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コロナ禍の今だからこそ しみじみ懐かしい昭和の寄席風景(1) [落語情報]

緊急事態宣言解除の地域から、緩やかに「新しい日常」へと向かう時。
朝夕の時差通勤やリモート勤務など、これまでとは違った生活様式が定着していくことも予想されます。


現代ほど豊かでなくともインターネットやスマホ無しでも、日本人が未来への希望を持って輝いていた昭和の日々。

今だからこそ、そんな時代の寄席の雰囲気にひと時ひたってみませんか?




の記事で秘蔵のお宝や写真を、軽妙なコメントとともに紹介してくれた三遊亭金八師
今回もあなたを、セピア色の素敵な風景へとご案内。
貴重な写真入りで3回に分けてお届けいたします。


●昭和39年6月中席 上野鈴本プログラム


(以下、金八師からのメール本文を転載)

想像力を働かせて当時の寄席へタイムスリップ!


今から56年前の今頃、東京オリンピックを四か月後に控えての定席です 。
芸人さん個々の略歴は控えて、気が付いたことを・・・。

上野鈴本 S39.6中.png

今よりも出演者多数で本数が多いですね。
時間割から考えると昼夜入れ替えではなさそう?
夜席も9時40分バネでしょうか?。今は8時40分終演ですから
この辺にお客様の時代のニーズを感じます。


色物陣のタイトルは今よりバラエティーに富んでます。
同じようなスタイルの芸人さんでも「俗曲」「三味線まんだん」「漫謡」「音曲」。
「曲芸」と「曲技」。「奇術」と「日本手品」。
ほか「のみのコンビ」に「ワンマンショウ」・・・。


今はユーチューブなどで簡単に他人の高座が聞けますからどうしても似たような運びになっちゃうんでしょうが、その当時は録音録画なんてのは個人では及ばない時代ですから、おのずから芸も個性的になるんだと思います。


Hフォンタクトなんてヘンな外人(笑)が結構いい時間だし。


ただ出番の組み方が今よりも無造作な感じが・・・。
たとえば夜席。和洋のマジックの違いはあれど美蝶師の四本あとで龍光師。
三味線で亀松師のあと、かつ江師。中入り後、丸一の曲芸のあと富士夫先生って。
ちょっと芸種が付きまくりでは(笑)。


はなし家だと健在なのは昼席のさん生、小益、小のぶ。夜席で勝二のみ。
ここに56年の歳月を感じます。ラテン落語って表記はうれしいですね(笑)。
真打昇進前ってことでしょうか朝三、升蔵と良い扱いの出番です。


昼席は談志師のトリに、師匠小さんが中入りで
「こばなし 千太」はリーガル千太師?
「音曲 米藤」とありますが「米蔵」の誤りでしょう。
円歌師は先先代。昼夜で入ってますが二か月後の八月に亡くなるので、きちんと出演できたのでしょうか?


夜席は三升家がトリ。貞山先生は中入りですが協会員だったのかな?
円生師のヒザ前は・・・ウケなさそうだなぁ(笑)。
うちの師匠金馬の娘さんが「金馬襲名の時、末広亭で円生さんを聞いたけどなんてツマラナイおじさんかと思った」と(笑)アタシは応えました「それは正常な生理でしょう」と(笑)。


広告も「天庄」は今もあるし。シマダ鞄店って鈴本から中央通り渡った所にあるんですよ。
これだと「上野仲通り」とあるから移転した同じ店でしょうか?

裏には福島県郡山市の「薄皮まんじゅう柏屋」の広告が。

当時、上野駅は東北本線のターミナル駅だったことが偲ばれます。


寄席って本来、もっと呑気なもの

いかがでしょうか。
高度成長期前の庶民たちが、仕事帰りや休日に『三丁目の夕陽』ファッションで訪れた寄席のお囃子が聴こえてくるような気がしませんか?


金八師が出演者略歴にあえて触れてないのは、お客様のお楽しみのため。
プログラムの中で「この芸人さん、誰?」と興味が湧いたら、Wikipediaなどで調べてみると面白いですよ。


後に名前が変わった芸人だけ、私の方で補足しておきます。

・さん八=九代目・入船亭扇橋
・小正楽=二代目・林家正楽
・小益=九代目・桂文楽
・さん生=川柳川柳
・朝三=三代目・三遊亭圓之助
・勝二=八代目・三升家小勝
・勝弥=七代目・三升家小勝
・升蔵=八代目・橘家圓蔵
・歌奴=三代目・三遊亭圓歌


今見ると錚々たる顔ぶれですが、確かに金八師所見の通りいい意味で番組編成がアバウトな感じがします。
大勢が出て、ひとりが15分務めたらおあとと交代のバラエティショー


今ではプログラム正規の芸人が休んで誰かの代演という時は、ネット上でリアルタイム告知します。
芸人どうし出番の入れ替わりも、協会事務局を通さないと不可。


このプログラムの時代、いや私が客席に居た頃でも寄席の番組はもっと呑気なものでした。
「ちょっとこのあと脇の仕事があって急ぐから、ここんとこへアタシ出しとくれよ」てな感じで、夜のサラ口(興行が始まったばかりの出番)に先代文治師匠や米丸師匠がいきなり登場して驚いたことも。


土日の寄席は、本当に代演だくさんの時が多かったですね。
私も最初は「え~、またお目あて休みで違う人なのー!」ブウブウ言ってましたが、通い慣れるにつれ代演で思わぬ拾い物をすることも多いとわかってきました。


浅草演芸ホール志ん朝師匠の代演で初めて聴いた、古今亭圓菊師匠の『饅頭こわい』。
林家木久蔵(現・木久扇)が休みでざわつく客席を、一瞬で爆笑の渦に巻き込んだ川柳師匠の『ジャズ息子』。


あの人の代わりだからと演者の方もギアが一段階上がるのか、代演で得したなぁという高座けっこうあります。



小噺こまち.gif



何より私が噺家になったのは、


6月下席末廣亭夜の部トリのあの大看板の代演を、当時大抜擢で務めた若手真打ちの奇跡的名高座


を聴いたから。
このエピソードについては、いずれじっくり語らせていただこうと思います。


とにかく呑気で賑やかが寄席の身上、再開したら今まで以上に肩の力お抜きになってお付き合いください。
私ももう少し定席に使ってもらえるよう、精進しますね。

よろしくお願い申し上げます。

蔦飾り線.png

当ブログでは、現在お客様を巻き込んで大募集中の


一門惣領弟子の心温まるエピソード


我が家の猫の、脱力言動録


今回のような猫のGIF画像は


なんてところも、よろしければ覗いてみてください。


そうそう、
なんかも聴いて歌ってくださいな。

またのご訪問、心よりお待ち申し上げております。


入船亭扇治拝


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