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あの名作CMコピーが呼び覚ます、超有名人の気遣いエピソード [日々雑感]


毎日といっていいほど私たちの目や耳に飛び込んで来る、CMの宣伝文句
それは、「時代を映す鏡」。

日々上書きされる、
私たちの記憶

『第4回言の葉落語会』での雑俳兼題のひとつ、有名CMのキャッチコピーを言い換える「地口附」。 句をこしらえ始めてみたら、「どんな宣伝文句があったか」意外とすぐには思いつきません。

『OH!モーレツ!』『はっぱふみふみ』なんて古いのはけっこう出てくるのですが、「最近流行ったのは?」と考えてもなかなかパッとひらめきませんでした。

人に聞いたりネットで調べたりすると、
「ああ、糸井重里の”おいしい生活”。あったねー」
「”24時間戦えますか”、みんな歌ってたなー」
思い当たるんですけどね。

私は普段あまりテレビを観ない方ですし、記憶力の衰えもあるのでしょうが。
人間は「慣れの生き物」だからだろうなとも思います。 最初は新鮮だった新しい刺激も、日がたつと当たり前になっていく。

CMの作り手たちは、お客様の耳目を惹くようなインパクトのある謳い文句を次から次へと発信。
どんどん新しいキャッチコピーに記憶が上書きされて、古いものは記憶の倉庫の片隅へ。

その時代の流行や風俗・社会情勢を色濃く反映しているCMほど、時間の経過とともにセピア色になりやすい。



してみると、時代を超越しているたとえばこんな宣伝文句。
すごいと思います。


かっぱえびせん.jpg

「やめられない止まらない」と聞けば、条件反射で「かっぱえびせん」口をついて出てくるほど。
世代を問わず、全国民の身体に染み込んでいる名コピー。


これから暑い季節に入るとお世話になる、この商品のCMもそうですね。

蚊遣りこまち.jpg

このキャッチコピー、
正しく言えますか?

そしてこちらも時代を超えて多くの人がご存知であろう、この謳い文句。
『ゴホン!といえば』
はい、これに続く商品名は?
3秒以内にお答えください。

こまち3連アイコン.png

正解はもちろん、こちら。
龍角散.jpg
なのですが…。

実は恥ずかしながら私、今回この惹句が頭に浮かんだ時に別の商品と混同。
言葉も正確に憶えていなくて、『ゴホンといったら』と思い込んでいました。

それでは私の勘違い、恥を忍んでカミングアウト。
『ゴホンといったら』

浅田飴.jpg

この手紙は、いったい誰から?

ここで突然、話題が変わります。
龍角散と浅田飴のCMをごっちゃにしていた失敗談を、ごまかそうというわけではございません。あとでちゃんと、話はつながりますので。




まずはこのイラストをご覧ください。
郵便配達こまち.jpg

当ブログでは色んな経験をしているイラストこまち、今日は郵便屋さんかい?ご苦労さま。


受け取った封書の宛先部分を、アップにしてみましょう。
手紙宛先.jpg

皆さんこの字を見て、どう思われましたか?
「なんだか右肩下がりで、あんまりうまい字じゃないなぁ。 それに手紙の相手を”クン”呼ばわりするなんて、これ書いた人はちょっと常識足りないんじゃない?」
そうお感じになられる方、けっこう多いのでは。
いや、ぜひいったんそう思っていただきたい。(ここんとこ、落語『千早ふる』)
よろしいですか?

それでは、大勢の方が「下手な字で、非常識な人」が書いたんじゃないかと思われた(つもりの)手紙。
裏を返して、差出人名を見てみましょう。

デケデケデケデケ…
(ドラムロールのつもり)。
じゃーん!
手紙差出人.jpg

封筒の裏面に、墨跡鮮やかに記されたその名は
「永六輔」

ここでつながる浅田飴

永六輔といえば、
☆日本のみならず、世界中で愛されている名曲『上を向いて歩こう』『見上げてごらん夜の星を』などの作詞家

☆黎明期テレビの、放送作家兼出演タレント

☆長寿ラジオ番組『誰かとどこかで』パーソナリティ

☆『大往生』など著作も多数の、マルチ文化人

そして1970年代から長く、浅田飴CMのキャラクターとしても親しまれていました。
「せき・声・のどに、浅田飴」独特の台詞回しの永さんの声、多くの方の記憶に残っていることでしょう。

