400年前から大人気、江戸のファストフード二種 [江戸のトリビア]
猫に大人気のハンバーガーチェーン『にゃんドナルド』で、テイクアウトのこまち。
江戸の街でも
ファストフード大繁盛
ファストフード大繁盛
新型コロナウイルス感染拡大防止のための外出自粛・飲食店のアルコール抜き時短営業の影響により、爆発的に増えた「テイクアウトできます」のお店。
フレンチの名店や行列のできるラーメン屋さんなど、これまでなら考えられなかったような店が持ち帰りを始めました。
そんな中でまた存在感を増しているのが、元々テイクアウトに力を入れていたハンバーガーショップ・牛丼屋さんといったファストフード店。
そして時代を遡った江戸時代・将軍様のお膝元であるわが国の百万人都市は、ファストフード産業が大繁盛の街でもありました。
なぜ江戸の街でそんなにお手軽外食が流行ったのか、大きな要因として次の三つが挙げられます。
匂いがたまらない!
江戸の一番人気
江戸の一番人気
数ある江戸のファストフードの中で、No.1人気を誇ったのは「天ぷら」。
南蛮渡来の揚げ物・のちにはお座敷での高級料理にも発展していきますが、日本に入って来た時はいたって安価な庶民の味覚でした。
串に刺した穴子・芝海老・こはだ・貝柱・するめ等、一本あたり四文(約80円)が相場。
『串カツ田中』さんのメニューと比べると、素材にもよりますが現代よりかなりお安い価格設定。
天ぷらが流行り出した頃は上方を中心とした油商人の組合が値段を高めに設定する”油カルテル”が強く、胡麻油は大変な高級品。
黎明期天ぷらは、安い獣脂で揚げるのが定番でした。
でもその素朴で刺激の強い油の風味が、かえって庶民の間では大人気に。
のおいしさご存知の方なら、おわかりいただけるでしょう。
街角の屋台で揚げている天ぷらの匂いは、小腹が空いた江戸っ子たちの食欲への訴求力MAX!
匂いの誘惑に耐え切れず、天ぷら屋台に首を突っ込む浪人者。
※鍬形恵斎『近世職人尽絵巻』東京国立博物館所蔵画像を、切り取り拡大して引用。
浪々の身とはいえ腰に二本たばさむ者が、往来で庶民の味にかぶりつくのは気がひけるのでしょう。
浪人、顔を手拭いで隠して食べています。
こちらは務めの合間せめてもの息抜き、持ち帰りして来た揚げ立て天ぷらを前にうっとりの遊女。 ※月岡芳年『風俗三十二相 むまそう』国会図書館デジタルコレクションより、加工して引用。
ひげを生やした食いしん坊お月さまが、空からよだれを垂らさんばかりに見つめています。
スピード重視の
江戸前寿司
江戸前寿司
手軽につまめる寿司も、江戸時代にはよく食べられた屋台の味。
というのが、江戸前寿司成立の歴史。
「早く作って、早く食べられる」。
製法と食事の形態が、究極までスピードアップされているんですね。
製法と食事の形態が、究極までスピードアップされているんですね。
目にも止まらぬ技で寿司を握り、自分で食べちゃう黒猫板前。
当時の江戸前握り寿司のお値段、車海老・白身・こはだ・まぐろ・のり巻き等は一貫四文。その頃は高価だった玉子焼きは十六文。
☆最新技術でコスト削減、リーズナブルな味を提供!コロナ下での衛生管理にも力を入れる、人気No.1の回転寿司チェーンでご紹介した回転寿司チェーン『スシロー』、郊外店の一番安い皿は二貫で110円。
江戸の寿司は一貫約80円、今より高かったのかというそうでもありません。
江戸東京博物館に当時の寿司屋台の模型が展示されており、それを見ると今の寿司よりひと回りからふた回り大きいのがわかります。
そんな食べでがある江戸のお寿司、深川安宅六間堀にあった超人気店『松の鮓』からお持ち帰りのお母さん。
※歌川国芳『縞揃女弁慶 安宅の松』東京国立博物館所蔵画像を、加工して引用。
お子さんが、「早くちょうだい!」、「はいはい、今とってあげますよ」とお母さん。
気をつけて、後ろから食いしん坊猫が狙っていますよ。
お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。 ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
入船亭扇治拝