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寄席の出演料「ワリ」ってどんなシステム?昔ながらの楽屋告知方法「かけぶれ」とは? [落語情報]


寄席の高座裏に広がる、お客席からは見えない「芸人独特の世界」。
今回はそんなバックヤードを、ちょっぴりご紹介。


昔ながらの「歩合制」
寄席の出演料


まず、こちらの画像をご覧ください。

ワリ袋.jpg

縦11cm・横9.5cmの、封緘シール付小袋。
私たちの寄席出演が入った、「ワリ袋」です。

”ワリ”とは、「寄席の興行収入を一定の割合で分ける」ところから来た符丁。
興収全体を、お席亭と落語協会でまず分け合う→協会分を、さらに各出演者へ分配。

ある時期までは、トリが芸人分を割っていたそうです。
現在では、落語協会事務局の担当。
その事務局負担軽減のため、以前は2日おきに出ていたワリ→10日に一度に変わっています。



袋の表には、
・出演日
・出演場所
・出演日数 
などの明細が書かれています。

右から2行目に(一日~人)とあるのは、その興行一日あたりの平均入場者数
※さまざまな配慮で、一日500人以下にはならないよう保障されています。

左端記載の10日トータル観客数×芸人それぞれの持ち点=出演料「ワリ」




ギター漫談のぺぺ桜井さんに、こんなギャグが。

ある日の寄席、よくウケるお客席。
ところが、最前列にまるで笑わない人が一人。

「ああた失礼ですが、周りの方みんな笑ってくれてんですよ。
お客さんだけ、なんで難しい顔してんですか?」


高座から聞かれたその方、
「だってよー。客席にいるの、これだけの人数でさ。お前たち、10何人も出てんだろ。
寄席の入場料って、あれだけの金額で。それを今から、みんなで分けんだろ?
いったいひとり頭いくらくらいもらえんのか、心配で心配で笑っちゃいられねぇんだよ」

確かにワリ袋に入っているのは、人間国宝・柳家小三治であろうと。
交通費に毛が生えた、
ほんのお小遣い程度。

昔から 「寄席は修業の場・自分たちをアピールするショーウインドウ。儲けは度外視」 という考えが、楽屋には根づいていますから。

皆様も寄席ご来場の節はどうぞ、芸人の懐はご心配なさらず。
のんびりと、
お過ごしください。
まぁご祝儀いただけるというのなら、遠慮はしませんがね。


出演者への告知「かけぶれ」

続いて、こんな画像を。

かけぶれ.jpg

寄席の出番をもらうと、その興行前に渡される「かけぶれ」というもの。

真打になると個別に郵送・楽屋での受け取りになりますが、前座・二ツ目の分は師匠宅に届きます。

うっかり興行初日前に取りに行くの忘れ、
「お前、こりゃ協会から”この寄席にいついっか出てください”って出演依頼なんだから。
無精しないで、まめに取りに来なきゃいけねぇぞ!」
師匠から怒られたことも。



楽屋の壁には、協会事務局からのお知らせなどがいろいろ貼られています。
今では「楽屋貼り」と呼ぶことが多いですが、”壁にかけたおふれ”なので。これらも、元々は「かけぶれ」。

楽屋の禁止事項.jpg

こらこら、こまち師匠。
かけぶれの注意事項、ちゃんと見なきゃダメじゃないか。


見習い時代、
師匠が渡してくれたもの

今度は、こちらの書類を。

楽屋入り告知.jpg

私・入船亭扇べいの楽屋入りを知らせる、真打以上の協会員に配られたかけぶれ。

師匠が、
「今まで俺とカミさんから教わったことを、しっかり守って。
楽屋ではとにかく行儀よく、相手が売れているかどうかなんて別け隔てしないで。 真面目に、誠意を持って働きな」

私の目を見て懇々と諭しつつ、渡してくれたこの告知。
しっかり今日まで、
とってありました。



そして、それをもらった日から遡ること5か月半前。
見習いで入門して3週間たったある日の朝、私が師匠宅に行くと。

ダイニングキッチンの壁に貼りだされた、扇型の半紙が目に留まります。

命名.jpg

通いだしてしばらくは、本名「智明(ともあき)」と呼ばれていたのが。
「もうこいつは、正式に弟子にして大丈夫だ」見極めた師匠、私に高座名をつけてくれたのです!

どうして、
この名にしたのか?
命名の由来を説明しながら、壁から丁寧に外した半紙を手渡ししてくれた扇橋。
この瞬間から私の、今日につながる噺家生活が始まりました。

※「扇べい命名秘話」は、また回をあらためて記事にしたいと思います。



「つけた名を紙に書いて、壁に貼りだす」やり方、とてもいいなと心に残りましたので。
私には弟子はおりませんが、子どもたちには師匠に倣った命名式をしてやりました。

先代猫にも同じようにしたのですが、こまちの時はバタバタしてやらずじまい。
遅まきながらイラストで、名付けの儀式を執り行うとしましょう。

命名こまち.jpg


桜罫線淡い760.png

お開きまで
お付き合いいただきまして、
まことにありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝

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