私は子どもの頃、名曲を数多く世に出している方とはつゆ知らず。永六輔=「浅田飴のおじさん」と思ってたくらい。



そんな永さん出演のテレビCM、録画映像が2本YouTubeにアップされています。
https://youtu.be/lgBxRz7lJdk
https://youtu.be/mkTxuo8yIw8

またhttps://www.asahi.com/ads/asadaame2019/では浅田飴CMの後継者・さだまさしさんが、雑誌『話の特集』掲載のイラスト広告を画像とともに解説。

※上記URLは掲載者の都合により、予告なく削除される場合があります。ご了承ください。

あの超有名人が
「前座でも宣伝係でも」

さて無事浅田飴の方が片付いたところで、話を手紙に戻しましょう。

師匠・入船亭扇橋が俳句や落語会を通じてお付き合いさせていただいていた関係で、私たち弟子も永さんには本当に色々とお世話になったものです。

今回ご覧いただいた封書の中には、こんな便箋が一枚入っていました。
ゲスト券.jpg
<證>
スケジュールを
あわせてくれれば 

前座でも 
宣伝係でも 

永六輔 
扇治クン

う~ん見ればみるほど、味のあるいい字だなぁ。
こんな有名人から親しく「クン」で呼ばれて、光栄!
誰ださっき、下手な字とか非常識だとか言った人は。
反省しなさい。




さてこの文面は、どういうことかというと…。
ある年の元日、永さんがTBSラジオで長時間特番のメインパーソナリティを務めた時。
「出演料は出ないけど、宣伝になるかもしれないから。お正月スタジオに寄って、小噺とか謎かけでもやってくんないかな」
永さんの実家・浅草のお寺での落語会の、二つ目出演メンバーに永さんがこう声をかけてくれていました。

全国区のラジオでお喋りできるなんて、私のような弱小噺家にはめったあることではありません。
喜んで正月年始の途中、仲間数名と紋付袴姿で赤坂のTBSへ。

「おや、お正月らしく着物姿の噺家さんたちが遊びに来てくれましたよ。 それじゃあさっそく皆さんに、おめでたいネタ披露してもらいましょう!」
永さんみずからの名前振りで、拙いお喋りをちょいとやらせていただき 「どうも、失礼しましたー!」 あっという間にスタジオを後にします。

それから1週間後、その時のメンバー全員に先ほどお見せした手紙が届きました。
永さんいわく、
二ツ目とはいえ、プロの噺家に芸を披露してもらってタダというのは商売の理に反する。
そこでお礼として、一枚につき一回「永六輔を無料で使うことができる」この證書を送ります。

子どもが親や祖父母にあげる”肩叩き券”の、すごくスケールのでかい版ですね。

師匠の縁でお近づきになれた、雲の上の超有名人。その方が、タダで
「前座でも、宣伝係でも。なんでもやらせてもらうから、気軽に声かけてね」
衷心から、言ってくださる。
涙が出るほど、ありがたいお言葉。

浅草生まれで、芸事がお好きだったお父様の影響もあったのでしょう。
噺家に限らずすべての芸人に、理解と敬意をもって向き合ってくれたのが永六輔という人でした。




そんな方と何度も旅にも行っているのに、あの頃は無精して日記もつけていなかったのはまことに残念。

押し入れの奥に、師匠が撮ってくれた写真なかったかな…。

そういったものが見つかりましたら、また永さんとの想い出も綴ってみたいと思います。

蔦飾り線.png

お開きまで
お付き合いいただきまして、
まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

※『第4回言の葉落語会』皆様からのご投句は、5月23日まで盛大に受付中。
詳細はhttps://senji-1365.blog.ss-blog.jp/2021-04-25をご覧ください。

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