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ようやく巡って来た「コロナ明け」高座(1) 支度篇 [落語情報]


外出自粛・テレワーク出勤で「電車の乗り方忘れちゃった」という言葉、けっこう耳にします。
先日久しぶりの高座で出かけた私も、それを実感しました。

生涯最長不倒(おそらく)の開店休業期間


2020年6月23日(火)は私にとって、一生忘れられない日になるでしょう。 新型コロナウイルスの影響で落語の仕事がすべてキャンセルになり、人前でお喋りしなかった期間・実に93日間
やっとこの日、人前で落語を演じる機会を得たのです。

児童向け書籍では『十五少年漂流記』と表記されることが多いジュール・ヴェルヌの名作、原題は『2年間の休暇』
船が難破して無人島で漂着した少年少女たちが救出されるまでの700日余りをうまく言い表した、洒落た題名だと思います。

「93日間の長期強制休業」、もちろん私にとってこんなに高座に上がらなかったのは初めてのこと。
これまでで一番長く落語を喋らせてもらえなかったのは、数年前のゴールデンウィーク。

仕事の依頼も寄席の出番もなんにもなかった私は、「18連休」というカレンダー以上の優雅な休暇を過ごしたことがあります。
今回はそれを遥かに上回る3ヶ月以上の開店休業、この先何年現役でできるかわかりませんがおそらくこれよりヒマなことはないでしょう。
もしあったら、それこそ引退を考える時でしょうね。

素人っぽさが慕われた、扇橋のおかみさん


私の現場復帰最初の高座は、江東区常盤2丁目のデイサービス施設でのボランティア。 出演料が発生しませんから厳密には「仕事」ではありませんが、落語をやらせてもらうことが今はとにかくありがたい。
当日に向けて噺の稽古はもちろん、袷と単衣の着物の入れ替えなど準備を進めてきました。

「交通費実費のみ頂戴する」約束になっておりましたので、スマホの乗り換え案内アプリで現地へのルートを事前に検索。 自宅から最も近い京王線笹塚→都営新宿線森下が最短、料金片道398円(交通系ICカード利用時)。
電車に乗るのは、3週間ぶりくらい。 ちゃんと、迷わず行けるだろうか。 Suicaのチャージのしかた、憶えているでしょうか。

前日からかなり心配で、胸がどきどき。 遠足を控えた子どもか、テレビの『初めてのお使い』みたい。
そんなことを考えていて思い出したのが、師匠・扇橋のおかみさんが電車に乗る時の大騒ぎぶり

噺家の女房の中には、志ん朝・金馬師匠夫人のように仲間を招いて宴席を張ったり麻雀をしたりするのがお好きな人もいます。 でもうちのおかみさんは、まるでそんなことには縁のない人でした。 とても明るくて社交的な人なのですが、亭主の仕事である落語の世界とは意識して距離を置いてましたね。

噺家の女房は、あくまでも内助の功という考え。

「扇橋師匠のおかみさんはいつまでも妙に業界ずれしなくて、初々しくていいね」
と、飾らない「素人っぽさ」を慕う芸人もけっこういました。

三遊亭好楽師匠が『笑点』のレギュラーになってからも律儀に盆暮れの挨拶に来てくださってましたが、そのたびにおかみさん大はしゃぎ

「まあ!まあほんとに好楽さんだ!テレビとおんなじだよすごいね!こんな有名な人にうちみたいな狭いとこ来てもらって、いやーほんとにすまないねー。
あっちょっと待って!今色紙持ってくるから、子どもとあと一緒にトリム体操やってる友だちにサインもらっていい?」

おかみさん、自分のご亭主も落語と俳句の世界では「有名な人」なんですよ と傍で見ていてツッこみたくなること、何度もありました。

電車に乗るのに、ひと騒動


扇橋夫人は普段の買い物のほか、あまり出歩くたちではありませんでした。 ひとたび用があって電車で出かけるとなると、前の日から大騒ぎ。 書き物をしている師匠に何度も

「秋葉原で緑の電車に乗り換えるんだったら、東中野で黄色い電車の真ん中へんに乗ればいいんだっけ?」
「浅草で東武電車乗るんだけど、地下鉄の何番出口から行くのが一番近いの?」

確認怠りなく。

当日いざ出かける段になると、前座の私はよく東中野駅まで行かされました。 荷物を持ったりするのではなく、目的地までの料金をお釣りなくきっちり渡され

「扇べいさん!じゃ私あと5分くらいしたら出るから、先に行って切符買っといて!

