「煤払い」で暮れゆく、江戸の年の瀬 [江戸のトリビア]
年末の大掃除を、かいがいしく手伝う黒猫こまち。
掃除の基本
「上から下へ」
「上から下へ」
こまちがやっているように、昔ながらの年末大掃除は天井や鴨居に溜まった一年の汚れを落とす「煤払い」から始まりました。
喜多川歌麿『武家煤払いの図』(東京国立博物館所蔵)
明かりはロウソクか行灯・暖房と調理は炭火を用いた昔の日本家屋は、とにかく高い所が真っ黒にすすけます。
普段はそこまでやらない家の中の掃除も、暮れは特別。
あらたまの年神様を迎えるための、大切な支度ですからね。
あらたまの年神様を迎えるための、大切な支度ですからね。
高所の煤・埃をはたいて落とし、それが下に落ちきってから障子・襖・壁をきれいに。
そしておしまいに、床・畳・廊下を掃き掃除と雑巾がけで清める。
私も子どもの頃大晦日の掃除を手伝う時、父母から”掃除は上から下”と何度も注意されたもの。
噺家になってから師匠宅も同じ掃除の仕方だったので、「そういうことを教えてくれた親御さんに感謝しな」扇橋が言ってくれたのを覚えています。
江戸では
早めの煤払い
早めの煤払い
せっかくきれいにしても、正月前にまた家の中がすすけてしまってはしょうがない。
できるだけ年越しぎりぎりに大掃除をやりたいのが、人情というもの。
江戸時代は士農工商とも、師走の20日から煤払いを始めるのが通例でした。
江戸時代は士農工商とも、師走の20日から煤払いを始めるのが通例でした。
それが庶民にも浸透し、江戸の煤払いは師走13日からが定着。
この日になるといっせいに街の方々で煤払い大掃除が始まり、年の瀬気分が一気に盛り上がったと言います。
『東都歳時記』より、大きな商家の大掃除風景。
絵の中ほどには、酒肴を運んでくる奉公人と宴会をしている人たちの姿が。
大掃除もひと段落、これから無礼講のお疲れ会が始まろうというところですね。
大掃除もひと段落、これから無礼講のお疲れ会が始まろうというところですね。
縁起物でもあった
煤払い専用アイテム
煤払い専用アイテム
前項の絵の中で、左の方で掃除をしている奉公人が使っている柄の長いはたきのような道具。
「ススオトコ」と呼ぶ地方があったそうですが、調べたところ江戸では特に正式名称はないようです。
この図版の方が、少しわかりやすいかな。
この家の子なのか、小僧さんなのか…。
右側の男の子、棒だけはずしてチャンバラかなんかやってたんでしょうね。おばさんから怒られてます。
右側の男の子、棒だけはずしてチャンバラかなんかやってたんでしょうね。おばさんから怒られてます。
年末煤払いはお寺の行事に起源があるので、市井の大掃除でもこの煤払いアイテムは神聖視されていました。
笹をつけるのは、汚れを落とすと共に掃いた箇所を清めるため。
必ず二本一対で使われ、煤払いが済んだら丁寧に家の門口に立てかけてお神酒や小豆飯をお供え。
年明けまで大事に保管してから、左義長で焼いたり。お供え物と一緒に船に乗せ、川に流したりしたそうです。
だったらやっぱり、何かしらもっともらしい名前が付きそうなものですが…。
煤払いが済んだら
さぁあの恒例儀式!
さぁあの恒例儀式!
『東都歳時記』図の真ん中右寄りでは、お店の旦那様か番頭さんらしき人が皆から胴上げされています。
ネットで「江戸 大掃除 煤払い」なんでキーワードで検索すると上位に出る記事の多くが取り上げるほど、この頃の煤払い完了胴上げは盛んに行われていたようです。
『豊国十二ヶ月(十二月煤掃)』(国立国会図書館デジタルコレクション) まだ右端には畳が積み上げられ、大掃除も半ばなんですが…。
煤払いが終わったらいったん胴上げというのが、当時の吉例だったんでしょうか。
『千代田之大奥 御煤掃』(国立国会図書館デジタルコレクション) 男連中だけじゃなく、大奥でもお局さんをお女中衆が「そーれ!」と胴上げ。
日頃小言を言われているご婦人が、どさくさに紛れてお局さんのお尻をつねったりしたのかも。
わが家の大掃除に
心強い(?)助っ人登場
心強い(?)助っ人登場
ついつい先延ばしにしてしまい師走も20日過ぎてから、やっとわが家でも大掃除らしきことと部屋の冬支度を始めました。
朝から好天に恵まれたこの日は、ダイニングキッチンの掃除と模様替え。
両親と師匠の教え通り天井の埃をはたき、流し周りをきれいに磨きあげ。
仕上げは今まで敷いてあったニトリの「冷感ラグ」を、毛足の長い絨毯(風カーペット)に替える作業。
仕上げは今まで敷いてあったニトリの「冷感ラグ」を、毛足の長い絨毯(風カーペット)に替える作業。
女房が出払って孤軍奮闘している私の前に、ここへ来て頼もしい(?)助っ人が現れました!
言わずとしれた、ブログ共同執筆猫。
「猫あるある」の一つ。
カーペット交換のためずらしたテーブルで、なにやらたくらむ黒猫。
そして冬物を敷き始めるやいなや、その上に乗っかるこまち。
さっきまで表で干してあったので、お日様の匂いがしてあったかいんでしょう。
気持ちはわかるけど、今は困るんだよなー。
「どいて」と頼んでもこういう時に猫が言うことをきくはずもなく、敷きかけのカーペットの上で悠々と身繕いを始めました。
3.5キロの生き物が向こう端に乗っていると、けっこう重くて敷物を思うように動かせません。
仕方ないので休憩がてら、カーペットの下に手を入れてこまちを誘ってみます。 おー、食いついた。
面白いなー。
仕方ないので休憩がてら、カーペットの下に手を入れてこまちを誘ってみます。 おー、食いついた。
面白いなー。
…って猫と一緒に遊んでる場合じゃないのです。
陽のあるうちに、作業は終わらせたいですからね。
陽のあるうちに、作業は終わらせたいですからね。
やったー、了解!
いそいそと竹箒持って、表に行く黒猫。
いそいそと竹箒持って、表に行く黒猫。
しめしめ、この隙にカーペット敷いちゃおう…
猫の手を
借りて手間取る
大掃除
お開きまでお付き合いいただきまして、まことにありがとうございます。ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
タグ:江戸豆知識 猫
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