思い出した話とは、関係ありません)。

そのエピソードについては、次回の記事で詳しく触れたいと思います。


500矢絣青.jpg

※「にっぽん丸別府・生口島クルーズ」乗船記は、
湯煙たなびく別府を一望、無料の展望スポット~客船にっぽん丸秋のクルーズ別府(前編)~
にてお読みいただけます。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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湯煙たなびく別府を一望、無料の展望スポット~客船にっぽん丸秋のクルーズ別府(前編)~ [旅のアルバム]


約半年ぶりに乗った客船にっぽん丸、ダイニングはもう秋の装い。

ダイニングはハロウイン.jpg

ハロウィンの魔女猫も、特別参加。


よし、
「観光」するぞ!

宿泊施設ごと、いろんな土地を訪れて観光できる。

クルーズならではの魅力です。


私は仕事で乗らせてもらっているので、時間的な制限からあまり寄港地で本格的な観光をしたことがありません。

しかし2021年10月半ばに乗船した航海、最初の寄港は別府
港の眼前には、「地獄めぐり」で有名な鉄輪温泉街が広がっています。

徒歩圏内・自由行動時間内で手軽に観光できる、うってつけの環境。
無精な私も今回は、重い腰を上げることにしました。

こま正面アイコン笑い.jpg




早起きして朝食をいただいているうちに、船は別府港へと近づいていきます。
別府到着.jpg

大型フェリー「さんふらわぁ」号の姿や岸壁上の観光バスの列を見ると、上陸への期待で胸がワクワク。

さあ、今日は気合い入れて観光するぞ!


道草しながら
目指す展望台

10月16日午前8時、にっぽん丸は別府に入港・着岸。
下船の準備が整い、自由行動のお客様に続いて私も午前9時過ぎ別府に上陸。

広い緑地の向こうは、九州横断道路。そこを湯布院方面へ上がると、徒歩40分ほどで温泉街。


私がまず目指したのは、大観山地区の高台にある市営の「湯けむり展望台」

Googleマップで調べると、現地まで徒歩33分。「現在この施設は、普段より混雑しています」との表示が出ています。
その日は土曜でしたから、観光客の方がけっこう訪れているのでしょうか。

こま正面アイコン基本形.jpg


大通りを歩き出すと、右手に大衆食堂の大きなメニューが。
味しげ安い.jpg

カツ丼600円、
ラーメン500円。

確かに東京ではあまりない値段設定で気になりますが、まだお店は営業時間前。

それにお父さんはこれから「観光」で先を急ぐんだから、こまちもそんなとこで座り込んでないで早く歩きなさい。




少し行くと、今度は民家の庭に大きな柿の木が。
青空に柿の木.jpg

木の根方には熟れた実がいくつか皿に盛られ、
ご自由にお持ちください.jpg
「ご自由にどうぞ!!」

うーん、これにもそそられるけれど…。 まずは観光、展望台へ向かわなければ。

後ろ髪引かれる思いで、庭先の柿に別れを告げ足を早める私。


親切な道案内と
窓辺の姿に癒され

湯けむり展望台へは大通りから右に曲がってさらに坂道を上がっていくのですが、方向音痴な私はその分岐点を間違えてしまいました。

住宅街の中に迷い込み、あっちをウロウロこっちでキョロキョロ。

誰か土地の人に道を尋ねたいのに、間が悪いことに誰とも行き会わず。

時間にして10分以上・範囲は150メートル四方くらい歩いたのに、表には人っ子ひとりいません。

あたり一帯がシーンと静まり返って、なんだかエイリアンに侵略された町のごとく。

こま右向きアイコン.png


ようやく車を動かしに出てきたご婦人の姿を目にし、(やれありがたや!)そばに行って声をかけます。

日本の方ではないらしいその女の人は、見ず知らずの私にとても親切丁寧に道案内してくださいました。


そしてご婦人の言葉を聞いているうち、背後の窓に何やら動くものが。
何だろうと見ると、そのお宅の猫ちゃん!
窓辺の猫ちゃん.jpg
奥様にはちゃんとお断りして、写真撮らせていただきました。