ということになるわけです。
「東中野から先は大地が切れて、水がザーザー流れてる」 と信じてるかのようなおかみさん遠出の大騒ぎ、今は懐かしいですね。

勝負風呂敷で、しっかり支度


おかみさんと同じくらいどきどきして迎えた、93日ぶりの高座当日
余裕をみて到着時刻の1時間半前にはうちを出ることに。 自粛が始まってから伸ばし始めた髪を整え、いよいよ着物の支度。

広げた風呂敷は、一番気に入っている『横浜高島屋落語会』第20回記念でもらったもの。気分を盛り上げたい時はよく使う、私にとっての「勝負風呂敷」。

小高島屋風呂敷.png

中に入るのは帯・羽織・着物・長襦袢。 小物は扇子と手拭い・下締めに匂い袋。 下着を上に置いて・・・うん、着物の支度のやり方忘れてないな

でも本当にしばらくぶりだから、緊張して手が震えてやりづらいな。
えっ、こまちが猫の手貸してくれる?
そうかい、じゃあ出かけるの遅くなっちゃいけないから頼もうか。 くれぐれも、爪を立てないようにね。

イエッサー!

風呂敷を包むこまち.gif

いやいや、一緒に行くとデイサービスの人たちに喜ばれて「うちの子になんなさい」って言われちゃうから。
こまちは、お留守番だよ。
蔦飾り線.png

さあ猫が手伝ってくれた荷物をしょって、いざ93日ぶりの高座に出陣。
果たして、ちゃんと務めることができるでしょうか?
続きは、また別記事にて。

またのご訪問、お待ち申し上げております!
入船亭扇治

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web雑俳 お客様互選結果「冠沓附」発表 [web雑俳]


数多くの作から句を選びぬき、作を引き立てる「効き」を付けてくださったお客様のご投稿。
前記事に続き、今回はもう一つの兼題に寄せられた互選を公開いたします。

噺家たじたじ 句も効きもお客様優勢


『第2回web版言の葉落語会』洒落附で天地人・雲隠し(色っぽい句)に採られた句、圧倒的に噺家よりお客様の作が多数
お世辞抜きで、本当に皆様お上手です。
お客様チームと噺家連中で天に抜けた数競おうかという案もあったのですが、やらなくて正解。

また効き・添えてくださった方は自句も実に秀逸、番頭として互選結果整理作業も楽しみながら進められました。
師匠・扇橋は俳句上達法として
俳人噺家が伝授する「俳句がめきめき上達する」二つのコツ
でご紹介した二つのほか
「とにかく、人の詠んだ句にもたくさん触れること」
を挙げていましたね。

今回500を超す秀句・麗句をシャワーのように浴び、私も皆様も全身これ雑俳色に染まっていることかと。
できるだけ早い時期にまた次の兼題で遊んでいきたいと思いますので、今後とも古今亭駒子師の『スピリッツ』シリーズと合わせ『web/リアル言の葉』ご贔屓賜りますようお願い申し上げます。

もう少し整えたかったレイアウト


前回は投句・互選ともとにかく早くまとめてお目にかけようと根を詰めすぎ、
緊急告知 web雑俳再訂正と、テレワーク過労にご注意
でご報告した通り体調を崩したりミスが頻発したりしました。

その轍を踏まないよう第2回は慌てず焦らずゆっくり作業させていただいておりますが、あまり結果発表まで間が開いても興ざめ。
整理できたところからの順次公開で、「次はどの句が選ばれるんだろう」日替わりで楽しんでいただけましたら幸いです。


Excelはアメリカ製表計算ソフトですから、
Excel縦書きトラブルなんのその web雑俳記名式投句一覧を発表
で書きましたように縦書き万能ではありませんし、Word等のようにかゆいところに手が届く文字・文章管理もできません。

今回互選結果をまとめていて一つ心残りだったのが、
「効きと句の間にもっと微妙な行間を開けたかった」 という点。

Wordなら行間の指定は簡単にできますし、Excelでもセルへの直接入力でなくテキストボックスへの入力にすれば複雑な行・文字間管理は可能。
でも今回はそこまでやっている時間がなかったのでセル内で効きと句が、小池都知事が目を三角にするほどではありませんが若干「密」な関係に。

