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コロナ禍で閲覧禁止続く図書館 [日々雑感]

政府からの第一次イベント自粛要請が出されてから数日たった3月初め、返却期限の来ている資料を返しに近くの中野区立南台図書館に行きました。


と正面入り口前に、

「新型コロナウイルス感染拡大防止のため3月15日まで、資料の返却・予約資料の貸し出し・利用者カードの登録変更のカウンター業務の他以外のサービスを中止させていただきます」

の大きな掲示が。


いずれこういった措置がとられるとは思っていましたが、もう少し先だろうとたかをくくって図書館のホームページをチェックしていませんでしたので、ちょっとびっくり。

貼り紙に「返却だけならブックポストへお入れいただいて結構です」と書いてあることでもあり、別にその時館内に入らなくても用は足りたのです。


しかし、私も「司書噺家」を名乗らせていただいている身。
ここで非常時の図書館を視察せずしてどうする!と自動ドアから館内に足を踏み入れると、そこには異様な光景が広がっていました。



まるでリアル『図書館戦争』ものものしい雰囲気の「立ち入り禁止」



入ってすぐ左手には、厳重にマスクをした職員の方がふたり座っているカウンター。
その奥の一般書・新聞・雑誌、向かいの児童書・絵本それぞれのコーナー前に張られた


トラロープ.png


俗称トラロープ。
不用意に入ると危険な工事や事故・事件現場で使うものですね。

それが2本交差する真ん中には大きく
立ち入り禁止
の貼り紙が。

職員以外は完全に、書架と閲覧スペースには入れなくなっていました。


トラロープの黄色と黒は「警告色」と言われる配色。
生き物が本能的に「危険」を感じる色ですから、ふだん平和でのどかな館内にはそぐわない。
ましてや「立ち入り禁止」の札は、すべての利用者に開放された図書館ではいちばん縁遠いはずのもの。


私も大好きな有川浩さんの大人気シリーズ『図書館戦争』。
それを原作とした実写の劇場版映画では、北九州の図書館を2週間借りて撮った迫力の戦闘シーンが出てきます。


著作・創作物を徹底的に管理・弾圧しようとする「メディア管理委員会」の特務機関と、表現と閲覧の自由を守る図書館の自主防衛部隊との闘い。

本の並んだ書架の前で登場人物たちが銃を構えるシーンは
図書館と銃火器
という現実では考えられない取り合わせに、フィクションならではのインパクトがありました。

それと同じくらい本来ならありえないはずの
ロープで封鎖された図書館
を目の当たりにしあらためて、
「ああ、やっぱり今はふだんとは違うんだな」と。


私にとっては、
トイレットペーパー・ティッシュペーパーが消えて、空っぽのドラッグストア店頭の棚。
ネット上で高額で転売されるマスク
などと並んで、コロナ禍の影響を象徴する風景でした。


ダメもとで写真撮らせてもらえませんかと職員の方に頼んでみましたが、「公共の施設内ですから」と断られました。
まぁ当たり前ですけどね。


代わりに、我が家の愛猫「こまち」を狂言回しのイラストにしてみました。
記事のおしまいに貼ってありますのでご覧いただければ。



制限下でも、最低限のサービスは受けられるが…



私の住んでいる中野区の図書館からのお知らせ。




おはなし会等のイベントのみを中止というところもありますが、全国では上記と同様の対応をしている図書館が多いのではないでしょうか。

サービス制限中でも、ネット経由か電話で欲しい資料を予約・リクエストして受け取ることはできます。


私もこれを機に読み返したくなった小松左京の『復活の日』や、担当しているカルチャー講座で使う資料をネット予約で取り寄せて読むことができ、そういう意味での不自由は感じていません。

でも逆に言うと制限下の図書館で読めるのは、あらかじめ「これ」と決めた本だけ。
自分のまるで知らない本とは、出会えないのです。



「本のセーフティネット」



人は
読みたい本
必要な資料
だけを求めて図書館を訪れるのでしょうか。


私は時間が空いた時ふらっと図書館に行って、特に目的を決めずに
「なにかいい本ないかな…」
と書架を眺めるのが大好きです。


書店でももちろんそうですが、棚に並べられた本を見ていると中でひと際背表紙が「読んで読んで!」と訴えかけてくる1冊に出会うことがあります。

(これを私は勝手に
背表紙が光って見える
と表現してまして、また別の記事でも触れたいと思います。)


それまでまるで知らなかったのに、たまたま縁あって手にした本が気にいって読んでみたくなる。
本好きにはたまらない、新しい1冊との出会い。


書店で気にいった本を無尽蔵に買うことは、よほどの大邸宅に住む大金持ちでないと経済的・収納空間的に無理でしょう。
でも公共サービスの図書館なら、奇跡の出会いをした本を貸し出し期限内は手元に置くことができる。


賃貸住まいの弱小芸人にして本好きの私にとって、図書館は
読書のセーフティネット
なのです。


また、気軽に本と出会えるように



図書館の閲覧禁止で、いちばん困っているのは小さいお子さんのいるご家庭ではないでしょうか。

まだ自分で読みたい本がわからない幼いうちは、図書館で実際に絵本などを手にとったり読み聴かせしてもらってお気に入りの本と出会うことが多いと思います。


私がサービス制限のことを知らないで図書館へ行った時見かけた、たまたまやはり通常開館していると思って来た親子連れの方。

お母さんから説明を受けてふたり兄弟のお兄ちゃんの方は辛抱していましたが、下の子は
「なんでご本のあるとこ入れないの!」
涙まじりでお母さんに訴えてました。


中野区内の図書館サービス制限はとりあえず3月いっぱいですが、ウイルス感染状況でこの先どうなるかは不透明。
今はただ全国の本好きの人が、1日も早くまた気軽に本の顔を見に来られるようになるのを願うだけ。


うちのこまちも
「次は漱石と『旅猫リポート』読みたいニャン!」
と心待ちにしています。



こま図書館.jpg



お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。

扇治

セントラルアパートさんによるイラストACからのイラストを、背景に使わせていただきました。


スマートフォンでお読みの方、上下に広告入ってすいません。










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