好天の秋晴れのもと、迷子で焦りながら汗びっしょりで歩き回っていた私。

この出会いでおおいに癒され、先へ進む元気が復活。


小さくても
眺望は雄大

かなりきつい坂道を上がって登って。
ようやく、目的の「湯けむり展望台」に到着。

「倉田紘丈」氏の句碑が立つ、こぢんまりした見晴らしスポット。
展望台の句碑.jpg

展望台自体もさほど大きくなく、私は最初(うちの近所の公園の、遊具みたいだな)思ったほど。


湯けむり展望台.jpg

でも小さくてもちゃんと展望台の役は果たしており、眼下には湯煙たなびく別府の街が一望できます
眺望通常撮影.jpg

さらに雄大さを出すため、新調iPhoneの超広角レンズでパチリ!
湯の街展望.jpg

夜はライトアップした温泉街を見ることができ、「日本夜景遺産」にも認定されているそうですよ。


展望台からの景色を堪能したところで…。

さぁそれではもう少し足を延ばして、「観光」を続けるとしますか。

この続きは、記事を改めまして。


※過去のにっぽん丸乗船記は、
クルーズ船内は昔から、素敵なソーシャルディスタンス。~一年ぶりのにっぽん丸乗船記①
上陸しなくても、船旅は楽しい!~久々のにっぽん丸乗船記②
普段通りじゃないけれど、やっぱり楽しい客船の旅~久々のにっぽん丸乗船記③
楽しくしっかり摂ろう、クルーズ船のお食事~船旅を満喫するための、大事なエネルギー源
船旅ならではの出会いが嬉しい、佐世保上陸記~限られた時間でも楽しめる、クルーズ寄港地体験~
明るく落ち着いたダイニングで、海を眺めながらの優雅な朝昼食~にっぽん丸、もう一つの「食の楽しみ」~
青空を背景にゆったり停泊、絵になる豪華客船の画像で遊んでみよう!
雄大な「360度海のパノラマ」に囲まれて、小市民噺家のささやかな冒険~豪華客船夕食での”おかわり”初体験!
でご覧いただけます。

波の罫線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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iphoneでの写真撮影を楽しくする、無料アプリ「Focos」ご紹介 [お気に入り・おすすめ]


2020年夏の終わり、
網走湖畔での記念撮影。

通常とぼかし.jpg

元は同じ画像ですが、
大きく違うのは…?



iphoneSEは人間のみ
「ポートレートモード」

①右の写真には、左にはいない黒猫こまちがいる。
②左の写真は、背景にぼかしがかかっている。

違いはもちろんこの2点ですが、
今回のテーマは②。

こま正面アイコン基本形.jpg


一眼レフやミラーレスカメラでないとできなかった「ぼかし撮影」が最近ではスマホでもある程度可能に。

iPhoneだと7Plus以降のデュアルレンズ機種と、SE第2世代がをこの機能に対応。




ただSEはシングルカメラ機なので、
‶二つのレンズで撮影した画像を合成して、被写界深度の違いを表現する”
本来の「ポートレートモード」ではありません。

スマホの中の小さい人が、
‶人間の姿形を学習しており、その輪郭以外をぼかす”
やり方なので、基本的に人間を撮影する時しかポートレートモードは機能しません。

「ポートレートモード対応だと聞いて買ったのに、ペットや物だと背景ぼけなくてがっかり」
こんな商品レビューを、けっこう目にします。

SEを次の買い替え候補の一つに考えている私にとって、これは重要な課題。


無料アプリで
ポートレートが可能に!

未だに無印iPhone8を使っている私、SNSの投稿にあるポートレート画像が羨ましくてなりません。

バッテリーもヘタってきたのを機に性能と価格のバランスがとれたSEに変えようと思っているのに、こまちの写真が今まで通りにしか撮れないのはちょっと残念だ。

こま右向きアイコン.png

非対応iPhoneでも、“ナイトモード撮影”が可能に!~夜景や暗所での撮影に、おすすめアプリご紹介~で試してみたナイトモードと同じように、なんとかペットも取れる‶疑似ポートレートモード”にすることはできないか?


結論、
できました。

それも無料で、SEどころか私のようにiPhone8以前の機種でも可能。


こちらのアプリが、夢を叶えてくれます。
Focos紹介.jpg
「Focos(フォコス)」。


快適で楽しい使い心地

本当にこまちでも使いこなせるほど、操作方法は直感的で簡単

わが家の縁起物マスコット、「おねがい猫」で試してみましょう。
オリジナル画像がこちら。
オリジナルお願い猫.jpg


写真を読み込んだら、ぼかしに関していじる項目は二つだけ。

①焦点距離 
②絞り(f値)