セル内文字列の行間を開けるには、「文字の配置」から
・均等割り付け
・両端揃え
の二つの方法があります。

行間広げ互選.JPGでも行間を細かく文字のポイント数で指定してあげるものではなく、あくまでセルの中での文字列の配置をいじるだけ。試しにお客様互選結果の一部を「セルの両端揃え」してみると、今度はかなり間延びした隙間が。 これでは効きと句が、天の川に隔てられた織姫と彦星のようでかわいそう。

またこんなに間を開けておくと、箱の中や家具と壁の間のように隙間大好きなうちの黒猫こまちが喜んで入っていってしまいます。


こんな具合に。

互選結果こまち.gif

ですから今回はこのレイアウトでご容赦ください。
時間のある時効きと句を別セルで入れるとか、また考えますので。
それではこのあと続きます噺家選者たちの互選も、どうぞお楽しみに。
蔦飾り線.png

いよいよ明日(6月23日)は、私にとって実に98日ぶりで落語の仕事がある日。
新たな日常への移行期間、お試し「落語出前」はいかが?
の記事ご覧になったデイサービス施設の方からのご依頼。
心して、務めてまいります。 その模様なども、当ブログで発信できましたら。

それではおまたせいたしました。
「冠沓附」お客様互選の結果は、こちら。
第2回冠沓附お客様互選

お開きまでお付きいいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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第2回web雑俳 お客様互選結果「洒落附」 [web雑俳]


粋な言葉遊び・雑俳をネット上で楽しむ『第2回web版言の葉落語会』。
集まった句からご希望のお客様には噺家と一緒に優秀作を選んでいただくのが、この企画売り物のひとつ。
お寄せいただいた互選結果から、今回は「洒落附」のお客様選をご紹介。

句を選ぶのは、詠むのと同じくらい難しくそして楽しい


俳句を嗜んでおりました私の師匠・扇橋は生前よく

「俳句は自分で詠むのもそうだけど、ほかの人の句を選ぶのはそれなりの経験と技術がないと難しい。 またそれだけに慣れてくると、選句という作業はとてもやりがいがあり俳句の楽しさが深まる

と言っていました。
雑俳も俳諧の一つですから、この言葉はそのまま当てはまります。

さらにほかの短詩文芸と違うのは、互選の際に添える
「効き(キキ)」
「自句」
があること。

効きは採った句を引き立て自分の解釈を表す、七七の短句
※「冠沓附」だけは句を七七で詠みますので、効きが五七五の長句になります。
「自句」は、互選発表の時に新しく詠んだ選者自身の句。
句の一覧・地巻には多くの作が載っていますから、そこにはない題材・切り口で作ると周りを「やるねぇ!」と感心させることに。

宗匠が選をしたためてくれる帳「本巻」が巻物だと、自句は一番おしまいに書き芯に近いところにありますから
軸=自句
の洒落にもなっているんですね。

「洒落附」お客様互選結果


今回は記入フォームからのご投稿となっておりますので、メール本文でいただいた時より転記ミスが起きる確率はかなり下げられたのではないかと。
それでももし作者の方のお名前などミスがございましたら、お手数でも
irifuneteiyuuiti@yahoo.co.jp 扇蔵
までご一報ください。できるだけ早く修正します。
蔦飾り線.png

それではお待たせいたしました。
まずは「洒落附 寄席・落語に関するものごと一切」のお客様互選結果を、今回は発表いたします。

どんな句をお選びになったのか、
効きはどう付けてあるのか。

そういったところに注目して、皆様の選をお楽みください。
そして選に入られた方々に、惜しみない拍手をお送りしましょう!


