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ひらがなの並び順は、「アイウエオ」だけじゃない!~名エッセイにインスパイアされた、超呑気な「新・いろは歌」~ [お気に入り・おすすめ]


風通しのいいお座敷で、こまちは手習いの稽古中。
こまちの手習いはちゅ~る.jpg

大事な半紙にそんなこと書いたら、そりゃ先生に怒られるよ。


名エッセイスト
もう一つの代表シリーズ

当ブログ前記事
長寿人気エッセイに負けじと挑む、”呑気で壮大な観察記録”~あの人気おやつと、猫との関係を再検証~
で、私の大好きな食にまつわる楽しいエッセイ『丸かじり』シリーズをご紹介。

その著者・東海林さだおさんには、もう一つ長期連載のイラスト随筆があります。
文藝春秋「オール讀物」での、『男の分別学』

月一の連載が何本かまとまると、四六判ハードカバーでまず刊行・約3年後に文庫化。

志賀直哉・中島敦らの名文を読み込み、培われた文章力はこちらのシリーズでも絶好調。

毎回ユニークな切り口の題材を、軽快でユーモラスな筆致に乗せて料理してくれます。

数ある作品の中にはたとえば、わが家のような猫同居家庭にはたまらないずばり『猫大好き』なんてタイトルのものも。

猫大好き (文春文庫)

猫大好き (文春文庫)

  • 作者: 東海林さだお
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 2017/08/25
  • メディア: Kindle版

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楽しく読める
”呑気な不条理小説集”

今回は東海林作品の中で、ちょっと毛色の違うこちらをご紹介。
アイウエオの陰謀紹介.jpg
単行本1995年・文庫1998年刊の、『アイウエオの陰謀』。

この本には他のエッセイ集よりも、より小説テイストの強いものが収録されています(イラストも、著者自身ではありません)。

それも
☆電気ポット全盛の時代に、年代もののやかんがわが身を振り返る『やかんの告白』。
☆日々時を刻み続ける、時計の秒針の独白『秒針日記』。
などなど、カフカの『変身』のようないわゆる”不条理小説”の、楽しいパロディになっている短編が17本。

『広辞苑の隣人』なんて、その発想力にはホント頭が下がります。

私は毎回これを読み直すたび、わが家の国語辞典をつい広げてはニヤニヤ。

残念ながら現在は絶版中ですが、中古品はまだまだ手に入りやすいようです。
アイウエオの陰謀 (文春文庫)

アイウエオの陰謀 (文春文庫)

  • 作者: 東海林 さだお
  • 出版社/メーカー: 文藝春秋
  • 発売日: 1998/02/10
  • メディア: 文庫
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「アイウエオ」
「いろは」そして…

作品集のタイトルになっている『アイウエオの陰謀』は巻頭に置かれていて、読み始めから抱腹絶倒まちがいなし。

ふだん私たちが当たり前のように使っている”あいうえお五十音順”という概念について、大真面目な語り口で再考察する独特の東海林ワールド。




今回この記事を書くために読み返してふと思いついたのが、「あいうえお」が定着する前のひらがな並び順・「いろは歌」のこと。

当時使われていたひらがな
現在の46文字より「ゐ」「ゑ」が多く、「ん」が少ない47文字
を、意味のある七五調の歌に乗せて覚えやすくしたもの。
いろは歌.jpg
10世紀末から11世紀後半にかけて、仏教典の一部をもとに詠まれたという説が有力。

冒頭イラストのこまちみたいに手習いする子は、このいろはを半紙が真っ黒になるまで重ね書きしてお稽古したのだそうです。




そんな日本古来の習慣に、新風を吹き込もうと。

作家・翻訳家にして敏腕ジャーナリストである黒岩涙香が、自分が主宰する新聞『万朝報』紙上で明治36年に懸賞募集した
「いろはに代わる、まったく別のかな詠みこみ歌」。

全国から多く寄せられた力作中、一等に輝いたのは「とりな歌」と呼ばれるこの作品。

とりなくこゑす 
ゆめさませ
みよあけわたる
ひんかしを
そらいろはえて
おきつへに
ほふねむれゐね
もやのうち

鳥啼く声す
夢覚ませ
見よ明け渡る
東を
空色映えて
沖つ辺に
帆船群れゐぬ
靄の中

※この時には、「ん」もかなの中に含まれるようになっていました。

ちゃんと意味が通って、七五調の見事な歌にまとまっていますね。


「こまち歌」に挑戦!

久々とりな歌に触れた私の脳裏に、突然電撃のようにある考えが浮かびました。
うちの「こまち」で始まる、新しいかな歌ってできないかな?

思い立ったが吉日、さっそく裏紙にボールペンで文字を並べて頭をひねります。

こまち歌眺める.jpg

午前中の3時間ほどで、なんとかでっちあげたのがこちら。
最初のこまち歌.jpg

自分で作っただけでは間違いが絶対あると思ったので、手近にいた第三者・女房に校正を依頼。

その結果案の定、ダブっている文字と足らない文字があることが判明。

よろしければ初稿はどこが違っていたのか、皆様も探してみてください。

☆「こまち歌」没バージョン
こまちさかんに
たはむれあかぬ
ひるよなつふゆ
とくわすれし
みてやらね
そこへもう

めの えいをおぼえけり


それからさらに、時間と紙を費やすことしばし。
七五調とまではいきませんが、なんとか意味はぎりぎり通じるかなという歌らしきものができました。

謹んで、以下に披露させていただきます。

☆初公開「こまち歌」
こまちさかんに
ひるよなつふゆ
あきぬたはむれせし
すわ とくみてやらね
そへもう
めのゐろ
えいをおほえけり

こまち盛んに
昼夜夏冬
飽きぬ戯れせし
すわ、疾く見てやらね
其へもう
目の色
酔いをおぼえけり

※「ゐ」「ゑ」「い」は本来の文法とは違いますが、その辺はご容赦を。


う~んわれながらかなり苦しいですけど、解釈としては…。

ああ、うちの黒猫こまちは昼夜分かたず四季問わずよく遊んで飽きぬことよなぁ。

ほらほら、急いで見てやっておくれ。 そこんとこでもう、遊びのアドレナリンとおやつのCIAOちゅ~るに酔いしれた猫が。

満足して、目がトロンとさせているよ。

てな感じになりますか。
半眼のこまち.jpg


突然の思いつきですが、考えている間はけっこう楽しめました。

皆様も、頭の体操に一度挑戦されてみては?


蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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