画像内のピントを合わせたい場所をタップしたら、上の2点をプレビューしながら調整。

☆「フォーカス」、スライダーを右にやると手前・左は奥にぼかす範囲が移動。
焦点調整.jpg


☆「サイズ」は絞り。右から左へ、ぼかし度合が変化。
ぼかし度合い調整.jpg

お好みの感じに仕上がったら、右上の矢印マークからメニューを開き
・コピーを保存
・オリジナルを上書き
どちらかを選んで出力。

ぼかしお願い猫.jpg

この時注意したいのは、無料プランだと写真のサイズが1280x960に制限されること。

オリジナルサイズで保存したい時は、
・150円/月
・980円/年
・買い切り1600円
で有料会員になる必要があります。

どうしても高画質でという方には、この精度なら有料でも惜しくはないと思いますが…。

私のようにwebに投稿したり、家族知人とデジタルで見せ合う程度なら無料で充分かと。


自動ゆえに
細部にミスも

ネット上での評価も高いFocos。

本格的に写真を追求するわけではなく、"一眼レフっぽい絵”が撮れればいいという方には、ぜひおすすめしたい。


ただシングルカメラスマホの場合は、あくまでも"被写界深度データを持っている写真”らしくアプリが加工するわけですから。

たまーに、AIが細かいところでミスをしたりします。


夏に窓辺で庭を眺めるこまちの写真、Focosで後ろ姿にピントを合わせた感じにしてみました。
庭眺めるアプリ.jpg

一見うまくいっているように見えますが、 こまちの頭頂部と背景の区別がついていません。
ミス拡大アプリでぼかし.jpg


じゃあやっぱりFocosは本家ポートレートモードには敵わない、入れる価値のないアプリかというと…。

私が使ってみた限りでは、決してそんなことはないと思います。

ミスが発生するのははごく稀ですし、うまくいっていないところは自分で直せばいい。

上の画像のようにぼけ方が足りない時は「画像の一部をぼかす無料アプリ」は沢山ありますから、それを併用すればOK。




私はパソコンに入れて、愛用のGIMPで修正。

これまでは背景ぼかそうと思ったら、 元画像の上にぼかしをかけたレイヤーを置き、くっきりさせたいところは消しゴムでちまちま削っていたのです。
ちまちまGIMP.jpg

それがFocosの下拵えのおかげで、GIMPのぼかしツールでちょいちょいと直してやるだけで それらしい感じに修正できました!
修正完了 .jpg


本家との併用で
さらに楽しさアップ

本家ポートレートモードは2枚以上の写真を合成するため、シャッターを切るのに通常撮影より時間がかかります。

静物ならそれでいいのですが、うちのこまちのようなやんちゃ娘だとすぐ動いてしまってなかなかうまくいきません。

どうしてもブレたり、妙なアングルの写真になったりすることも多い。ポートレートでおすまし.jpg
ごろん.jpg


その名の通り「額縁に入れた人物画」を撮るのが、ポートレートモード本来の目的。

動きのある被写体は通常撮影やビデオで焦点気にせずどんどん撮り、後で必要ならFocosでぼかし加工。その方がずっと快適に、スマホ写撮影が楽しめます。

こま正面アイコン笑い.jpg




またポートレートモードで撮影した写真を編集できるのも、Focosのおすすめポイント。

iphoneの写真アプリでも撮影後のf値調整はできますが、Focosの方が細かいところまで直感的に整えられる。

シングルレンズ機での"代用ポートレートモード"としてはもちろん、本家ポートレートお持ちの方も写真編集の幅が広がると思います。

まだの方、ぜひ一度無料版Focosお入れになって。

ひと味違うスマホフォトライフ、ご体験なさってみてはいかがでしょう。

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入船亭扇治拝

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思い出深い、二人きりでの豪華な披露口上~不世出の国宝噺家追悼~ [落語情報]


令和3年、10月7日。

落語界の巨星がまた一つ、空の彼方に旅立ちました。

さよなら小三治師匠.jpg

心より、ご冥福をお祈り申し上げます。


二人だけの口上?