うちのこまちも、皆様が端末閉じられるまで力いっぱい手を叩いてます。

色付き拍手こまち2.gif

気になる互選結果は、こちたから。
第2回洒落附お客様互選

お開きまでお付きいいただきまして、まことにありがとうございます。
このあとも引き続き互選結果の順次発表、落語情報や江戸のトリビア・イラストや写真とともに綴る日々雑感と猫の話題でご機嫌を伺います!
入船亭扇治拝

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あの名人の知られざるエピソード再び! [落語情報]


2001年63歳の若さで惜しまれつつ旅立った、
名人・古今亭志ん朝。
粋で華やかな大看板の、今だから明かせる楽屋噺。

懐かしのテレビCM


毎回楽しい話題や動画を提供してくれる三遊亭金八師から、
あの大名人噺家の新事実発掘?それとも黒歴史?~今だからしみじみ懐かしい 昭和の寄席風景(2)~
に続いてあの名人の面白エピソードが届きました。
【以下、金八師からのメールを転載。ただし当ブログの品位を保つため、文章の一部を伏せ字にしております。】

蔦飾り線.png

志ん朝師のバスピカCM動画です。
●志ん朝師匠!幻のCM第二弾!「バスピカ」動画を遂に発見 
1977~1988津村順天堂CM集
先日、志ん朝師の「バスピカ」の広告をお伝えしましたが 遂にCM動画を発見しました!
いやぁ、若い。40歳になったかならないかの志ん朝師 清潔でちょっと「粋な職人」といった雰囲気もあり・・・

二本目の動画の最初の笑顔もゴキゲンだし 最後の「明日の朝は、お風呂ピカピカ」
と ちょっとクサ目に鼻の穴おっぴろげて(笑)セリフを言っているところが個人的に何ともおかしいです。

これは永久保存版!


三遊亭金八が見た矢来町の思い出

①前座の頃、新宿末広亭の夜席。中入りになって志ん朝師を囲んで 楽屋でバカっ話。上演中は末広の楽屋は高座と隣り合わせですから、会話も声をひそめかげんですが、中入りだと高座に気を使う必要もないのでついボリュームが大きくなりがち

そこへ持ってきて話題は「酒の失敗談」。最初は軽い話がだんだん盛り上がり、しまいにはオ◯ッコウ◯コをお漏らしした(笑)というレベルにエスカレート。

またよりによって居合せたのが歌奴師、しん平師など楽屋話も一級品のオカシサの面々ですから
「オレ、なんかこんなところで洩らした」
「それならいいよ、オレなんか・・・」
小学生の自慢大会のレベル!(笑)。

その時の志ん朝師が自分がウ◯コを漏らした時の話が最高におかしくって輪を掛けて大騒ぎ!キャアキャアやってたら・・・
木戸からのインターホンが「プー」。取ったのがタテ前座だった柳家桂助兄(現・一琴師)。

プー音で
「いけねぇ!うるさかったかな?」
師匠方が一瞬シーンとなった。
そこで受話器を置いた桂助兄が一言
「志ん朝師匠・・・うるさいです!」

アタシは腹の中で大笑い。

ハネてから末広の純子ねえさん(当時お席亭・杉田恭子さんのお嬢さん)が 「中入りの時、何あれ!。志ん朝さんの声が一番うるさかったわよ!」・・・ 志ん朝師匠ウ◯コ自慢で寄席をしくじるという一席でした。



②1993年の平成5年夏の住吉踊り。アタシはタテ前座。
太鼓を叩いていたのがやはり前座の橘家亀蔵(現・圓十郎)。 またこの太鼓がセコくて(笑)。
「こりゃ言わなきゃダメだな!」・・・

アタシが太鼓部屋に行って戸をガラっと開けて背中に一喝
「おいっ!何だその太鼓!」。
くるっと振り返った顔を見ると叩いてたのは
「志ん朝師匠!」(笑)

一瞬、間があって志ん朝師が一言「ゴメンよ」だって(笑)。
「志ん朝師匠、前座に小言を言われ謝る」の一席でした。

人手不足だった私の前座時代


金八師、珍しい動画発掘と楽しいネタを軽妙な文章で紹介してくれて、どうもありがとう。
今度「鳥貴族」でごちそうするね。

②のエピソードで思い出したのが、私扇治の前座時代。
ひと口に前座といってもランクがあり、一番下が「高座返し」。座布団やメクリを返す・奇術や曲芸の道具を運んだりします。

上から二番目に古いのが「太鼓番」、出囃子・曲芸や紙切りなどの地囃子の太鼓を担当。 そして一番のベテランは「立て前座」と呼ばれ、誰がどんな演目をやったか帳面につけながら寄席の番組全体の差配をする重要な役割。

