落語の稽古を巡る、面白エピソード2題~「クラゲ」「ライオン」「猫」で、三題噺? [落語情報]
初めて訪れた水族館で、神秘的に漂うクラゲに魅せられたこまち。
こんな、食らい意地張った輩がいますから。
優雅にフワフワしているようで、クラゲもなかなか大変。
優雅にフワフワしているようで、クラゲもなかなか大変。
同じように呑気に思える、私どもが高座で演じる落語。
先人からの口伝で受け継ぐ芸は、やはりそれなりの苦労もあったりします。
先人からの口伝で受け継ぐ芸は、やはりそれなりの苦労もあったりします。
思い出深い落語『動物園』
令和3年3月下席昼の部、池袋演芸場の出番をもらっていた私。
日替わり出演の3日目、高座を下りてくると2本後の柳家小せん師が支度中。
日替わり出演の3日目、高座を下りてくると2本後の柳家小せん師が支度中。
まるで熟練の外科医みたいな手つきで、着物を広げていきます。
小せん師は、当ブログ重要コンテンツの一つ・「web雑俳」のメンバー。
コロナ疲れを、雑俳のテーマソングで吹き飛ばそう!では、素晴らしい歌声を披露。
あの気詰まりな「ステイホーム」の期間を、明るく爽やかに盛り上げてくれました。
コロナ疲れを、雑俳のテーマソングで吹き飛ばそう!では、素晴らしい歌声を披露。
あの気詰まりな「ステイホーム」の期間を、明るく爽やかに盛り上げてくれました。
その小せん師に、二ツ目が稽古を頼みに来ます。
教わる噺は、
『動物園』。
先代小せん師匠の、十八番の一つ。
教わる噺は、
『動物園』。
先代小せん師匠の、十八番の一つ。
昔の「ポンチ絵」みたいなストーリーが、とぼけた味の先代小せん師匠によく合っていました。
稽古中、突然心霊現象が?
その先代小せん師匠から教わった、三遊亭吉窓師に。
二ツ目時代の私、『動物園』を稽古していただきました。
二ツ目時代の私、『動物園』を稽古していただきました。
教わった場所は、新宿末廣亭二階の小座敷。
お席亭一族の仏壇があるところから、「仏間」と呼ばれている6畳ほどの部屋です。
お席亭一族の仏壇があるところから、「仏間」と呼ばれている6畳ほどの部屋です。
私が相対して座った私の前で、まずマクラからサゲまで。
本番さながらの調子で、『動物園』を演じてくれる吉窓師。
本番さながらの調子で、『動物園』を演じてくれる吉窓師。
一席終わったあとは、「なんか、わかんないとこある?」という質疑応答タイム。
その中で、主人公がやるライオンの歩き方。もう一度丁寧に、吉窓師がコツを教えてくれました。
その中で、主人公がやるライオンの歩き方。もう一度丁寧に、吉窓師がコツを教えてくれました。
さすが、ライオンの仲間こまち師匠。
うまいもんだねー。
うまいもんだねー。
私の方も、見よう見まねでお手本のようにやってみて
「こう、ですか?」
「んー、もう少し脚ゆっくり出した方がいいね。 こんな感じ」
「こう、ですか?」
「んー、もう少し脚ゆっくり出した方がいいね。 こんな感じ」
吉窓師と二人、至近距離で向かい合い。
両の握りこぶしを畳につけて、のそのそライオン歩きをしていると…。
両の握りこぶしを畳につけて、のそのそライオン歩きをしていると…。
カタッ、カタカタッ。
脇の仏壇から、
物音が聞こえてきます。
すわ、心霊現象か!
物音が聞こえてきます。
すわ、心霊現象か!
ぎょっとした二人が、音のする方へ目をやると…。
つい熱が入り、オーバーアクションでライオンの仕草をやっていたので。
その振動で、仏壇内の初代席亭・北村銀太郎大旦那のお位牌が。
カタカタ、
揺れていたのでした!
