ふとした言い間違いから、懐かしい公園再訪~噺家たちの”洒落になる高座でのミス”その①~ [落語情報]
うちの近所にある、かわいらしい名前の公園を訪れた黒猫こまち。
言い間違いで思い出す
懐かしい公園
懐かしい公園
中野区弥生町3丁目にある、「ぱんだ公園」。
かたかなで「パンダ」じゃないところが、愛嬌があってまたいいですね。
かたかなで「パンダ」じゃないところが、愛嬌があってまたいいですね。
住宅街の奥まったところにあり、遊具は少ないのですが普段はあまり人が多くない穴場。
私に似て人見知りだった長女と、日曜の午前中よくここへ遊びに来たものです。
私に似て人見知りだった長女と、日曜の午前中よくここへ遊びに来たものです。
滑り台とジャングルジム、砂場だけのシンプルで小さな公園。
そこでのんびり過ごしたあとは、そばにあるパン屋さんで『アンパンマン』や『だんご三兄弟』の形をした菓子パン買って帰るのが楽しみ。
そしてそのパン屋さんの隣にある『やよい動物病院』のガラス張り日向ぼっこスペースにいる、3匹のスタッフ猫ちゃんを眺めるのも子どもたちは大好きでした。
先日病院の前を通りかかると、その1匹が見えるところで昼寝している現場に遭遇。 3きょうだいのうち一番長生きの、15歳になるキキちゃん。
今年の6月にも何枚か撮影させてもらったのですが、すべてガラスへの映り込みが激しくてあまりいいスナップにはならず。
この時は季節が秋に少し近づき陽射しが傾いてきていたのでしょう、ほとんどガラスの反射がありません。
15歳とは思えぬ毛艶、
ピンクの愛らしい鼻先。
ピンクの愛らしい鼻先。
いい写真が撮れた!
嬉しくなってて小走りでうちに帰ると、台所で洗い物をしている女房に報告。
と言った…つもりだったのですが。
笑いをこらえながら、
聞き返す女房。
聞き返す女房。
これはしたり、嬉しさのあまりつい舌がもつれてしまった。
その時は私の頭の中で
という言葉が、”やよい動物公園”と脳内変換されたのでしょう。
という言葉が、”やよい動物公園”と脳内変換されたのでしょう。
ひとしきり夫婦で笑ったあと
ふと気になって、翌日行ってみることにしました。
ふと気になって、翌日行ってみることにしました。
すっかり様変わり
「パンダどこ?」
「パンダどこ?」
近所とは言ってもうちから歩いて10分くらいの場所・そんなに通る方角でもありませんから、本当にしばらくぶりで訪れる「ぱんだ公園」。
この界隈は少し前に大々的な再開発が行われ、すっかりあたりの様子が変わっています。
途中道に迷いながら、なんとか冒頭イラストの看板があるところへ到達。
あれっ、こんなに広かったっけ。
その名の通りパンダの遊具があったのですが、表から見たかぎりでは姿がありません。
ちょっぴり寂しい気持ちで、公園の中へ入って行くと…。
あったあった、
今でもちゃんとありました!
今でもちゃんとありました!
拡張された敷地の奥まったところに、懐かしいパンダとライオンの遊具が。
お色直しのパンダと
いく久しき対面
いく久しき対面
撤去されるどころか、きれいにペイントし直されています。
後ろのフェンスの支柱がちょうど竹のようになっていて、本場中国にいるパンダみたい。
子どもたちが遊んでいた頃は黒いところがほとんどなくなって、なんのオブジェかよくわからなくなっていたのに。
きれいにお色直ししてもらって、良かったね。
取材に同行のイラストこまちも、喜んで乗っからせてもらってます。
隣のライオンも、撮影しておきましょう。
う~ん塗りはきれいになっても、「かわいい」と言うにはちょっと微妙な表情は昔と変わらず。
ま、そこも味があっていいんですけどね。
サラブレッド噺家の、
伝説的言い間違い
伝説的言い間違い
私のふとした言い間違いから再訪の機会を得た、懐かしい公園風景にお付き合いいただいたところで。
さて後半は、落語ネタ。
言い間違い繋がりで、噺家がけっこうやらかす”高座での笑えるミス”をご紹介しましょう。
ミスと言っても先代文楽最後の高座のように悲劇的なものではなく、間違えた当人が「へへへっ、やっちゃったよ」と頭をかく程度の洒落になる失敗。
まず登場するのは、十代目・金原亭馬生。
名人古今亭志ん生を父に、志ん朝を弟に持つ超サラブレッド。
池波志乃さんの、産みの親でもありますね。
池波志乃さんの、産みの親でもありますね。
その馬生師匠が、NHKラジオ『真打ち競演』スタジオ録音でやらかしたとんでもない間違い。
演目は『子別れ(下)』。
訳あって離れ離れになっていた職人夫婦が、倅を仲立ちにしてまたよりをもどす…という後味のいい噺。
その子どもの名は「亀ちゃん」。
その子どもの名は「亀ちゃん」。
ところが馬生師匠、魔が差したのかふとした勢いなのか…。 噺に入っていきなり
うっかりこう言っちゃった。
うっかりこう言っちゃった。
「金ちゃん」も子どもの名として落語によく出てくるので、つい混同したんでしょうね。
自らの言い間違いに気づいた馬生師匠、名人ですから驚きません。
そこから本来「亀」と言うべきところをすべて「金」に変えて演じてきたのですが…。
さすがに途中で疲れてきたのでしょう、後半いつの間にか子どもが「亀」に戻ってしまっていたのです!
サゲを言い終わって下りてきた馬生師匠にディレクターが
言ったら
名人莞爾と笑い。
名人独自の理論にNHKディレクターも、
そのまま、放送しちゃったという…。
伝説的な逸話が、楽屋に残っています。
大らかで、のんびりした時代だったんですね。
時代を超える
人間国宝の至芸
人間国宝の至芸
続いては私どもの大師匠にあたる、人間国宝五代目・柳家小さんのエピソード。
高座でのミスのうち、必要な伏線を張ることを失念する”仕込み忘れ”の間違い。
落語の「仕込み」については、 ☆噺家ならではのセンスが光る「効き」~『第4回web版言の葉落語会』開きその⑩~ 内の互選動画で小ゑん師匠が言及しています。
人間国宝が仕込み忘れた噺は、
『引っ越しの夢』。
こんなストーリーの後半・女中部屋への潜入に失敗した男たちが真っ暗な台所でゴソゴソやってる様子に、奥様が目を覚ます。
ってんで、手燭を持って見回りに。
台所まで来て気配に気づき
奥様が灯りを向けるとそこには、着物の前をはだけた番頭はじめ男連中の姿が…。
とならなくてはいけないのですが、なんとこの時の小さん師匠。
寝所を出る時奥様に手燭を持たせるのを、すっかり忘れてしまっていたのです!
寝所を出る時奥様に手燭を持たせるのを、すっかり忘れてしまっていたのです!
手ぶらで台所へ差しかかった奥様、灯りを向けようとして何も持っていないことに気づき。
そう言いながら、やおら片方の手で壁のスイッチを”パチッ”。
明るくしてみせたという…。
江戸時代が舞台の噺にいきなり電気の照明が出て来ても、お客様は(小さんがやるんだから、こういう演出もあるんだろう)納得して大笑いしていたそうです。
さすが、のちの人間国宝。
時代を超越してますね。
時代を超越してますね。
こんな笑える高座でのしくじりエピソードは、ほかにもございますので。
また記事をあらためて、ご紹介したいと思います。
お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。 ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
入船亭扇治拝