私が見習いから楽屋入りした時は、記録的に前座が少ない年でした。
バブルが始まりかけ景気がいいんで、噺家なんてよほど酔狂な者でないとなり手がいなかった時期。

ただでさえ入門者が少ないところへもってきて小三治・円窓・小朝という「破門トリオ」が弟子の首をバッサバッサと切ったんで、本当にぎりぎりの人数で寄席の楽屋を回してました。
普通なら立て前座になるのは楽屋入りして2~3年たってからですが、人材払底の折から私が立てをとったのは入門後1年未満

旧池袋演芸場の立て机(ネタ帳をつけるための座卓)に向かっている私を見て先代歌奴師匠が
おやっ、今日の立ては扇べいさんかい。
驚いたねこりゃ。一人でだいじょぶかーい」
『船徳』をもじって冷やかしてました。

なんだあの太鼓は!


ある日の鈴本演芸場昼席。 楽屋その時の前座メンバーは
・立て:入船亭扇べい(扇治)
・太鼓番:三遊亭にいがた(白鳥)
・高座返し:林家きく姫 
という、今見返してもぞっとする手薄な布陣。

でもなんとか三人で力を合わせ、大きなしくじりをすることもなく(小さいのはたくさんあった)1時間ほどが過ぎた頃。 高座に曲芸の師匠方が上がり、ずっと太鼓を叩いていたのが現・白鳥師。 今でこそあんなに立派になった白鳥師ですが、前座時代あまり太鼓がうまくない・いやはっきり言えば「超ヘタ」な人でした。

でもほかに人がいないので、舞台袖で眼鏡を拭きふき一生懸命演奏しています。
それを楽屋で聴いていたのが、 古今亭志ん輔師匠。 芸はもちろん、色んな邦楽を習ったり鳴り物にもとても厳しい方。 白鳥さんの調子っぱずれな太鼓にイライラしながら指で机を叩いてましたが、ついにこらえきれなくなり

「おい扇べい、お前そこで偉そうに立て机に寄っかかってる場合じゃないだろう。あのお囃子が聴こえないのか? なんなんだあの馬鹿セコな太鼓は。 あれじゃ三味線が合わせにくいし、何より高座の師匠方の間が狂っちまう。

太鼓打ってるにいがたとそっちは、同期だろ? だったら香盤関係なく臨機応変に、太鼓番が鳴り物苦手だったら上の者でも代わってやるんだよ。
あーもう聴いちゃいられない。ほらボーッとしてないで、立てはにいがたにやらせてお前が太鼓叩いてこいよ!」 

えらい剣幕で怒られたのですが・・・。
音痴な私も鳴り物の腕は、白鳥師と五十歩百歩。 「あんまり変わらないと思うんだけどなぁ」 大先輩のお小言を聞かないわけにはいきませんから、舞台袖に行き白鳥師に事情を話して太鼓番を交代。

3分ほど演奏したところで、志ん輔師匠が苦笑いしながら舞台袖に。
「俺が悪かった。どっちが叩いてもおんなしだったんだな。じゃあこの高座は、俺が太鼓打つから」
私は丁重に頭を下げて、バチを大先輩に。

そこからは、華麗なバチさばきで演奏する志ん輔師の独壇場。 あの時の曲芸の師匠方、後半はさぞやりやすかったことでしょう。

ここでうちの黒猫こまちが寄席が開場する時の「一番太鼓」披露したいそうなので、ちょっとだけ聴いてやってください。

蔦飾り線.png

前座時代の想い出にひと時浸っているうち、『第2回web版言の葉落語会』互選・選句締切が近づいてきました。
ご投稿いただいた結果はできるだけ早くまとめて順次公開してまいりますが、22日から私もちょっとだけ忙しくなりますのでお時間頂戴しますこと、ご容赦ください。

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。 せひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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新しい箱を本能で占拠 猫と箱の素敵な関係(2) [猫のいる風景]


人間の子どもと同じく、猫は狭いところへ潜るのが大好き。
我が家の黒猫こまち、また新しい箱をゲットしてご機嫌。

箱を愛してやまない、うちの猫


猫は隠れて獲物を狩る本能から、家具の隙間や段ボールなど箱の中に入り込む習性があります。 生まれながらにして箱好きなのが、猫という生き物。

「いえうちの子は箱大嫌いです、宅配便の箱を見ると毛を逆立てて怒ります」 という猫は、カレーライス大嫌いな人間の子どもと同じくらい少数派でしょう。

手作り戦車には及ばずとも 猫と段ボールの素敵な関係(1)
家電量販店、一部売り場休業でもネット通販に活路
の記事で書きましたように、人(猫)一倍箱を愛するこまち。

