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入船亭扇橋の初公開音声 第2弾 [落語情報]


ご好評にお応えし、稽古音声を蔵出し。


寄席と各地の会がお休みで落語ロスの方々に少しでも喜んでいただければと公開した、私の師匠が稽古をつけてくれた音源
多くの方に聴いていただき、いくらか落語の渇きを癒すお役にたてたようで幸いです。




機会があればまたというファンの方からのご要望もあり、天国の師匠に再度登場願うことと相成りました。
自分の語りでお客様がコロナ疲れをひと時忘れてくださるなら、扇橋自身も「俺が稽古してやったテープ、勝手に使いやがって」とは言わないでしょう。


前にお届けした『寿限無』の音源は噺家見習い中の私に初めてつける稽古だからと、前座としての心構えなど現代にも通じる精神論について師匠がこんこんと言い聞かせてくれた箇所を抜粋。


今回はがらり様子が変わって、落語を演じるための具体的な技術論を語っているテープからお聴きいただきます。
平成3年7月28日、二ツ目になってしばらくたった頃教わった噺。


この演目で国立演芸場第52回花形演芸会銀賞を頂戴した、私自身にとっても想い出深い一席。


その演目は『口入れ屋』


落語『口入れ屋』あらすじ
江戸の大きな古着商の店へ、ある日口入れ屋(働きたい人に奉公先を仲介する、昔のハローワーク)から大変に器量のいい娘さんが紹介されてやって来る。
さっそく職権を濫用して気を引こうとする番頭はじめ、住み込みの男の奉公人たちで店は蜂の巣をつついたような騒ぎ。

お互い牽制し合いながら一同、昼間の疲れから皆寝入ってしまう。
夜中にたったひとり目を覚ました二番番頭、これは天の配剤と女性の奉公人が休む中二階へこっそり忍んでいこうとするが…。



東京では『引っ越しの夢』という題名でやることが多い、元は上方ネタ。
扇橋がやっていたのは、先代三木助が橘の円を名乗って大阪にいた時向こうの噺家から教わってきた形。


冒頭に『引っ越しの夢』にはない口入れ屋の場面が元ネタほどのボリュームでないが入っているので、師匠は『口入れ屋』でネタ帳につけるよう前座に言ってましたね。


音源は本編を語り終わった扇橋が、それぞれの箇所の演出方法を語っている部分。


器量のいい女の奉公人に番頭が、

「帳面どがじゃかにして店の品物融通してあげるから、その代わりあたしがお得意先から酔っぱらって帰ってきて間違ってお前さんの部屋に入る、なんてことがあったらそん時は…ね?」。


というくだりの説明が終わって、夜這いをかける男が中二階の梯子段・台所の吊り戸棚でしくじる場面についての話にかかっていくところ。

江戸期の吊り戸棚は、天井から2本の縄でじかに吊ってありけっこう不安定なもの。それを頭にいれたうえで、お聴きください。



対面の稽古だからわかる、仕草の立体的な見せ方


いかがでしたでしょうか。
音声だけではわかりにくいと思いますので、イラストもご覧いただきましょう。
引っ越しの夢.jpg


お客席からそれらしく見えるように、「芸のウソ」でデフォルメして演じる。これはお互い顔を合わせての稽古ですから教えてもらえること。


師匠も忙しかったり自分がしばらくやってない噺だと、「とりあえずこれで筋だけ覚えてやってろ。折があったらそのうち聴いてやる」なんてことがないでもなかったですが、たいがいは丁寧に教えてくれましたね。


いい歳をした男が二人向かい合って
「師匠、こうですか」
「そうじゃない、こうやるんだ」
エアー吊り戸棚を担いでいる姿。
はたから見ると笑ってしまうかもしれませんが、一生食っていけるだけの財産を渡す・譲り受ける作業。


呑気に見えて噺家の稽古、なかなか大変なところもあります。


蔦飾り線.png


師匠から仕草について教えてもらった想い出はもうひとつあるのですが、あまり長いのはご迷惑。
またの機会に譲らせてくださいませ。


お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。

よろしければ、また覗いてやってくださいね。

お宅に居ながらにして噺家と粋な洒落で遊べる企画も準備中。

コロナ疲れを粋な洒落で吹き飛ばそう!
こちらもよろしくお願いいたします。

入船亭扇治

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