緊急事態宣言再びの今こそ読みたい!「ホラーの帝王」が灯す未来への明かり [お気に入り・おすすめ]
寒い時期に恐縮ですが、
今回のテーマはずばり
「Cool(クール)」。
今回のテーマはずばり
「Cool(クール)」。

意外と新しい
Cool=「カッコいい」
Cool=「カッコいい」
Coolと言っても、「なま物につき、お取り扱いにご注意ください」という冒頭イラストのことではありません。
「冷静沈着」「カッコいい」
という意味で、
He is so cool!
のように使われる言葉の方。
という意味で、
He is so cool!
のように使われる言葉の方。
もともとは、アメリカの一部人種・職種間の俗語だったそう。
全土で一般的に・さらに世界で使われるようになったのは、20世紀末。けっこう、歴史の浅い言葉なのですね。
私なりにそちらの「Cool」を再定義すると
ということになりますか。
怪奇テイスト0%
「ホラーの帝王」の人間ドラマ
「ホラーの帝王」の人間ドラマ
今回はフィクションの登場人物中、私的に超Coolベスト3入りは間違いなし!
そんな主人公の、数奇な運命を描いた小説をご紹介。

キングの作品取り上げるのは、猫好みのキャットウォークと、ホラー巨匠の名短編 以来。よろしければ、そちらもご覧ください。
この中編は、1994年 『ショーシャンクの空に』 として映画化されています。
そちらも、良作だとは思うのですが…。 原作に忠実であろうとした分若干駆け足気味かなというのが、私の感想。
どちらも未読・未見の方は、ぜひ小説を先にお読みになることをお薦めします。
話を戻しまして今回ご紹介するのは、「ホラーの帝王」が怪奇や超常現象を一切扱わずに書き上げた人間ドラマの快作。
私はつらいことがあるとこの作品を読み返し、その度に力をもらっています。
クールな男の、
タフな刑務所暮らし
タフな刑務所暮らし
『刑務所のリタ・ヘイワース』
あらすじ

時は、1940年代。
主人公は、元大銀行副頭取のアンドリュー(アンディー)・デュフレーン。
超エリートの彼が妻と浮気相手を射殺した罪で、メイン州ショーシャンク刑務所に収監されるところから物語は始まります。
語り手は後にアンディーと親しくなる、囚人仲間のよろず調達屋・レッド。
無実を訴えるも状況証拠を覆すことはできず、延々と続くアンディーの獄中生活。
周りには粗暴な囚人たち・腐敗した刑務所職員らが跋扈する、劣悪な環境で。
アンディーのショーシャンクでの日々は、当初の予想を遥かに上回る期間に渡ることに。
冤罪での獄中生活、
なんと30年間。
なんと30年間。
無為なままに貴重な時間が浪費され、悲喜こもごもの毎日が過ぎ去って行く。
元上流階級のエリートが獄中で味わう辛酸の数々、キングは手練れの技で飽きさせまん。
タイトルの「リタ・ヘイワース」は、当時の有名ハリウッド女優。 マリリン・モンロー登場以前の、グラマラスな肢体を生かした肉感派女優の代表格ですね。
お金さえ払えばたいていの品は手に入れてくるレッドから、アンディーが監房の壁に貼りたいと買ったリタの大きなポスター。
それが、題名の由来。

グラマー女優の
見守る独房で…。
見守る独房で…。
時代と共にポスターを彩る女優は変わって行きますが、一向に恩赦も早期出所の話も出ないアンディーの刑務所暮らし。
しかしそのポスターがとても重要な役割を果たしていたことが、クライマックスで明らかに。
一時期同じ房に入っていた囚人の洩らしたひと言が、終盤見事な伏線となって回収された時には。
ミステリ好きの私は、初読の際小膝を打って踊り上がったものです。
肉体派美女があだっぽい眼差しで見つめる以外は、殺風景な監房。
その中で30年間自分だけの「ある秘密」を抱えて生き抜き、苛酷な運命に立ち向かうアンディー・デュフレーン。
その精神力、忍耐心。
私だったら、同じ状況で3日と辛抱できないでしょう。
フィクション界のベストCoolガイとして、自信を持って一推しさせていただく所以です。
未来を照らす
その言葉の名は …
その言葉の名は …
小説の主人公と現実の私たちは、もちろんひとくくりにはできません。
でもアンディーの置かれたような理不尽な状況、そしてそれにどう対処するかの決断。
実生活でも程度の差こそあれ、直面することがあるのではないでしょうか。
現在の私たちと新型コロナウィルスとの闘いも、まさにその一つではないかと思います。
お上が、Go Toだ・やっぱり止まれ。時短はどうする、要請か強制か。 さんざ迷走したあげくの、首都圏での第二回目の緊急事態宣言発令。
私の場合これの影響で、今年そうでなくても少なかった仕事が軒並みキャンセルに。
正直、一昨日あたりはガクンとへこみました。今の状況って、去年の春先より絶望的じゃないのと。
でも、本記事を書くために『刑務所のリタ・ヘイワース』読み返した今は。
身体の奥から、ポッポと元気が湧いて来るのを感じます。
無実の罪で理不尽な30年の投獄生活を余儀なくされたアンディーの身を振り返れば、半年や1年のコロナ禍での辛抱。
大したことではないとは言わないまでも、自分ももう少し頑張ってみようかと。
『刑務所のリタ・ヘイワース』再読した私は、そういう前向きな心境になっています。
よろしければ未読の皆様にもぜひこの作品に触れていただきたく、駄文連ねてまいりました。
そして結びには、ぜひこの一文をお届けしたいのです。
中編とは思えないボリューム、波瀾万丈の筋運びで進んできたアンドリュー・デュフレーンの数奇な物語は。
模範囚として仮釈放になった囚人仲間・調達屋レッドの独白で、静かにそして未来を感じさせつつ幕を閉じます。

すっかり興奮してるようだ。
あんまり興奮してるおかげで、手がふるえて、鉛筆が満足に握れない。
これは自由人だけが感じられる興奮だと思う。この興奮は、先の不確実な長旅に出発する自由人にしかわからない。
〜中略〜
どうか親友に再会して、やつと握手ができますように。
どうか太平洋が夢の中と同じような濃いブルーでありますように。
それがおれの希望だ。

そして作品読了後、巻頭に立ち戻っていただくと。
扉ページにサブタイトルとして記された、この言葉が目に入るはず。
ー春は希望の泉ー


ご精読、ありがとうございます。
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
ぜひまた、ご訪問くださいませ。
入船亭扇治拝
コメント 0