「爪の先に灯をともす」から飛び出す、あのスーパーロボット! [江戸のトリビア]
陽当たりのいい縁側で、
ぱちぱち爪を切るこまち。
ぱちぱち爪を切るこまち。
「食べられるかな?」庭で食いしん坊スズメたちが狙ってますが、口に入れるのはよした方がいいでしょう。
猫の爪は鋭いから、うっかりするとまた「舌切り雀」になっちゃうよ。
爪を表すことわざ
と聞いて、私が真っ先に思い浮かべるのは
今のようにLED電球なんかないその昔、乏しい明かりのもとで無理して爪を切ると。
幼い頃にそう母親から教わり、今でも守り続けています。それでも父の臨終には立ち会えませんでしたが…。
「夜爪」と並んで人口に膾炙しているのが、
「爪の先に灯をともす」。
極端な倹約家、はっきり言えば「けちん坊」を表す言葉。
落語『片棒』『味噌蔵』などのマクラで、よくこのことわざを引用します。
冬の大作『富久』には、
「火元は、あののり屋のババァんちか…。あの婆さん、普段から爪の先ぃ灯ともすように銭ばっかしためやがって。その爪の先から火が出て、隣の俺のうちまで焼けちまった…」
主人公・幇間の一八が火事場を前に、呆然とつぶやくくだりが。
江戸時代から続く
「爪の先に灯を」
「爪の先に灯を」
あの有名な牛にまつわることわざの、真実に迫る!の記事を書く際参考にした、東京書籍刊『絵で楽しむ江戸のことわざ』(時田昌瑞・著)。
その中には、「しわん坊」=「爪の先に灯をともす」さまを描いた図版が掲載されています。
『新造図彙』の説明は、
『画本纂怪興』では
妖怪変化・魑魅魍魎を描いて大人気、江戸の水木しげる=河鍋暁斎もこんな絵で「爪の先に灯」を扱っています。
『絵で楽しむ江戸のことわざ』より転載
「爪の先に灯をともす」
そのいわれは?
そのいわれは?
人間の爪は皮膚の延長で、硬質ケラチン(なんだかかわいい名前)というたんぱく質でできているそうです。
髪と同じで、伸び過ぎたら邪魔で切らなくてはいけないもの。
昔は切った後の女性の髪は、かもじとして再利用されたりしました。
でも爪の方は、どう工夫しても使い道ないんですよね。 身体を離れたら、ただの老廃物。
しかしそれにも何らかの価値を見いだそうとするのが、折り紙つきのけちん坊。
『男はつらいよ』主題歌の文句、「目方で男が売れるなら こんな苦労もかけまいに」のように。
自分の身体髪膚、
すべてに値打ちがあるんだ!
すべてに値打ちがあるんだ!
爪もただ捨てちゃもったいない、なんかに使ってやろう。
そうだ燃やしてみたら、灯りや暖をとるのに役立つんじゃないか?
私は実際にやったことはありませんが、硬質ケラチンというのは普通の皮膚より火がつきにくいのだそうです。
無理に燃やしてみたら、
激しい悪臭が発生!
激しい悪臭が発生!
そんな苦労をしてまで爪の再利用を考える人は、本当のけちん坊。そこから、このことわざは言われるようになったとされています。
さらに突っ込んだ「爪の先に灯」語源として、日本語の語源.comさんがご自分のブログ記事で興味深い説を挙げてらっしゃいます。
ここでなぜか、
あのスーパーロボット登場!
あのスーパーロボット登場!
先に掲載した「爪の先に灯を灯す」絵を見ていたら、突然頭の中に響いて来たのが。
超合金の鎧をまとったスーパーロボット・マジンガーℤの必殺技の一つが、胸の放熱板から発射される摂氏3万度の熱線「ブレストファイヤー」。
発動の際、2枚の赤い胸板がじわじわっと赤みを帯びて来て。
「ブぅレぇストおおおおー、ファイヤああああー!!」の掛け声とともに、機械獣目がけ一直線に放たれる超熱線。
かっこいいなぁー。
スケールは違いますが、その発射シークエンスがなんとなくせっせと爪を燃やしているけちん坊の姿につながるような気がします。
これを聞いていた黒猫こまち、縁日で買ってもらったお面かぶって。
大空そびえる黒鉄の城・マジンガーになり切って、爪の先から本当に火を放ってご覧に入れましょう!
必殺技とことわざの、
意外な関係?
意外な関係?
ほかにマジンガーℤの必殺技では、
「ルストハリケーン」も有名。
「ルストハリケーン」も有名。
頭部口部分から噴射する、気化された超強力溶解液の突風。
この技も、日本のことわざに通じるところがあるのに気がつきました。
こじつけだとおっしゃいますか?
『マジンガーℤ』作者の永井豪先生は、『ハレンチ学園』などでわかるようにギャグのセンスが凄い人。ボキャブラリーも、大変に豊富な方。
ロボットの設定する時に、こういったことわざや文句が頭をよぎったのでは?そう想像するとなんだか楽しくなってきます。
ブレストファイヤーも、
なんてやり取りから、 産まれたのかも。
耳に馴染んだ言葉も、見かたを変えるとちょっと面白いネタになったり。
噺家ならではの視点で、いろんな言い回しを解釈して遊んでみる。 機会があれば、また別の言葉でやってみたいと思います。
その節は、
またご訪問くださいませ。
ご精読、
まことにありがとうございます。
入船亭扇治拝
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