雨に唄うよ、猫の恋 [猫のいる風景]
緊急事態宣言の対象が全国に拡大されましたが、人間以外の生き物たちはいたって平常心。
鳥はさえずりネズミは残り物を狙い、モグラは日の光に目を細める。
犬を散歩させている人は緊張や自粛疲れの面持ちでも、リードの先の当犬は元気に尻尾を振って歩いています。
猫たちも普段と変わらず…と言いたいのですが、この時期はちょっと様子が違う。
そう、俳句の季語にもなっている「猫の恋」の季節なのです。
そう、俳句の季語にもなっている「猫の恋」の季節なのです。
中野区南台で、愛を叫ぶ
うちの近所は飼い主のいない猫が増えないようにと、ボランティアの方々が野良ちゃんを保護して避妊・去勢手術を施す「地域ねこ」活動が盛んな地域。
手術を受けた猫たちは耳のところに目印がついて、いたって穏やかな「空即是色」を会得した様子で表を歩いています。
春は猫が繁殖のために恋の相手を探し出しますので、地域ねこになっていない個体が毎夜毎夜あの独特の声で鳴きながらあたりを徘徊。
幼い子から「ネコちゃんなんであんな声で鳴くの?」と聞かれて、返答に困った親御さん多いことでしょう。
私が住んでいる中野区南台3丁目で発情したメスがいるらしく、反応したオス猫がこのところうちの周りで盛んに愛を訴えて自分をアピールしています。
庭から入ってきてぐるっと我が家の軒下を、
アオオオ~ん
というあの何とも切なげな声をあげながら。
アオオオ~ん
というあの何とも切なげな声をあげながら。
雨の日も風の日も、猫の恋には休みなし
うちの倅はもう高3でそういった大人の事情は何となくわかってきていますから、「ネコちゃんなんで?」とはもう聞きません。
それどころか猫のあの声には、かなりの理解と共感を示しています。
それどころか猫のあの声には、かなりの理解と共感を示しています。
ある雨風の強い晩。
親子三人でつましいけれど和やかな夕餉の膳を囲んでいると、やってきました例の尻尾の生えたロメオが。
親子三人でつましいけれど和やかな夕餉の膳を囲んでいると、やってきました例の尻尾の生えたロメオが。
あおーン
あおおーン
あおあおあお~ン
あうぐぅあぅあおにゃ~~ん
あおおーン
あおあおあお~ン
あうぐぅあぅあおにゃ~~ん
まるで落語『二番煎じ』の夜まわりのように、声が遠くから次第に近づいてきます。
火の用~心ー、さっしゃいやしょうーっ…。
火の用~心ー、さっしゃいやしょうーっ…。
表は、ぼしゃぼしゃ音をたてて大粒の雨が降っています。
夕方から風も強まり、今では家と塀の間を
ビューっ
うなりを上げて強風が吹きぬけていきます。
夕方から風も強まり、今では家と塀の間を
ビューっ
うなりを上げて強風が吹きぬけていきます。
人間だったら、こんな夜は一歩だって外へ出たくないでしょう。
そのさなかに「あおお~ん」と愛を叫びながら、濡れネズミいや濡れネコになって表を風に逆らいつつ歩く姿を想像し、
「いくら恋のためとはいえ、大変だなぁ」
私が言うと倅。
そのさなかに「あおお~ん」と愛を叫びながら、濡れネズミいや濡れネコになって表を風に逆らいつつ歩く姿を想像し、
「いくら恋のためとはいえ、大変だなぁ」
私が言うと倅。
「いやお父さん、いくらなんでもこんな晩は、猫も傘さして歩いてんじゃね?」
お、我が息子ながらなかなかうまいこと言うじゃないか。
傘さして歩きながら、好きな相手への愛を唄っている猫。
私の脳裏からは、繁殖本能のためずぶ濡れになって徘徊している人間からするとなんだか可哀想な猫の姿は消えて代わりに…。
ジーン・ケリーの、あのミュージカル映画の名シーンが甦ってきたのです。
♪I'm singin' the rain・・・
なんだか、楽しそう。
猫ながら、風流なものだねぇなんていいながら盃を重ねていると…。
猫ながら、風流なものだねぇなんていいながら盃を重ねていると…。
その時、風は吹いた
あお~ん
声がちょうど私たちが食事をしている部屋の表へさしかかった時。
声がちょうど私たちが食事をしている部屋の表へさしかかった時。
グおおおおーんッ!
3階建ての家が揺れるほどひと際強い風が吹いたきたとたん、表で
3階建ての家が揺れるほどひと際強い風が吹いたきたとたん、表で
ふんギャアアアアアーっ
えらい鳴き声をあげながら、猫が走り去っていく様子。
どうしたのでしょう?
「庭の木の枝とか、なんか風に飛ばされてきたものがぶつかったんじゃないか?」と猫を気遣う私に、倅がまたちょっと気の利いたひと言を。
どうしたのでしょう?
「庭の木の枝とか、なんか風に飛ばされてきたものがぶつかったんじゃないか?」と猫を気遣う私に、倅がまたちょっと気の利いたひと言を。
「さしてた傘、飛ばされたりして」
ウン、さっきのと併せてうちの子にしちゃ上出来だ!
ブログのネタに使えるぞ!
ブログのネタに使えるぞ!
目指せPVランキング上位!!はまぁ置いといて。
私は仕事が無くて倅は休校中で家内はその二人を持て余してお疲れの様子でも、こんな他愛のない会話で笑えるのは幸せなことなのでしょう。
笑いやユーモア、こういう時だからこそ大事にしたいとあらためて思った雨の夜のエピソード。
ちなみに、我が家の飼い猫こまちはお年頃の女の子ですが既に手術をすませているので表でロメオがどう騒ごうがいたって平常心。
色気より食い気の、うちのお嬢さまなのでありました。
こまちのエピソードは、こんな記事でもご覧いただけます。
ほかの記事でもたいていイラストで登場しているので、お時間ございましたらブログ内回遊してってやってください。
またのご訪問、お待ち申し上げております。
入船亭扇治
入船亭扇治