家電の段ボール箱から菓子折りの空き容器まで、「箱」と名がつけば大きさを問わずまず入って居心地・遊び勝手を確認。
気にいればしばらく所有権を手放しません。

我が家のあちこちには大小の箱が散乱しておりますが、決して私や家族が無精なわけではないのです。
こまちの別宅や秘密基地ゆえ、勝手に移動・処分の権限を人間は与えられておりませんので。

とりあえず、隠しておいたのに・・・


6月19日現在うちで一番新しい箱は、
さらば愛用プリンター 新たな日常へGo!

の記事でご紹介した、brother製プリンター複合機の入っていた箱。

私が購入したDCP-J577Nという機種は、同時期のPRIVIOシリーズ3モデルの中で最下位スペック・最低価格の商品。
娘用に同じものを触ってみて気に入ってはいるのですが、ひとつ心配なのが電源コードが本体取付け型なこと。

コードの抜き差しができませんから根元で断線したりすると、プリンター本体がピンピンしていても電源が入らないためただの箱になってしまいます。

プリンターはけっこう場所を取るので 先代のhp製Photosmart5510は一時、しばらく使わない時は箱に入れてロッカーの上のデッドスペースに置いたりもしていました。

新しい機種はコンセントからプラグを抜いて動かすといかにもコード根元に負担がかかりそうですから、最初から据え置きのつもり。

したがって空いた箱もいずれこまちにあげるつもりだったのですがひょっとしてまた仕舞わなくちゃならない時もあるかもと、とりあえずいったんいちばんこまちが上がりづらい場所に避難させておきました。
空き箱ぎゅうぎゅう.JPG

散らかっててすいません。 うちが狭いのでロッカーの上に普段使わないものがぎゅうぎゅう。 エアコンがほとんどふさがってしまっています。

左下にちらっと見えているのが、
噺家たちのお宝で、心を豊かに
で触れた師匠・扇橋が私の真打ち昇進の時に詠んでくれた句の直筆短冊。

どこでどう察知したのか・・・一気に新しい箱奪取


プリンターの空き箱を置いた場所は、今までこまちが立ち入ったことがないエリア(その直前までは来たことがある)。
猫は、意外とまめに働く管理人
の記事参照。 あそこなら安心だとブログ記事を書いていると・・・。

匂いを頼りなのでしょうか、一度も見せたことがない箱の所在をどう嗅ぎつけたのか隣の部屋からこまち乱入
えらい勢いでロッカーの上に駆け上り、止める間もなく空き箱に頭から一気にもぐずり込んで行きました。

まるで敵陣に匍匐前進で突入する、『コンバット』のサンダース軍曹みたい。 見事な電撃戦で、こまち新しい空き箱攻略。
まあどうせあげるつもりのものですから、怒ろうとは思いません。

ブログの題材に、働いてもらいました


でもせっかくだからTwitterやブログのネタにできないかと、椅子に乗って箱の中を覗いてみました。 声をかけると、少しだけ顔を出します。
ひっこむこまち.jpg

「こんないいのあるのに、なんでアタシに黙ってたの?」 恨めしげに訴えると
ブラザー覗くこまち.JPG

今度は怖い顔で 「もう、もらったからね。返さないからね」 と自己主張。
こわいこまち.jpg

ハイハイ、あなたにあげた箱だからいいんだけど、黒猫が暗いところに潜ったままだとよく見えないんだよね。 お客様サービスで、少し動いてみてくんないかな。

やらせというわけではありませんが、お気に入りの紐で誘ってみます。

それなりの働きはしてくれました。

少しでも気に入ったのなら、この箱そのうち下ろしてゆっくりこまちに遊ばせてあげよう。
きっとこんな感じで、こっちを驚かせてくれるでしょう。


ブラザーの箱こまち.gif


蔦飾り線.png

今日も猫のいる幸せを感じつつ、日が暮れていきます。 お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝




※『第2回web版言の葉落語会』互選・選句募集は6月20日23時59分まで。 よろしければ
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からご投稿ください!お待ちしております。

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