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緊急事態宣言再びの今こそ読みたい!「ホラーの帝王」が灯す未来への明かり [お気に入り・おすすめ]

寒い時期に恐縮ですが、
今回のテーマはずばり
「Cool(クール)」。

クールなこまち.png

意外と新しい
Cool=「カッコいい」


Coolと言っても、「なま物につき、お取り扱いにご注意ください」という冒頭イラストのことではありません。

「冷静沈着」「カッコいい」
という意味で、
He is so cool!
のように使われる言葉の方。

もともとは、アメリカの一部人種・職種間の俗語だったそう。

全土で一般的に・さらに世界で使われるようになったのは、20世紀末。けっこう、歴史の浅い言葉なのですね。

私なりにそちらの「Cool」を再定義すると

「いついかなる時も冷静な判断力と強靭な克己心で、どんな状況にも対応できる人」を表す形容詞。

ということになりますか。


怪奇テイスト0%
「ホラーの帝王」の人間ドラマ


今回はフィクションの登場人物中、私的に超Coolベスト3入りは間違いなし!

そんな主人公の、数奇な運命を描いた小説をご紹介。

スティーヴン・キング著 
(翻訳:浅倉久志)
『ゴールデンボーイ
 恐怖の四季 春夏編』所収の中編、
『刑務所のリタ・ヘイワース』

ゴールデンボーイ 表紙.png

キングの作品取り上げるのは、猫好みのキャットウォークと、ホラー巨匠の名短編 以来。よろしければ、そちらもご覧ください。



この中編は、1994年 『ショーシャンクの空に』 として映画化されています。

そちらも、良作だとは思うのですが…。 原作に忠実であろうとした分若干駆け足気味かなというのが、私の感想。

どちらも未読・未見の方は、ぜひ小説を先にお読みになることをお薦めします。



話を戻しまして今回ご紹介するのは、「ホラーの帝王」が怪奇や超常現象を一切扱わずに書き上げた人間ドラマの快作。

私はつらいことがあるとこの作品を読み返し、その度に力をもらっています。


クールな男の、
タフな刑務所暮らし


『刑務所のリタ・ヘイワース』
あらすじ
街の罫線760.png

時は、1940年代。

主人公は、元大銀行副頭取のアンドリュー(アンディー)・デュフレーン。

超エリートの彼が妻と浮気相手を射殺した罪で、メイン州ショーシャンク刑務所に収監されるところから物語は始まります。

語り手は後にアンディーと親しくなる、囚人仲間のよろず調達屋・レッド。

無実を訴えるも状況証拠を覆すことはできず、延々と続くアンディーの獄中生活。

周りには粗暴な囚人たち・腐敗した刑務所職員らが跋扈する、劣悪な環境で。

アンディーのショーシャンクでの日々は、当初の予想を遥かに上回る期間に渡ることに。

新潮文庫版のジャケット裏に書いてありますから、ここで書いてもネタバレにはならないでしょう。


冤罪での獄中生活、
なんと30年間。

無為なままに貴重な時間が浪費され、悲喜こもごもの毎日が過ぎ去って行く。

元上流階級のエリートが獄中で味わう辛酸の数々、キングは手練れの技で飽きさせまん。

タイトルの「リタ・ヘイワース」は、当時の有名ハリウッド女優。 マリリン・モンロー登場以前の、グラマラスな肢体を生かした肉感派女優の代表格ですね。

お金さえ払えばたいていの品は手に入れてくるレッドから、アンディーが監房の壁に貼りたいと買ったリタの大きなポスター。

それが、題名の由来。
リタヘイワース カバーガール ポスター.png

グラマー女優の
見守る独房で…。


時代と共にポスターを彩る女優は変わって行きますが、一向に恩赦も早期出所の話も出ないアンディーの刑務所暮らし。

しかしそのポスターがとても重要な役割を果たしていたことが、クライマックスで明らかに。

一時期同じ房に入っていた囚人の洩らしたひと言が、終盤見事な伏線となって回収された時には。

ミステリ好きの私は、初読の際小膝を打って踊り上がったものです。



肉体派美女があだっぽい眼差しで見つめる以外は、殺風景な監房。

その中で30年間自分だけの「ある秘密」を抱えて生き抜き、苛酷な運命に立ち向かうアンディー・デュフレーン。

その精神力、忍耐心。

私だったら、同じ状況で3日と辛抱できないでしょう。

フィクション界のベストCoolガイとして、自信を持って一推しさせていただく所以です。


未来を照らす
その言葉の名は …


小説の主人公と現実の私たちは、もちろんひとくくりにはできません。

でもアンディーの置かれたような理不尽な状況、そしてそれにどう対処するかの決断。

実生活でも程度の差こそあれ、直面することがあるのではないでしょうか。

現在の私たちと新型コロナウィルスとの闘いも、まさにその一つではないかと思います。

お上が、Go Toだ・やっぱり止まれ。時短はどうする、要請か強制か。 さんざ迷走したあげくの、首都圏での第二回目の緊急事態宣言発令。

私の場合これの影響で、今年そうでなくても少なかった仕事が軒並みキャンセルに。

正直、一昨日あたりはガクンとへこみました。今の状況って、去年の春先より絶望的じゃないのと。



でも、本記事を書くために『刑務所のリタ・ヘイワース』読み返した今は。

身体の奥から、ポッポと元気が湧いて来るのを感じます。

無実の罪で理不尽な30年の投獄生活を余儀なくされたアンディーの身を振り返れば、半年や1年のコロナ禍での辛抱。

大したことではないとは言わないまでも、自分ももう少し頑張ってみようかと。

『刑務所のリタ・ヘイワース』再読した私は、そういう前向きな心境になっています。

よろしければ未読の皆様にもぜひこの作品に触れていただきたく、駄文連ねてまいりました。

そして結びには、ぜひこの一文をお届けしたいのです。

中編とは思えないボリューム、波瀾万丈の筋運びで進んできたアンドリュー・デュフレーンの数奇な物語は。

模範囚として仮釈放になった囚人仲間・調達屋レッドの独白で、静かにそして未来を感じさせつつ幕を閉じます。

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すっかり興奮してるようだ。

あんまり興奮してるおかげで、手がふるえて、鉛筆が満足に握れない。

これは自由人だけが感じられる興奮だと思う。この興奮は、先の不確実な長旅に出発する自由人にしかわからない。

〜中略〜

どうか親友に再会して、やつと握手ができますように。

どうか太平洋が夢の中と同じような濃いブルーでありますように。

それがおれの希望だ。

b_simple_114_7M.png

そして作品読了後、巻頭に立ち戻っていただくと。

扉ページにサブタイトルとして記された、この言葉が目に入るはず。

ー春は希望の泉ー

希望を抱くこまち.png
桜罫線淡い760.png

ご精読、ありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝 

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