柳家小三治。

史上3人目の、人間国宝噺家。

先日惜しまれつつ世を去ったこの名人・私にとっては名人古今亭志ん朝のお宝エピソードで取り上げた大看板と同じく、憧れのスーパースター

それでも私の師・扇橋が親しかった関係で、志ん朝師よりは接する機会に恵まれたのはとてもありがたいことです。




今回は2001年秋、私が真打昇進した時のエピソードをご紹介。

10人一緒に昇進した私たち、各寄席披露興行の出番は一日ずつ。
4軒目の池袋演芸場が、最後になります。

その池袋での真打披露口上に並んでくれたのは、扇橋と小三治師匠。

本来なら司会が必要なので、最低でも3人は口上に参加できるよう番組編成してあるものなのです。


ちょうど私の担当日は、週末にあたっていたのでしょう。幹部の出演者陣はみな忙しくてお休みか、後半まで残れない方ばかり。

どうしても口上要員が、ひとり足りません。


「筆頭弟子の扇遊師匠に、司会だけお願いしましょうか?」
事前に落語協会事務局から、師匠のところに打診はあったそうです。


それを扇橋が伝えたところ、小三治師匠いわく。
「いいよ、わざわざ出番じゃない者を入れなくても。俺とそっちと、二人だけの方が気がおけなくていいや」

この意見にうちの師匠、
「そうだな、池袋の高座はそんな広くないし、ちょうどいいか
私の意向なぞお構いなしで、すぐ賛同。

当時の披露目では珍しい、新真打当人入れて3人での口上が実現することに。


ありがたい、
でも手が痺れる…

披露目当日は、秋晴れの行楽日和。
個人的に呼んだお客様も含め、客席は満員の盛況。

番組は滞りなく進み、休憩後の「クイツキ」でいよいよ口上が始まります。

片シャギリの笛と太鼓で、ゆっくりと幕が開く。
お客席からは、万雷の拍手。


私の右には、師匠・扇橋が控え。
左側すぐ隣には、後の人間国宝。

緊張で胸はドキドキ、
喉はカラカラ。

そんな私の脇で、司会を兼ねたうちの師匠がまず私を紹介。

続いて、「それでは落語協会理事・私には兄弟子にあたります柳家小三治、口上申し上げます」 の振りで、小三治師匠が口を切ります。

☆新真打の地元・岐阜へ行った際、彼のご両親からとても丁寧なご挨拶をいただいた。しっかりした親御さんに育てられたことは、芸の世界でもきっと役に立つだろう。

☆扇橋の弟子らしく、派手さよりも地道な努力が実を結ぶタイプだと思う。お客様も、長い目で見守っていただきたい。

☆「二ツ目勉強会」などで聴くと、本格的な古典に時おり独創的なクスグリを効果的に入れたりしてくる。そういった意外性も、これから楽しみ。

そんな頻繁に接しているわけでもない私のことを、とても丁寧にお客様に伝えてくださいました。


ああ、前座から二ツ目時代・辛いこともあったけれど、辛抱してよかった。

憧れの大看板が今、私のすぐ隣で。親身になって、身に余る言葉を紡いでくれている。

ありがたい、
涙が出るほどありがたい。

ありがたい、のだけれど…。

ずっと平伏しているうち、だんだん両手が痺れてきました。

こまち3連アイコン.png


なにしろ小三治師匠と言えば、『ま・く・ら』というベストセラー本も出しているくらい、冒頭の語り・マクラが得意でお好きな方。

マクラをまくらに.jpg

独演会だとマクラ50分なんて当たり前、談志師匠から
「近頃小三治はやたらマクラが長いってぇけど、あいつは時給で落語やってんのか?」
毒舌を吐かれるほど。

こま正面アイコン基本形.jpg


対するうちの師匠も、話がよく脱線する人。

話題がすぐ本筋から枝道へ入ってどんどん長くなり、講演の仕事の時など傍で聞いていてハラハラしたことも一度ならずありました。


その‶話の長い両巨頭”の掛け合いですから、3分や5分で終わるわけありません。 最終的には、20分近く二人でしゃべっていたのでは。

両手をつき頭を下げてかしこまっている私には、その倍くらいに感じられたものです。


披露口上が
やがて世間話に

どう長くても話術に長けた二人のこと、お客様は引き込まれて聞き入っています。

ただ隣で聞いていて弱ったのは、うちの師匠の話題が口上からだんだん逸れていくこと。

私の前座時代のことから始まり、永六輔さんプロデュースの旅へ行った時の話になったあたりからその傾向が顕著に。

扇橋
「あの旅、剛ちゃん(タケちゃん=小三治師匠の本名・郡山剛蔵から)も一緒だったろ。 宇奈月温泉のそば屋で食べたカレーうどん、あれうまかったよなー」

ここまで来るともはや披露口上でもなんでもなく、ただの世間話。

小三治師匠も初めは苦笑いしながら 「おい橋本(扇橋の本名)、そんなことよりこいつのことをちゃんと言ってやれよ」 軌道修正してくれていたのですが…。

二人で口上.jpg

何度話を戻してもうちの師匠が脱線するので、しまいには諦めて二人で一緒にフリートーク

こま正面アイコン笑い.jpg




