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あの有名な牛にまつわることわざの、真実に迫る! [江戸のトリビア]


令和3年年明けも、早いものでもう松のとれる頃となりました。

でも黒猫こまちのお正月は、
まだまだ終わりません!
お雑煮食べ倒れ.png

江戸時代から続く
「食べてすぐ寝ると牛」

冒頭からお雑煮をお腹がはち切れんばかりに食べて、ひっくり返っているこまち。

食欲旺盛なのはけっこうだけど、

「食べてすぐ寝ると、
 牛になっちゃうよ」。

丑年の令和3年、「牛に引かれて善光寺詣り」と並んでよく使われる言葉かもしれません。

国内のことわざ・古事成語を集めた
『俚言集覧』(
寛政9年 1797)

飯を食らいて直に寝ると牛になる。これは小児を誘導する諺なり。

こう記載があることから、江戸時代半ばにはもう人口に膾炙していたことがわかります。

私も幼い頃、両親から厳しく言われました。

でも、この教えとまるであべこべなことわざも。

こちらも大切、食後の休憩

「親が亡くなっても食(じき)休み」
「食後の一睡万病円」

こちらも、昔から言われている教え・ことわざ。

『万病円』は落語のタイトルにもなっている、江戸の万能特効薬。「万の病を丸めて直す」が謳い文句。
万病円.png

「腹の皮が突っ張れば、目の皮がたるむ」とも言いますね。

食事をすると、胃をはじめ消化器官がフル稼働。 脳への血流が控えられるので、どうしても眠気をおぼえる。

ごく自然な、生理現象。

頭があまり回らない状態で何かしても、効率が良くない。

消化器官が働いている間、当の人間はしばし横になって休息

それは火急の際にも心がけたい、万能薬にひけをとらない健康法。

「一睡万病円」「食休み」はこのように、いたって合理的な教え・生活の知恵なのです。
おばあさんの膝の上食後.png

では「食べてすぐ寝ると牛」の方は、根拠のない俗信・間違った言い伝えなのでしょうか?

大事なのは、食後のけじめ

前項の問いへの答え、

「間違ってはいません。
 根拠もあります」。


江戸時代に、
国内の風俗習慣などをまとめた
『嬉遊笑覧』
(
文政13年 1830年)には

飽くまで食らいて寝れば牛になると小児に教えるは食後に臥さしめざるなり。

と書かれています。

この文章を読み解くと、

「食べてすぐ横になる」=丑の「ある行為」を想像させ、行儀が良くないのでよしましょう。

となります。

その行為とは、こちら。
牛さん反芻.gif

牛の反芻行為。

かなり時間がかかるので、牛さん寝そべった状態でやることが多いですよね。

複数の胃袋を持ち、何度も口中と消化器官を往復させて食事する。そんな牛たちには、必要な行為ですが。

人間が食後の挨拶もそこそこに、まだ口に食べ物を頬張ったままごろんとその場に転がる。 どうしたって、いい図ではありません。

焼き芋のかけらを口に入れたまま寝ちゃうような子どもが多かった、その昔。 だからこそ幼いうちにそんな癖がつかないよう、身近にいる大人がしっかり教える。

とても大切な、
戒めの言葉だったのですね。

「食べてその場ですぐひっくり返る」のは、食事を調理・提供してくれた人に対して失礼。 また、食材となってくれた命にも礼儀を尽くしていない」。


行儀の面だけでなく「口中にまだ何か頬張った状態で横になる」のは、健康管理上危険な行為でもあります。

お正月だったら、餅を喉につかえさせたり。 最悪「逆流性胃腸炎」「誤嚥性肺炎」なんて物騒な症状の、引き金になるかも。

結論、
「食べてすぐ寝ると牛になる」は

「口の中にまだ食べ物があるうち、横になるのは礼儀上論外である」。
「食後横になるなら礼をきちんとし、口をゆすいだり身繕いをしてからにしなさい」。

という意味。

「食後一睡」「食休み」と、立派に両立する教えなのです。

車の両輪、どっちも大切。


こまちも、お腹いっぱい食べて元気なのは大いにけっこう。

でもお行儀悪くしてると、
こんなふうになっちゃうぞ。
食べてすぐ寝る牛になる.gif



皆様も牛たちのように、
しっかり食材噛みしめて。

命の恵みに感謝しつつ、
楽しく栄養を摂って。

余裕のある時は、
のんびり食休みも取りつつ。

豊かな食事で、身体も心も幸せにしてあげましょう!

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、
まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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