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江戸の頃から変わらぬ空を、今年も泳ぐよ鯉のぼり [江戸のトリビア]


徳川家の端午の節句の模様を想像して描かれた、『江戸砂子年中行事 端午の図』(一部)。
江戸砂子年中行事端午図こまち.jpg
絵の右上に見えるのは、元気よく泳ぐ真鯉と黒猫こまち鯉。

町人階級の縁起物
紙製鯉のぼり

江戸時代初期から男子のいる武家では、端午の節句に家紋入りの絹幟や五色の吹き流しを揚げるのが習わしとなりました。邪気を避け、わが子の息災を祈念するもの。

時代も中期になると江戸の街では大商人などが力を持ち、町人の富裕層は武家のように端午の節句の縁起物を飾りたいと思うようになります。
しかし町人階級は飾り物に紋を入れることも絹の使用も禁止されていたため、庶民の知恵で代替物として考えられたのが和紙の「鯉のぼり」。威勢のいい鯉は川から滝を昇りさらに天に上がって龍になるという、中国の登龍門伝説に因んだ江戸町人オリジナルの縁起物。
続清鉋の鯉のぼり.jpg
出たての頃の鯉のぼりは、このように鍾馗様とセットで揚げられることが多かったそうです。

江戸時代の鯉のぼり.jpg
この鯉のぼりは幕末のものなので色がついていますが、それまでは黒しか許されませんでした。
有名な浮世絵・安藤広重『名所江戸百景 水道橋駿河台』に描かれた鯉のぼりも、武家の吹き流し以外はすべて質実剛健な真鯉だけ。
名所江戸百景 水道橋駿河台.jpg

大きな鯉のぼりを揚げられない長屋住まいの庶民たちも、こんな「おもちゃ浮世絵」でわが子の節句を祝いました。
おもちゃ絵鯉のぼり.jpg
切り抜いて組み立てる、江戸のペーパークラフト鯉のぼり。

こちらでご紹介した画像を含む貴重な資料満載の書籍が、
『鯉のぼり図鑑 おもしろそうに泳いでる』
日本鯉のぼり協会・編 林直輝・文 小学館・刊
きれいな写真がいっぱいで楽しくページを繰るうち、あなたも「鯉のぼり博士」になれますよ!
所蔵している図書館はけっこう多いので、ぜひお近くの館で探してみられてはいかがでしょう。

近所で泳ぐ
元気な鯉のぼりたち

5月5日まで好天に恵まれた、2023年東京のゴールデンウィーク。
特にどこへ遊びに行く予定もない弱小噺家も、本記事を書いたのをきっかけに『ご近所鯉のぼり巡りの旅』に出てみることに。

少子化が進みマンションが増えたので、最近住宅街で鯉のぼりを目にする機会も減っているような気がしていましたが、その気になって探してみるとどうしてどうして。
街のあちこちで、元気に泳ぐ鯉のぼりたちに出会うことができました。

まず振り出しは、うちからすぐそこにある大きなお宅の鯉のぼり。
泳ぐご近所鯉のぼり.jpg
去年より小さい鯉が増えているので、お孫さんが新しくお産まれになったんでしょう。

二世帯住宅の2階ベランダにて。
二世帯住宅の鯉のぼり.jpg

干してある布団と並んで、日光浴の鯉のぼり一家。
布団と鯉のぼり.jpg

♪隣のアンテナより高~い、鯉のぼーりー。
アンテナより高い鯉のぼり.jpg

ちょっと足を延ばして、西新宿の『芸能花伝舎』に毎年並ぶ鯉のぼり軍団に今年も再会。
花伝舎の鯉のぼりたち.jpg
鋭角的な高層ビルに向かって、丸々と風をはらんだ都会の鯉のぼりたち。
風はらむ鯉のぼり.jpg
そのまま吊ってあるロープから離れ、空の彼方へ泳いでいきそうです。

こま正面アイコン笑い.jpg

こうして街中で出会った鯉のぼりたちから元気をもらい、意気揚々と帰宅。
じゃあうちで留守番のこまちにも、女の子だけど鯉のぼりのおすそ分けを。
両手に鯉のぼり.jpg
花ならぬ、両手に鯉。

蔦飾り線.png

お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。よろしければまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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