大勢のお客様方の前でお辞儀をしながら聞いた、自分の頭越しに交わされる大先輩どうしの世間話。

それに至近距離で触れることができたのですから、まぁ貴重な体験と言えるでしょうか。


今頃、雲の上では

享年、81歳。

持病のリューマチ苦など決して丈夫とは言えない身体で、ここまでお客様を楽しませて来られたのは凄い。


名演に触れることができなくなるのは、もちろん寂しいですが。

楽屋で身体を冷やさないようにする気づかいや、朝から晩まで大量に服用しなければいけない薬からは解放されました。

長い間、本当にお疲れ様です。

今はそう言って、お見送りしたいと思います。

レトロ小三治師匠.jpg




今頃遥か彼方の雲の上で、小三治師匠は。

自身の師匠・五代目小さんにまず挨拶、それから志ん朝・談志・永六輔など錚々たるメンバーと旧交を温めているのでしょう。


そして、私の師匠・扇橋とも再会。

師匠アイコン.jpg「何だい剛ちゃん、もうこっち来ちゃったの?まだ早いんじゃないの、もっと向こうでゆっくりしてりゃよかったのに。

でも、また会えて嬉しいや。 ちょうどいい、すぐそこに乙な甘味屋があるんだけど、一緒にあんみつでもやらないかい?」

小三治師匠アイコン.jpg
「いいねいいね、行こうじゃねぇか」

師匠アイコン.jpg
「そっちが兄弟子なんだから、剛ちゃんの奢りだぜ」

小三治師匠アイコン.jpg
「何言ってんだい、こっちじゃおめぇの方が先輩だろ」


普段ぶっきらぼうに見せているあの表情を、やんちゃ坊主のように破顔させて。

扇橋と肩を並べて行く、柳家小三治の姿。

目を閉じると、見えてくるような気がします。

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深まる秋に、扇橋ゆかりの弟子たちが再び集う!~『入船亭一門会』ご案内~ [落語情報]


緊急事態宣言明け、秋晴れの銀座で。

2021年秋一門会チラシくばり.png
一生懸命、落語会のチラシ配りに精出す黒猫こまち。


1年ぶり
池袋での一門会

3月開催予定がコロナ禍で11月へと延期された、昨年の『入船亭一門会』。
そのあたりのことは春の延期から捲土重来、入船亭一門会開催!にて。

今年も芸術・行楽・食欲などお楽しみ盛り沢山の秋、同会場にて開催いたします!

掲載用2021年10月一門会.jpg

『入船亭一門会~面倒見のいい筆頭と、弟・子・甥たちとの素敵な関係』

詳細
☆出演:入船亭扇遊・入船亭扇里・入船亭扇蔵・入船亭小辰・入船亭遊京

☆日時:10月30日(土)18時開演(17時40分開場予定)

☆料金:一律2500円

血よりも濃い?
芸の縁で繋がる噺家たち

今回は一門扇の要・扇橋の筆頭弟子扇遊師と、‶芸の上で様々な関係にある後輩たちが一堂に会する落語会”という趣向。


まだ若かった扇橋に惚れ込んで入門・師匠の教えと芸をしっかり吸収し、今では東京落語界の堂々たる看板の一人。

その扇遊師に、稽古をつけてもらったり・ごちそうになったり・相談に乗ってもらったりしている後輩連。

高座での熱演のほか、後輩それぞれの立場から見た”一門筆頭弟子”を語り合う座談も予定。

楽屋噺から、受勲噺家の意外な一面が明らかになるかも?


今年もあるよ
オリジナルグッズ

『入船亭一門会』のお楽しみは、もう一つ。

今回も昨年同様、会のオリジナルクリアファイルをご用意しました!


前回は俳人でもあった師匠を偲び、弟子たちが「忘年句会」でもらった短冊をコラージュしたデザイン。

2021年10月のクリアファイルは、出演者たちの写真とサインを散りばめ秋らしく仕上げたつもり。

クリアファイルは重宝.png

色んなものを挟んで、普段使いに重宝なクリアファイル。

会当日を前に、当ブログで現物写真を初公開!

こまちさん、皆さんにお見せしてくださいな。

まずは、表。
穴表クリアファイル画像.jpg

今回は、裏にもデザインを入れました。
小裏クリアファイル画像.jpg


このオリジナルクリアファイルファイル、

10月29日までに会への事前申し込みいただいた方には、なんと無料でプレゼント!
※お申込み先
senji1365@gmail.com
090-8455-8996 
いずれも扇治

☆ご予約なしの方には、当日400円(税込)にて販売予定。

落語ファンならずとも手にしたくなるこのオリジナルグッズ、ぜひともこの機会にゲットしてみませんか?


10月30日(土)18時~、池袋演芸場にて。

大勢さまのお運びを『入船亭一門会』関係者一同、心よりお待ち申し上げております。

蔦飾り線.png


お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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