町の人々に愛され続ける、置戸の美しい図書館~2024年道東ツアー報告その②~ [旅のアルバム]
北海道置戸町図書館前に立つ黒猫こまち。
今夜はここで、筆者の落語独演会が開かれるのです。
機能的かつ温かみのある図書館
『オケクラフト』のブランドで木の工芸品を展開する置戸町は、エゾ松・樺・タモなど良質木材の産地。
その地元木材を贅沢に使った図書館は、ゆるやかなドーム状屋根が印象的な建物。
その地元木材を贅沢に使った図書館は、ゆるやかなドーム状屋根が印象的な建物。
正面玄関入ってすぐ右側には、本物の薪ストーブが置かれた多目的スペースが設けられています。
こまちは同じ黒色なので、このストーブがひと目で気にいったよう。
落語会用のセッティングが完了した、薪ストーブ広場。
ここでは演奏会・講演会などが不定期で開催され、閲覧スペースとリンクした独自のイベント会場として利用者の方に親しまれています。
天井が高く窓が広くとられた、明るく開放感に満ちた館内。
金属と木の梁を組み合わせたデザインは機能的でありながら温かみも感じさせ、新規オープン翌年の2006年には日本図書館協会建築賞を受賞しました。
利用者に配慮した配架
置戸町図書館が斬新なのは建物のデザインだけでなく、開架資料の並べ方にも独自の配慮がなされています。
それは、図書館職員の方々が「面出し」または「表紙見せ」と呼ぶ展示方法でのひと工夫。
それは、図書館職員の方々が「面出し」または「表紙見せ」と呼ぶ展示方法でのひと工夫。
面出しとは「ゴールデンゾーン」=人間の目が届きやすい範囲に、表紙が見えるように本を立てた状態で棚に並べること。
「おすすめ本」「新着本」などを紹介するのに図書館ではよく使われる配架法です。
背表紙だけよりも面出しされた本の方が情報量が多いので手にとられやすくなるという利点がある反面、棚の奥に立てかけるので資料が奥に引っ込んだ形になりそこだけなんだかスカスカになって見栄えが良くないという弱点も。
それを避けるためにブックスタンドを立てて並べたり専用の陳列棚を使ったりもしますが、いずれにしても備品を増やしたり設置場所を考えたりしなくてはなりません。
置戸町図書館では可動式の棚板を使った書架を導入することで、面出しの弱点を効率よく克服。
書架の棚板は手前に引き出し立てた状態で固定することができ、通常配架・面出し配架を柔軟にレイアウトすることが可能。
小さい子どもや車椅子の方向けに低い位置にも面出しコーナーを作るなど、資料の陳列展示の幅がぐっと広がりました。
置戸の地で社会教育ひと筋30年以上のベテラン司書・森田はるみさんはこの書架の導入を含め、図書館設計の段階から何度も関係業者のもとに足を運び納得のいくまで相談したそうです。
そんな熱意が形になった美しい図書館は蔵書数12万冊・館内配架数6万冊という資料数を誇り、1980年前後には5回に渡り利用者一人当たりの年間貸し出し冊数が全国一になったことも。
置戸図書館の原点は、戦後間もない1948年。
本を愛する若者たちによって結成された「青年読書会」のメンバーたちが互いに持ち寄ったり、リヤカーを引いて地域を回り寄贈を募ったりして集めた本を公民館の一室に並べて閲覧・貸し出しをしたのが始まりです。
本を愛する若者たちによって結成された「青年読書会」のメンバーたちが互いに持ち寄ったり、リヤカーを引いて地域を回り寄贈を募ったりして集めた本を公民館の一室に並べて閲覧・貸し出しをしたのが始まりです。
それから76年。
今もなお森田さんのように熱心なスタッフの方々が大事に運営し、町の人々に愛され続ける素敵な図書館。ぜひまた機会があったら、落語で呼んでいただきたいもの。
その時はゆっくりと、薪ストーブのそばで本も読んでみたいな。
今もなお森田さんのように熱心なスタッフの方々が大事に運営し、町の人々に愛され続ける素敵な図書館。ぜひまた機会があったら、落語で呼んでいただきたいもの。
その時はゆっくりと、薪ストーブのそばで本も読んでみたいな。
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※館内の画像は、すべてスタッフの方の許可を得て撮影・掲載しております。
入船亭扇治・記
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