その振動で、仏壇内の初代席亭・北村銀太郎大旦那のお位牌が。
カタカタ、
揺れていたのでした!
私が柄にもなく感動してそう言うと、吉窓師。
う~ん、確かに言われてみれば。
互いに30前後の男ふたり、狭いとこで向かい合って。
互いに30前後の男ふたり、狭いとこで向かい合って。
「ライオン、こうですか?」
「いや、
もうちょっとこんな具合に」
「いや、
もうちょっとこんな具合に」
やっている姿。
傍から見れば、笑っちゃうかもしれませんね。
傍から見れば、笑っちゃうかもしれませんね。
ここで再び、クラゲ登場
その時楽屋にはもう一人、柳家喬太郎師が出番待ちしていました。
古典に独自の新作に、卓越した技を発揮。
全国各地で引っ張りだこの、超売れっ子噺家。
全国各地で引っ張りだこの、超売れっ子噺家。
当日撮った写真は、3月25日付Twitter に投稿してありますので。
ここでは、元日の寄席で一緒だった時の画像を。
ここでは、元日の寄席で一緒だった時の画像を。
ちょっとダレながらカメラ目線くれる喬太郎師と、
鏡に映る、紋付袴姿の撮影者。
池袋の楽屋で、私が小せん師に『動物園』稽古時の話をしていると。
それを聞いていた喬太郎師、
面白いエピソード、
語ってくれました!
語ってくれました!
あの大看板が、
「クラゲなら、こう…」
「クラゲなら、こう…」
もともとは、三題噺だったこのメルヘン落語。
絵本にもなっている、喬太郎ワールドを満喫できる現代の名作です。
絵本にもなっている、喬太郎ワールドを満喫できる現代の名作です。
以下、喬太郎師・談。
「ある地方の会で、これかけたんですけど。
あたしその頃は、クラゲの仕草。
広げた両手、身体の幅くらい離して…。
こう、胸の脇に垂らしてやってたんですよ 。
あたしその頃は、クラゲの仕草。
広げた両手、身体の幅くらい離して…。
こう、胸の脇に垂らしてやってたんですよ 。
そん時うちの師匠(柳家さん喬)も一緒で、袖であたしの高座見てたんですね。
で、下りてから師匠が
で、下りてから師匠が
~両手を伸ばし、肩から柔らかく動かして。”クラゲの脚”を表現してみせるさん喬師匠~
うちの師匠のこれがまた、「藤間のクラゲ」だからきれいでうまいんですよー!」
※さん喬師匠は、日本舞踊・藤間流の名取り。
※さん喬師匠は、日本舞踊・藤間流の名取り。
うむ、確かに!
普段から、高座での立ち居振る舞いが端正な落語協会大看板。
その方のクラゲなら、歌舞伎座の舞台でも映えるほど美しいことでしょう。
その方のクラゲなら、歌舞伎座の舞台でも映えるほど美しいことでしょう。
ウケた私がそう言うと、「いやぁー…」喬太郎師苦笑してましたが。
超売れっ子噺家と、
親しくこんな会話ができる。
親しくこんな会話ができる。
やっぱり楽屋って、
呑気でいいなぁ。
実感した、久しぶりの寄席出演でした。
呑気でいいなぁ。
実感した、久しぶりの寄席出演でした。
おしまいに、オマケ。
さん喬師匠とのエピソードは、 寝坊な連中決死の早起き!噺家の正月風景 扇治独演会告知もあり!の記事でも取り上げております。
さん喬師匠とのエピソードは、 寝坊な連中決死の早起き!噺家の正月風景 扇治独演会告知もあり!の記事でも取り上げております。
そして絵本『母恋くらげ』も読んで、ますますクラゲが気に入った黒猫こまち。
自分も、クラゲになってみちゃいました!
自分も、クラゲになってみちゃいました!
溺れんなよー。
お開きまで
お付き合いいただきまして、
まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
お付き合いいただきまして、
まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